隷属姉妹
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■ 第1章 悪夢の始まり12

 回診組に杉本が加わり、3人で入院患者の診察を行う。
「おや?先生、昨日の夜中居ませんでしたか?」
 入院患者が、杉本に問い掛けると
「ああ、若様がね…」
 杉村は両手を合わせて、右頬に当て小首を傾げる。
「はははっ、また飲み過ぎでズル休みですか…。大変だな先生達も…」
 入院患者が杉本の仕草で、笑い始めると
「先生…、駄目ですよ、余計な事を言っちゃ…」
 右田が杉本を咎める。

 和やかな雰囲気、穏やかな空気だが、恵美の身体には食い入るような視線が突き刺さっている。
 診察を受けている患者も、事ある毎に恵美に視線を向け、ニヤニヤと笑っていた。
「あ、槇村君、この患者さんの包帯を替えて下さい」
 杉本が指示を出すと、恵美はトレーから包帯を出し、患者の右腕の包帯を解き始める。
 身体を前傾にして、身を乗り出し患者の包帯を解くと、その患者が腕を動かす。
 それに合わせて、身体を前にせり出すと、後ろからどよめきが起こった。
 ハッと気が付いた恵美は、直ぐに背後を振り返ると、後ろにいた患者達が身を乗り出し、覗き込もうとしている。
 恵美は慌ててスカートに手を当てると、スカートは股の付け根近くまで持ち上がり、もう少しでお尻が見える位置まで来ていた。
 慌てて身体を起こし、スカートを戻すと、直ぐに跪いて包帯を解き始める。

 背後の患者達は落胆したが、包帯を替えられている患者は、目を大きく見開いてだらしなく目尻を下げる。
 先程までバインダーで隠されていた、恵美の形の良い大きな乳房が、フルフル揺れているのが、良く見えるようになったからだ。
 そして、恵美は自分の身体の異変に気付いた。
(い、痛い…、あっ、乳首が擦れたんだわ…血が滲み始めた…)
 恵美の乳首は硬い看護服の布地で擦られ、血が滲み始めていた。
 しかも、その刺激で乳首が固く成り始めている。
 看護服の乳房の頂点が、摘んだように持ち上がり、布地の奥から赤い血が染み出してきた。
 それは、まるで恵美が全裸であるように見せる。
 患者は鼻の下を伸ばして、恵美の乳房のすばらしさを堪能した。
 恵美はその後も、30人の入院患者の晒し者に成り、その瑞々しい身体を視姦される。
 恵美は恥ずかしさと、悲しさで胸を一杯にさせナースセンターに戻った。

 ナースセンターに戻った、恵美に右田がスッと新しい制服を差し出した。
「血の染みはお湯で抜きなさい、取れなくなるわよ。それと、絆創膏は医療行為で認めて上げるわ」
 右田の言葉に驚いた恵美は、その手に持たれた制服と右田の顔を何度も見比べた。
「要らないの?今の貴女の格好。相当恥ずかしいと思うけど…」
 右田は冷たい目線で恵美を見下ろし、[フンッ]と鼻で笑い、制服を戻そうとする。
 恵美はその動きに、慌てて手を伸ばし
「あっ、い、要ります」
 右田の手から制服を受け取った。
「有り難う御座います。右田班長様」
 恵美は深々と頭を下げて右田に感謝すると
「私に[様]は要らないわ。心の中で思う分には勝手だけどね」
 身体を机に向かわせながら、ヒラヒラと手を振り恵美を追い払う。
 恵美は再び深々と頭を下げ、更衣室に向かった。

 恵美は更衣室に入ると、直ぐに看護服を脱いだ。
「あつぅー…、痛たたぁ〜…。やだ、凄く血が出てる…」
 恵美の乳首は相当強く擦られたのか、血の滲みは拭っても拭っても、後から滲んでくる。
 恵美は右田に貰った、大判の絆創膏を両方の乳首に貼ると、直ぐに替えて貰った看護服を着た。
 今度の看護服は、恵美のサイズにピッタリで、身体にまとわりつくような事は無かった。
 恵美はホッと胸を撫で下ろし、今まで着ていた看護服を手に、給湯室に向かう。
 乳首の部分に点いた血の跡を、お湯で叩いて染み抜きをする。
 染みが綺麗に抜けた時には、昼食時間が終わっていた。
「あちゃ〜…。今日は、お昼抜きね…」
 恵美は腕時計を見て、ペタンと額を平手で叩き、ペロリと舌を出した。

 この時、恵美は自分の心が変わっている事に気付かない。
 恵美は、まだ下着を着けていないのだ。
 それなのに、心は平穏を迎えている。
 強い異常が、小さな異常を麻痺させた。
 恵美は下着を着けない状態に、慣らされてしまったのだ。
 人の心はこの慣れによって、徐々に変化して行く。
 恵美が普通の精神状態なら、この病院の異常にもっと敏感に成っていただろう。
 だが、恵美はそれに気付く前に、その異常さに取り込まれていた。
 ジワジワとまわる神経毒のように、妙子の策略は恵美の意識を変えて行く。
 それに気付いた時には、もう遅いのだが、恵美は恐らく気付く事もなく取り込まれるだろう。
 多くの看護師がそうであったように、誰1人抗う事無く取り込まれて行く。
 ここは、そんな病院だったのだ。

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