隷属姉妹
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■ 第4章 突き付けられる選択7-1

 翌日、恵美達が家を出た頃、笠原はベッドで飛び起きた。
 右手の人差し指と中指に、電流が流れたような感覚が有ったからだ。
 驚いた笠原は、手首を掴んでジッと2本の指を見詰めるが、外観上に何の異常も無く、そっとその2指をベッドのシーツに触れさせると、指先からビリビリとした感触が走る。
 慌てて、シーツから手を放し、再び見詰めると、ハッと或る事に気付く。
(こ、これって…。あの薬のせいか…?)
 原因に気付いた笠原が、右の掌をベッドに着くと、微弱ながらもゾワリと剥き出しの神経を撫でられるような感触が伝わり、慌てて腕を持ち上げる。
(ちょ、ちょっと待て…。こんな風に成るなんて、聞いて無ぇぞ!)
 内心で怒りながら、その動きがハッと止まる。
 笠原の場合、その薬品を塗ったのが分厚い皮膚に覆われた掌である。
 だが、同じ薬品を粘膜や性感に塗られた者は、一体どう成る。
 それに気付いた笠原は、思わず噛み殺した笑いを漏らし、腹を抱えた。

 笠原が一頻り笑うと、携帯が鳴り響き、笠原は笑いながら携帯を手で探す。
 笠原は、涙がにじんだ目を擦り、携帯電話を耳に当て
「んだよ…。こんな朝っぱらから、何の用だ…?」
 頭をガリガリと掻きながら、言い放つと
『何の用だじゃ無ぇ!おまえ、俺との約束忘れて無ぇだろうな!』
 通話相手が捲し立て、笠原は大きな溜息を吐いて
「分かってるよ!ちゃんとおまえの言う通り、ビデオに撮ってる。んなに欲しいんだったら、取りに来いよ。タップリ6時間分の映像が記録されてるぜ」
 相手に言い放つと、通話相手は息を飲み
『6時間!?おまえ、そんなにやったのか?』
 笠原に問い質すと、笠原は鼻先で笑い飛ばしながら
「馬鹿か…。俺は、機械じゃ無ぇ、んなに勃つ訳無ぇだろ。まぁ、3発はやったが、後は玩具だ…」
 言い放ちながら、不機嫌そうな顔をニンマリと歪め
「だがよぉ…。ありゃぁ相当の当たりだ。反応も、感度も、極上だ。羞恥も強いし、我慢強さもかなりのモンだ。上手く育てりゃ、金の卵を産む鶏に成るぜ」
 通話相手に告げると、相手はゴクリと唾を呑み
『あんたがそこまで言うなら、俺も楽しみだ。っと、取り敢えず画像データを取りに行くから、用意しておいてくれ』
 笠原に依頼すると、笠原は鼻先で笑い
「俺に言うか?言っておくが、俺はビデオの配線も繋げられ無ぇ男だぞ。そんなヤツに、そんなややこしい事ヤレってか?」
 通話相手に言い返す。
 通話相手は、短く舌打ちすると[今から向かう]と言い放ち、通話を切った。

 笠原が携帯電話を放り投げながら、ベッドに大の字に成り、天井に視線を向けほくそ笑み
「しかし、マジであいつは当たりだ。逝かせりゃ逝かせるだけ、責めりゃ責めるだけ、色っぽく成って行きやがる…。ありゃぁ、普通の男にゃ絶対手に負え無ぇ…。俺らみたいな悪党に使われた方が、余程性に合ってる…」
 ボソリと言い放って、笑いを噛み殺す。
 すると、再び笠原の携帯電話が鳴り、笠原は面倒臭そうに拾い上げて、通話を繋げ
「んだよ!何度もしつけぇな!」
 喚き散らすと
『私がこの携帯に連絡を入れたのは、今回で2度目よ。それを[しつこい]と言うの?』
 冷たい女の声が淡々と問い掛け、笠原の顔からサッと血の気が引き
「あ、姐さん…」
 ボソリと呟くと、スピーカーから溜息が聞こえ
『私は、前にも言ったけど、年上の男に[姐さん]呼ばわりされる憶えは無いし、それで喜ぶ趣味も無い。ハッキリと言うと、不快よ。二度と呼ばないで』
 女の声が更に冷たさを増し、笠原に言い切ると、笠原の背筋がピンと伸び
「は、はい!分かりました師長様」
 通話相手の妙子に告げると、スピーカーから鼻で笑う音が届き
『昨夜、やったわね?』
 短く問い掛けると、笠原の顔からサッと血の気が引き、脳が弁解の言葉を掻き集め始める。

 すると、その沈黙に妙子が[フフフ]と笑い
『別に責めてる訳じゃないわ。逆に、褒めて上げたいくらい。今朝のあの子は、そそられる顔をしてたもの…。でも、処女までは奪って無い…。違うかしら?』
 笠原に問い掛けると、笠原は昨夜自分の行った事を逐一報告すると、妙子は愉しそうに笑い
『そう。処女の儘アナルの快感を刻み込んだのね…。それに、薬で被虐で感じるようにもした…。良いわ…。良い方針よ…。そのまま、道を付けて上げて』
 ソッと囁くように言い放ち
『貴重な情報を有り難う。それと、この間のお薬の代価に、ビデオの映像も貰えるかしら?悪いようにはしないから…。ねっ…』
 妙子が更に告げると、笠原は断る事などできず、首を縦に振りながら了承する。

 通話を切った笠原が大きな溜息を吐くと、再び笠原の携帯電話が成り、驚いた笠原が携帯電話のサブディスプレイを確認すると、先程笠原にビデオデータを要求した[門脇]の名を確認し、安堵に胸を撫で下ろし、通話を繋げて
「何だよ!」
 短く問い掛けると
『鍵を開けろよ。[今から行く]って言ってたろうが!』
 門脇が捲し立て、笠原は小さく舌打ちして車椅子に移動し、玄関に向かう。

 玄関扉の鍵を外した瞬間、扉が勢い良く引かれ、荒い息を吐く門脇が顔を突き出し、屋内に入ってくると、靴をワタワタ脱ぎながら
「カメラは!」
 笠原に一瞥も呉れる事無く問い質し
「寝室だ」
 笠原がぶっきら棒に答えると、そのまま廊下を駆け出した。

 笠原は、門脇の態度に訝しげに顔を顰め、車椅子で後を追うと、ビデオカメラにUSBケーブルを挿し、ノートパソコンに繋いだ門脇が
「おい!あそこの病院は、不味い。ちょっと調べただけだけど、相当阿漕な商売してやがる」
 パソコンを操作しながら、笠原に告げると
「んっ…。ああ、そうか…」
 笠原は、気のない返事を返す。
 笠原の返事に、門脇が頭を跳ね上げ
「おまえ、何悠長に構えてんだ?マジで、やばいんだぞ!あの病院の、ピンク服の看護師達は、全員が売春婦だ!それも、一切タブー無しの何でもOKの売春婦だぞ!」
 捲し立てると、笠原は頭をガリガリと掻きながら
「ああっ、知ってる。実際俺も、入院中ズッと抱いてた」
 門脇に教える。

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