隷属姉妹
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■ 第1章 悪夢の始まり11

 そう、それは日常茶飯事だから、看護師達は恵美を特別扱いもしない。
 紹介が終わって妙子がナースセンターから出て行くと、3人の正看護師がスッと頭を下げて帰って行った。
 木下と村上、2人の見習看護師がナースセンター内の掃除を始めると、恵美の前に右田が立ち
「ここの勤務は4交代。大体5人一チームで[日勤][夜勤][深夜勤][休み]を繰り返すの。その中で、順番に休養日を割り振るのよ。このフロアーは整形外科と形成外科の入院患者用で、西側の20床が形成、後の30床が整形。個室の20床はその時々よ。西の隅に形成のナースセンターが有るから、そこ迄が整形のテリトリーよ」
 手早く病院の概要を説明する。
「日勤時は正看護師のこの2人が、外来にヘルプに行くし、入院患者は3人で見るの。それと、個室の赤いランプが点いたら、直ぐに見習いに教えなさい。まぁ、日中に点く事は殆ど無いけどね」
 右田は業務内容を説明しながら、意味深な視線を見習い看護師に向けた。

 右田は説明を終えると、腕時計を見て
「あら、もうこんな時間。さぁ、早く勤務に就いて、手早く検温を済ませるのよ」
 パンパンと手を叩くと、5人がそれぞれ荷物を持って、移動を始める。
 恵美は忙しそうにナースセンターを出て行く右田をオロオロと追い掛け
「あ、あの…せ、制服…」
 泣きそうな顔で小声で頼もうとしたが、右田の動きは素早く、あっと言う間にどこかに消えてしまった。
 首を巡らし周りを見ると、既に他の看護師達も居ない。
 恵美は自分の格好を気にして躊躇したが、意を決してナースセンターから出る。

 恵美が一番手前の6人部屋に入ると、河合が患者の耳に体温計を当て、数字を読み上げる。
 それを右田が血圧計を操作しながら、バインダーに書き込む。
 相田はもう一つの血圧計を操作しながら、脈拍に耳を澄ましていた。
 恵美の姿を確認した右田が、スッと立ち上がり
「槇村さん、遅い。ここ変わって」
 恵美に場所を明け渡しながら、指示を飛ばす。
 恵美は入った瞬間の指示だったが、直ぐに右田の元に走る。

 右田と場所を変わった恵美だが、血圧計はベッドの隅に置いてあり、どうしてもしゃがまなければ、操作できない。
 だが、しゃがんでしまうとどうしても、スカートが捲れ上がり、股間を晒け出す事になる。
 困った恵美は相田に目を向けると、相田は膝立ちに成り、操作をしていた。
 恵美は直ぐにそれを真似て膝立ちで、血圧を測り始める。
 こうすれば、もし見えたとしても立ち上がる一瞬だけだった。
 恵美はホッと胸を撫で下ろし、血圧計の操作に集中する。
 相田が血圧計を読み上げ、右田が書き込む。

 相田は血圧計をまとめ次の患者に移動するが、一瞬恵美と目線を合わせ、軽くウインクする。
(あっ、相田さんわざと跪いて、私に教えてくれたんだ…)
 恵美はそのウインクの意味を知り、相田に会釈を返した。
 だが恵美は直ぐに、相田の行動で自分が下着を着けていない事を周りが気付いている事に気付き、顔が真っ赤に染まる。
 途端に恥ずかしくて堪らなくなったが、他の看護師達は全く気にする事も無く、淡々と業務をこなしていた。
 恵美はその姿を見て、何故か自分の思いが恥ずかしくなってしまう。
 恥辱に晒されている筈なのに、誰もそれを恥辱と思っていない。
 恵美にはそう感じ取れた。
(これって…私が自意識過剰なのかな…)
 恵美は看護師達の反応に、自分が過剰反応していると錯覚を起こしてしまう。

 入院患者は30床全て埋まっており、その全員が恵美の姿を見て、目を丸くした。
 中には妙に成れた患者も居て、舐めるように恵美の身体を見ていた。
 恵美は入院患者の反応で、自分が羞恥に晒されていると再確認でき、視姦されているのに安堵で胸を撫で下ろす。
 だが、直ぐに恵美は自分の姿が、自分の思った通り顔から火が出る程恥ずかしい姿だと自己確認し、消え去りたかったが、他の看護師はキビキビと業務を行い、それを訴える事は出来無かった。
 一部屋の検温は5分程で終わり、恵美達は30分程でナースセンターに戻る。
 ナースセンターに戻ると、直ぐに入院患者のリハビリ介添えと、医師の回診組に分かれる。
 3人はそれぞれスケジュールに合わせて、飛び交い始めた。
 それは、まるで戦場のような忙しさで、恵美は右田に制服の事を依頼するどころでは無かった。
 恵美は真っ赤な顔のまま、右田に引き摺られ医師の回診組に加わる。

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