隷属姉妹
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■ 第1章 悪夢の始まり8

 説明を終えた妙子は、恵美をじっと見詰めたまま動かない。
 恵美は看護服を胸に掻き抱いて、息が詰まりそうだった。
 いや、実際呼吸を忘れている。
 そんな恵美に妙子は
「貴女…私の話を聞いていた?そんな事じゃ働き出して、30分保たないでクビだわよ…」
 ゆっくりと冷たい声で告げる。
 恵美はその声にビクリと震え、弾かれたように頭を深々と下げ
「も、申し訳ございませんでした!」
 妙子に謝罪した。

 妙子は恵美の謝罪を無視し、プイッと身体ごと向きを変えると、ゆっくりと更衣室の壁に歩いて行った。
 そして壁に掛けて有る金属製の定規を手に取ると、頭を下げたままの恵美の背後に回り、手首のスナップだけで振った。
 深々と頭を下げていた恵美は、無防備なお尻を定規で打たれる。
 手首のスナップだけだったが、妙子の持った定規は、小気味良い音を立てた。
 突然の痛みに、恵美の頭が跳ね上がると
「まだよ!あと2回」
 妙子は鋭い声で恵美の動きを止める。
 恵美はその声に震え上がり
「はいー」
 返事を返し頭を元の位置に戻す、すると続けざまに2発お尻を打たれた。
 恵美は痛みもそうだが、込み上げる屈辱感で身体がブルブルと震えた。

 そして、それでも頭を上げられ無い自分自身が情けなかった。
(我慢するのよ…。ここを辞めさせられたら、本当に働く場所が無くなるのよ…)
 恵美は歯を食いしばり、屈辱に耐え涙をこらえた。
 それを見た妙子は、ニンマリと笑い
(あらあら、良い子ね〜…。そう…、そんなに辞められ無いの…)
 恵美の内心を理解する。

 妙子は恵美の腰をポンポンと定規で軽く叩き
「顔を上げて良いわよ…。良い、病院内はもとより、外でもそう…。私達白制服には、最大の敬意を払いなさい。私達は貴女達に罰を与える権限が有ります。そう、それは解雇も含めた罰よ…。分かった?」
 静かに問い掛けると、恵美は再び深々と頭を下げ
「分かりました。宮里婦長」
 妙子に礼を尽くした。
 妙子はスッと恵美の腰に掌を置き
「そう、そう言う素直な心が大切なのよ…」
 猫撫で声で話掛ける。

 恵美は、その声に驚いたが、顔を上げて良いのか迷い、そのままの姿勢で様子を見た。
 すると妙子は、恵美の肩に手を添え、ゆっくりと身体を起こさせると
「ここの病院では、上位の者に絶対逆らってはダメ。下手な軍隊より規律は厳しいの…分かったわね…」
 労るように優しく言い含める。
 恵美はその声で、緊張が緩んだのか、ポロポロと涙を流し
「は、はい…、はい、分かりました宮里婦長…」
 妙子に何度も返事を返す。

 妙子は泣きじゃくる恵美の頭を抱え込みながら、優しく撫でてやり
「さぁ、泣き止んで着替えなさい。みんなに紹介するわ…」
 恵美に着替えを促した。
 恵美はコクンと頷き
「はい…分かりました…。ありがとうございます、宮里婦長…」
 先程の注意を思い出して、慌てて言葉を付け足した。
「そう、飲み込みが早いわね…。良い事よ…」
 妙子はニッコリ笑って恵美を誉める。

 恵美はこのまま着替えをしようかモジモジしながら迷ったが、妙子は動こうとせず、更にその表情から微笑みが消え始めると、恵美は慌てて着替えを始めた。
 ブラウスを脱ぎキュロットスカートを下ろして、看護服に手を伸ばすと、妙子の持つ金属製の定規がスッと恵美の手を止める。
 キョトンとした顔で、恵美は妙子を見ると
「就業規則の4ページを読んでみなさい。この病院では規則は絶対よ」
 妙子は冷たい声で恵美に伝える。
 恵美は言われるまま、与えられた小冊子を開いた。

 そして、そこに書かれた文を黙読し、恵美の顔は驚きに染まる。
「声に出して読んでみなさい」
 妙子は恵美に静かに命じる。
 恵美は命じられるまま、小冊子を声に出して読んだ。
「看護師が身に着ける物は、それに相応しく無ければ成らない。下着に於いても同様で有る。婦長以上は華美で無い物、正看護師は、白又はベージュの物、見習いは木綿製の白無地のみ着用可とし、それ以外の着用を認めない」
 恵美が読み終えた後、妙子の顔を見て呆然とする。
 妙子は無言で恵美のブラジャーを定規で指し示し、ゆっくり首を左右に振った。
 今恵美が身に付けている下着は木綿製では有るが、ライトグリーンにフリルが着いた可愛らしい物だった。

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