隷属姉妹
MIN:作

■ 第4章 突き付けられる選択5-1

 リビングの1人掛けのソファーでうたた寝していた、恵美の頭がガクリと背もたれから落ち、その動きで恵美の意識が醒め、頭を振って目覚めると、身動ぎして直ぐにハッと驚いた。
(えっ!何?)
 股間にヒヤリとした感触を感じ、恵美が股間を押さえると、更に冷たい感触が伝わり、恵美はスカートを捲り上げ股間を覗き込む。
 すると、恵美の目が驚きに見開かれ、次の瞬間、表情が強張り息を飲む。
 風呂上がりに着替えたばかりの、ショーツがグッショリと濡れていたのだ。
 驚いた恵美が、直ぐにショーツに手を伸ばし、濡れた部分に触れると、その動きが止まり、顔面が強張り蒼白に成る。
 ショーツを濡らす液体は、スカートにも染みを作っていた。
 愛美は、液体の付いた指先を反射的に鼻に当て、その匂いを嗅いで更に愕然とする。

 その液体からは、アンモニア臭はせず、また無臭でも無く、少しすえた匂いが有った。
(ウソ…)
 思わず内心で呟いた、その液体は、紛れも無く恵美の愛液だった。
 愕然とする愛美がソファーから立ち上がり、ソファーの座面を振り返ると、その動きで股間が擦れ、着衣が肌を撫で去り、媚薬により敏感に成った粘膜が強く刺激され
「きゃふ〜〜〜ん!」
 鼻に掛かった悲鳴を上げ、その場に蹲る。
 蹲る動きで、ブラジャーに擦れて乳房にも刺激が走り、恵美は両手で身体を抱え込み、固く目を閉じてブルブルと震えた。
(何?何で?こんな風に…)
 疑問を感じるが、まさか市販品の軟膏の中身が、丸ごと違う物に入れ替わって居る等とは、夢にも思わず戸惑いを膨らませる。
 膨れ上がった戸惑いは、不安に変わり、不安が或る答えを導き出し、ビクリと身体が震えた。
「ま、まさか…。私の身体…、あんな事が…気持ち良く…」
 おぞましい自分の出した答えを呟き、[変わってしまった]と言う結果に行き着く前に、固く口を閉じて、自分の肩を両手で強く抱き締め不安と戦う。

 数分が経ち、肩を抱いた恵美は、頭を強く左右に振って
「そんな事無い!これは、たまたまよ。確かに、お尻で感じたわ。あんなの、初めての事だから、身体が驚いただけ。今だけ!きっと今だけよ!」
 自分に言い聞かせながら立ち上がり
「許可は貰ってるんだから、好きにさせて貰おう。もう一度お風呂に浸かって、気分を落ち着かせて、新しい服に替えましょ」
 ハッキリとした口調で独り言を言いながら、踵を返す。
 しかし、どれ程言い繕ったとしても、自分が導き出した不安は、そう簡単に拭いきれない。
 表情は、引き締めているものの、その瞳には色濃い不安がありありと残っていた。

 恵美が廊下に出て、浴室に向かうと、微かな水音が聞こえて来た。
(えっ?何で…。確かに、水は止めたわ。あの男が1人で浴室に行ける筈も無いし。どうして?)
 恵美が足早に浴室に近付く間にも、水音は大きく成ってハッキリと聞こえ、疑問が強まる中脱衣所の扉を開けると、脱ぎ捨てられた子供服を見付け、恵美は驚く。
(嘘!?愛美、帰ってたの。あの男に黙って、お風呂を使ったら、何をされるか分からないのに…。きつく言い聞かせなきゃ!)
 恵美は、愛美が勝手に風呂を使っていると勘違いし、脱衣所に入ってそのまま浴室の扉を勢い良く開け
「愛美、何してるの!」
 顰めた怒声で叱りつけると、愛美は股間にシャワーを当てながら、ビクンと大きく身体を震わせ、もの凄い勢いで振り返り大きく見開いた目で恵美を見詰め
「お、お姉…ちゃん…」
 掠れた声で呟いた。

 自分のしていた行為を恵美に見られ、心臓が口から飛び出しそうに成ったまま、愛美が固まる中、恵美も愛美を見て凍り付いている。
 ジッと愛美の下腹部を見詰める恵美の視線に
(あっ、あぁ…。見られちゃった…、お姉ちゃんに…、変な事してる所…。見られちゃった…)
 愛美が恥ずかしさで目を背け項垂れると、恵美は服を着たまま浴室に踏み入り、項垂れた愛美に抱き付くと
「何かされたのね?そのお尻は、あの男がやったんでしょ?」
 愛美を問い詰める。
(えっ…?お尻…。あっ!お姉ちゃん、そっちに目が行ったんだ…)
 恵美の発した問いに、一瞬心底安堵したものの、直ぐに見る見る変わる恵美の形相を見て、愛美の顔からサッと血の気が引き
「ち、違うのお姉ちゃん!これは、愛美が悪かったの!愛美が帰って来て、直ぐにおじさんに報告しなくて…。おじさんは、お尻の電気も止めてくれたし、愛美が言った数より、減らして罰を与えてくれたの!だから、おじさんは悪く無いの!ちゃんと罰を受けたご褒美に、お風呂も着替えも許可してくれたし、全然酷くないの!」
 恵美にしがみ付いて必死に捲し立てる。

 この時点で、愛美の意識は、大きく歪められていた。
 愛美が笠原を庇った理由は、偏にあのDVDを見たからである。
 人を人とも思わない、[|スナッフフィルム《惨殺映像》]を見せられた子供が、[肉親が同じ目に遭う]と言われれば、[させたくない]と思うのは、至極当然の事であった。
 その考えは、ショッキングな映像と共に、愛美の心に強い影を落とし、心の奥底に爪を立て、|心的外傷《トラウマ》を形成する。
 このトラウマにより、愛美は笠原の行動を好意的に見るように成った。
 笠原をこの家から出て行かせるのは、簡単である。
 だが、それを行えば、待っているのはあの映像に映し出された生活で、死依りも酷い扱いであった。
 あのDVDの映像に因り、笠原の横暴な振る舞いも、無理矢理にでも理由付けして、好意的に感じなければ、精神のバランスが取れない所まで、愛美は追い詰められていたのだ。

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