梨華子と亜矢子
百合ひろし:作

■ 第一章 劣情4

とりあえず体が落ち着いたらやろうという事になったので、二人ベッドに並んで座り、水を飲んだ。
「でも何で騎馬戦?馬無いけど」
亜矢子は聞いた。梨華子は、
「最初は亜矢子のブラが透けて見えてたのを外したくなったんだけど……」
と顔を赤らめて言った。亜矢子は、
「ホック外し居たしね―――気持ちは解るよ」
と顔を赤くして視線をそらして言った。梨華子は、
「私が一方的にやると不公平だからどうしようと思ってたら、騎馬戦の説明があって―――」
と話した。これで全てが繋がった。気に入った下着はそれぞれ見せ合って更にはそれを取ること。暴れるはその為に騎馬戦の騎手の如く戦うから。覚悟とはそんなカミングアウトだからである―――。

「じゃ、始めてみようか」
そう言って亜矢子は立ち上がるとジャケットを脱いで続いてポロシャツも脱いだ。そして、スカートも脱いだ。
「スカートは……」
梨華子が言うと亜矢子は恥ずかしそうに、
「折角そこまでやるんだから下―――パンツ……も見せるよ」
と言って足からスカートを抜き取り、服の上に置いた。亜矢子の体は胸はCカップともう充分にあるが、全体的に線が細く、まだ大人の体型になりきって居なかった―――。
梨華子は亜矢子が脱いだのを見て、ブラウスとミニスカートを脱いでベッドに乗せた。亜矢子が薄い水色なら梨華子は薄い黄色だった。白でも良かったが、この日は色付きにしたかった―――。梨華子も亜矢子同様の体型をしていた。
背丈、成績、性格、体型、運動神経―――どれを取っても近い二人は双子みたいと言われていた。唯一違うのが顔付きと髪の長さで決まる髪型だった―――。


「じゃ、しゃがんで。説明するよ」
梨華子がルールを説明した。
「しゃがんだ状態でやること。尻を上げたら反則で崩れて倒れたら待て。で、ブラジャー取られたら負けね」
「質問」
亜矢子が手を上げた。梨華子は、
「何?」
と言うと亜矢子は肩のストラップに指を掛けて、
「紐で肩に掛ってるし、ホックもあるから完全に取るの難しくない?」
と聞いた。梨華子は、
「そうだね……」
と言って顎に指を当てて少し考えてから、
「こうしよう。ホック外すか左右両方胸をはだけさせたら勝ち。はだける条件は……乳首が……見えたら……で」
と言った後目線をそらし、
「―――で、負けた方は自分でブラを除けて目の前に置く……事」
と言った。この間二人とも顔が真っ赤だった―――。凄く真面目にやってる事が却って嫌らしく感じたからだった―――。亜矢子も梨華子から視線を逸らした。梨華子は静かに、
「あのアラームが鳴ったら……始めよう……」
と言った。亜矢子はそれを聞いて静かに頷いた。


ピッ……ピピピピピッ
アラームが鳴った。梨華子と亜矢子は尻をついた状態で組み合い、お互いのブラジャーを取ろうと闘いを始めた。梨華子も亜矢子も運動部には入っていないが近所のクラブで体を動かしていた関係で運動が得意になっていたと言う事だった。その二人が今組み合っているが、そうやって運動して来た為、普通の女子と比べて力も強かった。
「イタっ!」
亜矢子の肘が誤って梨華子のこめかみに入った。梨華子はその時態と倒れた―――それは先程ルールを説明した"倒れたら待て"ということで、つまり亜矢子の攻撃を一回切る為である。
「ごめん」
亜矢子は軽く謝って攻撃を止め、ポジションに戻り、梨華子は頷いた。そして再開―――。二人は息を切らせながら必死になってこんな闘いをしていた。くだらないしイヤらしい―――でも二人はそう思いながらも梨華子は溢れ出て来た悶々とした気持ちを晴らす為に、亜矢子はそんな梨華子を理解する為に闘ったが、梨華子に対して負けたくないのと、手を抜く事は失礼だと思っているので全力だった。その為思っていた以上に長引いた。
こんな闘いであるが、やってみると意外と頭を使う―――。まず考えるのは背中のホックを守る事だが、そればかり考えていると前を守るのと攻めるのは腕一本だけ。つまり相手が両手を使って攻めて来たら長い時間は守り切れず、負ける事になる。一方両手で攻めれば背中のホックを外される危険がある。となると、状況に応じて自分の体勢を決めないといけないのである。
少しこう着状態になって来た。二人とも左手を後ろに回し、ホックを守っている。そして右手で攻めたり乱されたブラジャーを直したりしていた。
そして意外な所で決着が着いた。亜矢子が手を伸ばしてきた時に梨華子は少しだけ体を傾けて避けた―――。すると亜矢子はバランスを崩し、ホックを守っていた左手を床についてしまった。その隙を梨華子は逃さず、素早く亜矢子の左脇から右腕をスッと入れ、亜矢子のブラジャーのホックに手を掛けた。亜矢子が左手で梨華子の手を退けようとしたが適わず、右手も後ろに回して離させようとしたが、ホックをがっちり掴んでいる梨華子の手はどうにも出来なかった。
プツン
と少し鈍い音がすると、亜矢子は諦めて両腕を下ろし息をついた。
「ルール通り、自分で外すね……」
亜矢子はそう言って負けを認めた。梨華子は攻撃を止め、手を引いた。亜矢子はストラップを肩から抜き取り、そしてブラジャーを自分の胸から退けて目の前に置いた。パンティ一枚姿で乳房が露になった。しかし亜矢子は隠そうとせず、手はだらんと下げたままだった。
「すっきりした?梨華子。でも態と負けた訳じゃないよ。負けたから……悔しいよ」
亜矢子は顔を赤らめながらそう言った。梨華子は、
「有難う亜矢子」
と言って亜矢子を抱き締めた。自分の悩みを聞いてくれて、それだけで無く軽蔑もせずにきちんと勝負してくれた。梨華子にとって本当に嬉しかった―――。
「もう大丈夫だよね?」
亜矢子は聞いた。梨華子は亜矢子から離れて、
「大丈夫。成績も戻すよ」
と答えた。亜矢子は目の前に置いたブラジャーを拾い、身に着けた。そして、
「どんな悩みでも相談しあえるのが親友なんだから……。お願いだから一人で抱え込まないでね」
と言うと梨華子は、
「うん……ごめんね、心配かけて」
と謝った。

これで梨華子の人には言えない悩みは解消された。しかし、これは本人は一時的なものの心算でいたのだが、そうは行かなかった―――。

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