隣人
横尾茂明:作

■ 盗聴1

 夜9時過ぎ・・隣りのドアの閉まる音・・。
(誰か来たのかな・・)

 征次は再び壁際に進み、壁に耳を付けた。

「美奈・・ごめんよ・・こんなボロアパートで・・なにせ女房の奴・・相当怒っててなー」
「今も興信所の車をまくのに1時間もかかったよー」
「本当に嫉妬深い女なんだ!」
「まっ・・俺も養子の身・・離婚されたら社長の椅子ごと放り出されてしまうからなー」
「美奈・・ほとぼりが冷めたらまた六本木にいいマンション見つけてあるから・・それまでは辛抱してくれ」

「でも・・いつまで待ったらいいの・・キッチンもお風呂もこんなに狭いの・・それと壁が凄く薄いの・・」
「となりの目つきの悪いお兄さん・・昼間からブラブラしてるの・・パチンコ屋だってうるさいし・・・」
「美奈・・美奈1ヶ月なんか待てないよー」

「分かった分かった・・すぐになんとかするから・・ちょっとの間だけ辛抱してくれ」

「でっ・・ルミはもう寝たのか?」

「ええ先ほど・・」

「ルミのこと・・実家の方はいいのか?」

「ええ・・お母さんが1ヶ月くらいなら預かってもいいと言ってくれたの・・」

「そうか・・じゃぁその間に・・こちらも女房と和解せんとなー・・もし子供までいると知れたら・・おーコワ」

「でっ・・久々に一発やろうか!」

「パパったら・・一発だなんて・・もー恥ずかしいわ」

「本当にいつまでも・・お前はウブくて可愛いな・・」
「しかし・・お前が儂の秘書になったとき・・俺は天使が舞い降りたと思ったくらいビックリしたんたんだよ」

「大袈裟なパパ・・その天使をあんな恥ずかしい格好で犯したのはどなたさん?」
「私・・あの後・・もう恥ずかしくて悲しくて・・自殺まで考えたの・・」

「もー言うなよ・・こうして今では夫婦以上の仲じゃないか」

「あのとき私・・処女だったの・・痛くて痛くて・・泣いて許しを請うているのに・・パパったら」

「よしよし可愛いやつだ・・こっちにおいで・・」

「もー・・・・・」

 美奈は女子大を出て業界大手の東和樹脂に就職出来た。そして美貌を買われ秘書課に配属され1ヶ月後には社長の目にとまる・・。接待の帰り、酔いで迂闊にも車の中で眠ってしまい・・気が付いた時にはホテルで社長に抱かれていた・・。半狂乱で暴れ、許しを請うたが許されず・・恥ずかしい姿勢で処女を散らされた・・。

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