隣人
横尾茂明:作

■ 盗聴4

 その夜隣りのオンナは帰ってこなかった・・。

 次の日も帰ってきた気配はない・・。征次はその日、ハローワークの紹介で渋谷にある無国籍料理屋の面接に行き・・店主から試しに1日働いてくれんかと言われて・・朝から晩までただひたすらエビの殻剥きとジャガイモの皮むきをやらされた・・。家に着いたときは夜の11時を回っていた・・。

(ふー疲れた・・あぁーあほらし・・あんなことやてられるか! とはいうものの食わなきゃならんしな・・)
(時給千円で・・きょうのとこは1万2千円・・昼飯と晩飯のまかないがつくし・・悪くはないかー)

 征次は手の中の1万2千円を握りしめた・・。
(まっ・・やれるとこまでやってみるか)

(しかしとなりは今日も帰って来ないのかな・・)
(12時まで待って・・帰って来なかったら・・またお邪魔するかな・・ククク)

 征次は階下に降り、道路を横切りコンビニに入った。雑誌のコーナーでいつものようにグラビアを捲り、ヘアーヌードを一通り見てからビールとツマミとフィルムを買って部屋に戻った。

 胡座をかいてテレビを見ながら思案する・・。
(あのオンナを脅すネタが有ればなー・・)

(美奈って言ってたなー・・あのオンナ・・爺の愛人だったとわな・・綺麗な顔して爺に弄られ喜ぶとは・・)
(チクショーやりてーな・・綺麗なオマ○コかー・・見てみてなー)
(そうだ・・旦那の身元が分かれば脅すネタにはなるかー)
(確か旦那の奥方が嗅ぎ回っていたと言ってたな・・よしゃ!これは使える・・)

 征次は時計を見た・・1時近い・・。
(もー今日は帰ってこんだろー)

 征次は立ち上がり静かにドアを開け廊下に立った。辺りをうかがい廊下を静かに進む・・。

 オンナの部屋の前で左右に人影が無いことを確認し鍵穴にそっと鍵を入れて回す・・ガチャと音がして開く・・。

 征次は素早くドアを開け身を滑り込ませる・・。
(フー・・しかし興奮するぜーククク)

 持ってきた懐中電灯を下に向けて点し・・奥に進む、まずはベット横の本棚の引き出しを引いてみる・・日記が有る・・征次は内容を読んでみる・・日記は3年前から始まり・・旦那との蜜月の記録が克明に記してあった・・。

 ポケットからカメラを取り出し、日記を持ってベット下に潜り主要なページを10枚ほど写した。

 日記を元に戻し、隣の引き出しを引く・・通帳やらコンドームの箱が並んで置かれ・・母子手帳の下にオンナの社員証が有った。

(東和樹脂・・秘書課・・おいおい・・あのでかい会社かー・・ということは・・あの爺は東和樹脂の社長?)
(ちょっと・・やばくないかな・・相手が大物過ぎるぜー)

(しかしまーなんだな・・危なくなりゃ逃げればいいか・・借金三昧の俺にゃー守るもん何もないしな・・)

 征次は箪笥を物色し、気に入ったショーツ2枚をポケットに入れオンナの部屋を出た。

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