隷属姉妹
MIN:作

■ 第1章 悪夢の始まり9

 恵美の目が大きく見開かれると
「例外は、認められないの。それが規則なのよ」
 妙子は優しい声で、諭すように言った。
 恵美はガックリとうなだれ、下着に手を掛ける。
 何度か躊躇ったが、盗み見た妙子の顔から、表情が消えて居るのを知って慌てて脱いだ。
 全裸に成った恵美は、急いで看護服を羽織り、フロントジッパーを上げた。

 ピンクの看護服はワンピースタイプで、ポリエステルと綿素材の生地が薄い物だった。
 その上、本来は膝丈のスカート部分が10p程詰められ、表示したサイズよりワンサイズ小さいのではと思う程身体に密着し、ボディラインがクッキリと現れている。
 特に胸は大きく張り出し、薄い布地に押し付けられた乳首が、ハッキリと認識出来た。
 恵美は余りの恥ずかしさに、両手で乳房を押さえしゃがみこんだ。
 すると今度は、スカートがずり上がりながら、ピッタリと張り付き、恵美のお尻の割れ目を浮き出させる。
 更に裾は目線を下げれは、確実に股間が見える状態だった。
 恵美は余りの事にパニックに成って、色々な所を手で押さえる。

 それを酷薄な笑いを浮かべて見て居た妙子が
「あら…。見立てを間違えたかしら。貴女着痩せするのね…」
 恵美の乳房を指先で撫でた。
 恵美はビクリと震え、妙子を見ると
「お、お願いします…看護服を替えて下さい。お願いします」
 涙を流して懇願する。
 妙子はその恵美の表情を見て、ゾクゾクと湧き上がる興奮を押さえ込み
「良いわ、用意して上げる。だけど、取り敢えずみんなに紹介させて、他の看護師達も待ってる筈だから、ナースセンターに行けば、看護服を管理している者も居る筈だし」
 恵美に優しく告げた。
 恵美は直ぐにでも、替えて欲しかったが、妙子は譲歩案を出したのである、それ以上を望んで機嫌を損ねたら、もっと酷い状況に成るのは火を見るより明らかだった。

 恵美は妙子の指示に従い、取り敢えず挨拶だけ済ませる事にした。
 注意深く身体を起こし、妙子の前に立ち上がると、妙子はクルリと背中を見せ
「さあ、着いていらっしゃい」
 恵美を誘導する。
 恵美は妙子の背中を追い掛け、更衣室を出て行こうとするが、1・2歩足を踏み出し有る事に気付く。
(い、嫌だ…スカートが…)
 ピッタリとまとわりついたスカートは、足を大きく踏み出す度に、ズルズルと裾が上がって行くのである。
 恵美は泣きそうな顔で、スカートの裾の前後を両手で押さえ、妙子に着いていった。
 両手でスカートを押さえると、今度は胸の生地を押し上げる、大きな乳房がユサユサと揺れる。
 恵美は顔を真っ赤に染め、背中を丸めて、妙子の後に着いて行った。

 更衣室を出て従業員通路に出ると、数人の医師や看護師、出入りの業者などとすれ違う。
 恵美はその度恥ずかしげに俯き、身体を縮めて視線から外れようとした。
 だが、そんな恵美の態度とは裏腹に、誰も恵美の姿を気に留めない。
 それ以上に病院関係者の意識を引く者が、恵美の目の前にいたからだ。
 従業員用通路を歩く者は皆、妙子の姿を認めると、それぞれの立場に応じた挨拶をする。
 医師の場合は、軽く会釈をする程度だが、自分から頭を下げた。
 看護師や出入り業者など、立ち止まって頭を下げ、妙子が通り過ぎるまで頭を上げない。
 そしてその全てに、妙子は軽くて黙礼で応え歩を進める。
 従業員用通路ですれ違う者は、きわどい格好をした恵美に一瞥もくれない。
 それは、まるで目に入っていないような反応なのである。
 病院関係者の行動は、恵美のどんな格好も問題では無く、妙子への対応が一番重要だと物語っていた。
 恵美は妙子にまるで、女王のような権力を感じる。
 実際、恵美が感じた通りの権力を妙子は持っていた。
 この病院で妙子の命令は、医院長の命令と何ら変わらないのである。
 それは、妙子がこの病院で働きだして12年間、医院長の寵愛をずっと握って居たからであった。

 ナースセンターに着くと、朝の申し送りが行われていた。
 ナースセンター内には、青い看護服の看護師が6人、ピンクの看護服の看護師が4人、そして白衣を羽織った医師が2人、ホワイトボードを前にミーティングを行っている。
 看護師の1人が妙子に気付くと、直ぐに直立不動の姿勢を取って、勢い良く頭を深々と下げ
「総婦長様お早う御座います」
 妙子に朝の挨拶を行った。
 それを見た他の者は、椅子から素早く立ち上がり、医師達こそ[様]を付けなかったが、全員が同じように妙子に挨拶をする。
 妙子はそれに、軽く頭を下げ
「みなさん、お早う御座います」
 涼やかな声で、挨拶を返す。

 だが、妙子の挨拶を受けても誰1人動こうとせず
「ミーティングを続けて」
 妙子が促して、初めてミーティングが再開された。
 ミーティングが始まると、ピンクの看護服を着た看護師が素早く、奥から椅子を持ってくる。
 その椅子は背もたれが付いた、革張りの椅子で綺麗に磨き込まれていた。
 妙子は後ろも確認せずに、スッと腰を下ろすと、看護師が椅子を操作し妙子を受け止める。
 妙子が椅子に座り足を組むと、もう1人のピンクの看護服を着た看護師が、ソーサーに乗ったコーヒーカップを差し出した。
 妙子がそのソーサーを手に取り、コーヒーを口に運ぶと、妙子の世話をした2人の看護師が、妙子の前に並び深々と頭を下げ、ミーティングに加わる。

 恵美はその動きを見て、目を丸くした。
 更衣室で聞いた[下手な軍隊より規律が厳しい]と言う言葉を、思い出したからだ。
(ほ、本当に凄い…。まるで、映画で見た軍隊みたい…。私、どうなっちゃうんだろ…)
 看護師達の挙動を見て、先行きに不安を感じる恵美。
 恵美は妙子の背後で、モゾモゾと裾を直していたが、その動きも徐々に小さく成り、最後にはジッと動かなくなった。
 ナースセンターの中の雰囲気は[許可無く動く事を禁じる]そう言っている様だったからだ。

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