隷属姉妹
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■ 第1章 悪夢の始まり5

◆◆◆◆◆

 恵美は両親の葬儀を出し、疲れ果てて居た。
 お骨に成った両親を家に迎え、少し落ち着いた妹達と寂しい早めの夕食を摂って居た。
 そこに門脇が現れた。
「槇村さん…。大変な事に成ってしまいました。事故の相手…、笠原(かさはら)さんと仰いますが、この方、事故の後遺症で下半身不随に成りました。この場合、私共で試算しましたが、就労補償も考えますと2億5千万程に成ります。これは、最低限の金額で3億、4億、請求されても先ず支払いを拒否出来ません…」
 門脇の言葉に愕然とする恵美。
(そ、そんな…。2億5千万円だなんて…、私払えない…)
 門脇はそんな恵美に畳み掛けるように
「実は、先方はかなり怒って居るんです。事故から、一度も会いに行って無いでしょ。それで、交渉にも何も成らないんです。忙しいのは分かりますが、一度ぐらいは顔を出し、謝罪するべきでした…」
 門脇が残念そうに言うと、恵美はオロオロとする。
(あっ、あぁ〜…、本当だわ…。私、忙しさにかまけて、一度もお見舞いにも行って無い…)
 恵美がガックリと肩を落とすのを見て、門脇はニヤリと心の中で笑う。

 恵美が見舞いを忘れて居た事を門脇は気が付いていた。
 両親の死、様々な手続き、葬儀の手配、これだけの事を一人で行わなければ成らなかった恵美が、失念していてもそれは仕方が無かった。
 そして門脇は、敢えてそれを言わなかったのだ。
 何故なら、本人に負い目が有れば、その分簡単に騙す事が出来るからだ。
 恵美は門脇の掌の上で、コロコロと転がされていた。

◆◆◆◆◆

 門脇の勧めで恵美達は、病院に喪服のまま向かった。
 まだ、面会時間には間に合う時刻だった。
 病院に着くと個室に急ぐ。
 個室に入って恵美達は、初めて笠原に会った。
 薄い額、刺すような視線、酷薄そうな薄い唇。
 一言で言うと[悪人顔]であった。
 一瞬怯んだが、恵美は深々と頭を下げ
「ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした!」
 笠原に謝罪した。

 だが笠原は、じろりと恵美を睨み付け
「何しに来やがった!今更来ても遅いんだよ!俺は、絶対に許さねーからな!俺は、お前達の馬鹿親のせいで、一生車椅子だ!」
 恵美達に向かって怒鳴り散らした。
 その声にビクリと震え唇を噛み締め俯く恵美達。
 大好きだった死んだ両親を[馬鹿親]と罵倒された悔しさが、頭を持ち上げたが、非は恵美の方に有り、何も言えなかった。
 その間にスッと門脇が割り込んで
「いや、笠原さん。そんなに怒らないで下さい…。彼女達も悪気が有った訳じゃ無いんです…。今日、やっと葬儀を終え、身体が空いたんですよ」
 穏やかな声でなだめる。

 すると、笠原はフンと鼻を鳴らし
「まぁ、あんたがそう言うなら…」
 怒りの矛を収めた。
 その変わりようを見て、恵美は門脇に驚きの視線を向け
(門脇さん…、この人にも信頼されて居るんだ。凄いわ…)
 その交渉力に強い信頼を寄せた。
 門脇は笠原の怒りを収めさせただけで無く、如何に恵美が多忙だったか、蕩々と説明する。
 その結果、門脇は笠原を説き伏せ、最後には恵美達の謝罪を受け取らせた。
 その様を見て、恵美は門脇に強い依存心を抱き始めた。

 茶番で有る。
 全て門脇の書いたシナリオ通りで有った。
 恵美はコロリと悪党共の小芝居に嵌り、門脇の思惑通りに踊らされる。
 こうして、最悪の道に案内されながら、笠原との初対面が終わった。
 自分達の運命を変える男との出会いは[粗暴な男]と言う印象を恵美達に植え付ける。

 恵美達が見舞いを終え自宅に戻る頃、門脇の元に一本の電話が入る。
 笠原からの電話だった。
『おい…。あんた、欲張り過ぎじゃ無ぇか?あんな上玉一人締めする積もりだったろ…』
 笠原は、門脇が中々恵美に合わせ無かった理由を指摘した。
(ちっ、やっぱりしゃしゃり出て来たか…)
 舌打ちして後悔する。
 門脇は、笠原の性癖を知っていたからだ。
 2人は何度か顔を合わせており、お互いの性癖を知っていた。
 それどころか、2人で同じ女を使った事も、一度や二度では無かったのだ。
『俺の事を良く知ってるくせに、こう言う事されちゃ、俺も黙ってないぜ』
 笠原が声を低めながら、門脇を脅すと
「お前はせっかちだからな、キッチリ騙しきってからじゃないと、危なかったんだよ」
 門脇は後悔を強めながら笠原に言い訳した。

 だが、笠原が次に提案して来た事を聞き、その後悔を消した。
『へっ、図星だった見てぇだな…まぁ、今となっちゃどっちでも良い…。一つ言って置くが、あんたのやり方じゃ、保って1年…悪くすりゃ、数回だぜ?女に取っちゃ、お互い受け入れ難い嗜好だからな…。だがよ、俺の話に乗れば、10年、20年楽しめる。それも、姉妹含めて、俺達好みの楽しみ方でな…』
 笠原の提案を聞いて、門脇は思わずニヤリと笑い
「悪く無い話だな…。いや、それが出来ればベストだ…。だが、そう上手く行くか?」
 門脇が問い掛けると
『あぁ、1年も有れば、骨の髄まで教育してやる。あんた、初物喰いの趣味は無かったろ?俺がきっちり教え込んでやるから、それから好きに嬲り尽くせば良い…』
 笠原が門脇に告げる。
「1年か…。まぁ良いだろう、その代わり裏切るなよ…」
 門脇は笠原の意見を聞き入れ、承諾した。
 こうして、恵美達は地獄の日々を送る事が決まった。
 何も知らない美姉妹は、悪魔達の生贄にされる。

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