梨華子と亜矢子
百合ひろし:作

■ 第九章 公認1

次の日―――、亜矢子は登校の時、梨華子と会った瞬間に昨日のデートで抱かれた事は分かった。しかし、それを聞くのもどうかと思ったのでその事には触れずに普通の話のみにした。しかしそれが逆に不自然だった―――。
梨華子は亜矢子と一対一になれるように昼休みに屋上に誘った。亜矢子が不思議がっていると梨華子は、
「聞きたいことあるんでしょ?」
と笑顔て聞いた。朝から亜矢子の態度が何と無く不自然だった事に気付いていた。亜矢子は暫く何も言わず黙っていたが梨華子は催促もしなければ怒りもしなかった。ただ、手を後ろで組んでフェンスに寄り掛っていた。
「昨日、大介君と―――したの?セックス」
亜矢子は気付いていた―――。別に外から覗いた訳でも梨華子が声を出していた時近くを通り掛って聴いた訳でも無かった。梨華子が僅かに腰をかばいながら歩いていたのに気付いたからだった。デートの次の日に腰をかばうなんていったらそれしか考えられなかった―――。
しかし気にはなるもののいきなり聞くわけにも行かず、梨華子が話す気になるのを待つしか無いと思っていた。
風が吹いて梨華子のスカートが大きく捲れ、パンティが見えた。梨華子のお気に入りの薄いピンクだった。しかし、梨華子は後ろに組んだ手を動かそうともしなかった。そして、
「したよ」
と静かに答えた。そして、
「いつ気付いたの?」
と聞いた。亜矢子は、
「朝、一目で」
と答えた。梨華子は、
「そっか、お見通しか……隠すつもりは無かったけど」
と言った。亜矢子は、
「痛いの?」
と聞いた。梨華子はそれに関しては、処女喪失を焦りいきなりチ○ポを奥まで突かせたから痛めたと説明した。
「ゆっくりやれば痛くないと思う」
と付け加えた。亜矢子はそれを聞いて、
「そっか。おめでとう梨華子」
と笑顔を見せた。梨華子も笑った―――。


12月―――。梨華子は処女喪失の後、大介と数回デートをし、そのうち二回体を交えた。その時はもう痛みに耐えるような事は無かった。また、初めてのデートの時から生理日のチェックをして体温を毎日測り、安全日にのみやっていた。また、亜矢子から誘われて一回亜矢子とも肌を合わせた。その時に梨華子は気付いた―――亜矢子の心の異常が―――。ただ、近いうちに話してくれると思って黙っていた。


亜矢子は梨華子に嫉妬はしなかった。大介とうまくいってるのは本当に嬉しいし、幸せになって欲しいと願った。ただ、何かが足りなかった―――。
そんな悶々とした想いをいつのまにやら抱え込む様になっていた。
『言わないと絶交する』
かつて自分が梨華子に言った言葉を思い出した。覚えてる範囲ではあれ以来、忘れたのも含めれば小学生の時以来、ずっと色々包み隠さず話して来た。しかし、今の気持ちも話した方がいいのだろうか、それともこればかりは衝突を避ける為に胸にしまっておいた方がいいのだろうか?
もっとも隠していた所で梨華子には気付かれてしまうだろうが―――、僅かな差で梨華子が得て亜矢子が失った恋愛、大介に対する気持ちを―――。

亜矢子は礼二に相談を持ち掛けた。『騎馬戦』や梨華子と肌を合わせた事は言わなかったが、出来るだけ今まであった事を話した。礼二は、
「ダイは好きだけど、梨華ちゃんとの仲も壊したく無い―――と」
と亜矢子の話からまとめて、
「恋愛って―――時には残酷な決断が要るんだぞ。梨華ちゃんだってそれだけ亜矢ちゃんの事知ってるんだから当然亜矢ちゃんがダイの事好きだって知ってた筈だ―――。言いたい事解るかい?」
と言った。つまり亜矢子を切り捨てるという残酷な決断をして梨華子は恋愛してるんだと―――、しかも亜矢子の気持ちを知っていて。礼二は、
「それでもダイが欲しいなら梨華ちゃんを蹴る覚悟は必要じゃないかな」
と言った。亜矢子は下を向いていた。決断なんて出来る訳がない。梨華子から奪い取るなんて真似は出来る訳が無かった。そしてこの日はこれで話を終えた。
「今日の明日ので結論は出ないから」
礼二もそこは良く解っていた。


1月―――、珍しく亜矢子は単独行動をした。三人には体調が悪い、等適当な事を言っておいた。学校から真っ直ぐに家に帰ると急いで着替えて直ぐに家から出た。そして向かったのは近所の駄菓子屋―――。
そこで買ったのは駄菓子では無かった。亜矢子がその後自転車を飛ばして行ったのは河原だった。
自転車を停めて橋の橋脚の所まで降りていき、誰も居ない事を確認すると橋脚に寄りかかり、そのまま膝を曲げて腰を下ろした。ミニスカートが捲れて空色のパンティが丸見えになっていたが誰も居ないのと気分が落ち込んでいた為に気にならなかった。
亜矢子はミニスカートのポケットに手を入れた。そこに入っていたのはさっき駄菓子屋で買った―――煙草だった。
亜矢子は店番やっているお婆さんだったら年を聞かれる事はない、しかももう高校二年生だ。小柄な人なら兎も角亜矢子程大きければ体格からも未成年とは思われ難い、堂々と買えば尚更である―――。
包みを剥がして一本取り出して口にくわえた。それからもう一度ポケットに手を入れてライターを取り出した。それから煙草の先を手で覆い、火を着けた。
煙草から紫がかった色の煙が立ち上る。それから亜矢子は思い切り煙を吸い込んだ。
「ゲホッ、ゲホッ、ゴホ」
口の中には苦い味が広がり、思い切り蒸せた―――。一本吸ったが結局慣れる事は無かった。
「慣れちゃったら、もう梨華子には勝てないのかな……」
煙で肺を痛めつければスポーツで梨華子にはもう勝てないのかと思うと頬に涙が伝わった。梨華子は恋愛では大介をモノにし、学業やスポーツでもこんな形で自滅していった自分では何もかも勝てないだろう―――と。
三本目に火を着けてくわえたが煙は吸わずただふかしていた。膝を抱えて顔を埋めていた―――。


梨華子は河原に来て体を伸ばしていた。大介と礼二と別れた後、家に帰り宿題を済ませ、気分転換に川に来たのだった。大介、礼二、そして亜矢子、この三人が居ない単独の遠出は珍しいと思った。
人目が無いのを確認して河原にそのまま座った。河原の砂は海の砂より粒が大きく、ミニスカートを通してでもゴツゴツとした感触が尻に伝わった。
上半身のストレッチをした後立ち上がってスカートと太股を叩いた。その時橋脚が視界に入った―――、たまたまだった。
「亜矢子―――?」
遠くて顔は判別出来なかったが、着てる服とツインテールの髪型から亜矢子かと思った。亜矢子なら何故こんな時に一人でこんな所に居るのか分からなかったので確かめようと思った―――。

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