隣人
横尾茂明:作

■ 自暴自棄2

 美奈はキッチン床に仰向けに倒れ悲鳴を上げた・・。

 征次は後ろ手で鍵のロックを回しドアチェーンを掛ける。

 そして美奈に素早く覆い被さり、口を押さえ・・、「ギャーギャー騒ぐんじゃねー! 愛人さんよー」と凄む。

 美奈は手足をバタつかせ、征次から逃れようと藻掻く・・顔は青ざめて面白いように震え始める・・。

「愛人さんよー・・大声出したらこの綺麗な顔が二目と見れん顔になるぜ!・・分かったら頷け!」

 征次の狂気じみた目はさらに美奈を怯えさせる、美奈はガクガクと必死にクビを縦に振り始める。

「よしよし物わかりのいいオンナだ」
 征次はゆっくりと美奈の口から手を離す。

 美奈の唇は紫色に変色し、恐怖に怯えてガクガク震えている。

 征次は相手が完全にこちらに呑み込まれたと知るや余計にいたぶりたくなる狂気の性癖が目覚めた。

 美奈の頬を平手で数発殴り・・髪を掴んで奥の部屋に無造作に引きずり込む。

 恐怖に引きつった美奈の顔は醜く歪み、壁の所まで後ずさり口を押さえて悲鳴を放つ・・。

 征次は嬲るように美奈の首に両手をかけ・・「テメー騒ぐと殺すぞコラー!」と力を込めた。

 美奈は哀願する顔で「こ・・殺さないで・・」と征次の手を解こうと藻掻く。

「よしよし・・殺さんから黙れ・・分かったな」

 征次は立ち上がり美奈を見下ろす・・美奈は恐怖のあまり泣くことも出来ない体でいる・・。

「愛人さんよー・・オメーらーの睦声で俺は夜も眠れんのよ・・ああ・・どうしてくれる?」

「ごめんなさい・・ごめんなさい・・どうか堪忍して下さい・・ううっ」

 美奈は男の意図のきざはしが少し見えたせいか・・ようやく泣き始めた・・。

 泣き声が徐々に大きくなって・・子供が泣くような声音に変わって来たとき・・征次の性欲が目覚めてきた。

 無抵抗に泣くオンナは無性に男の性欲を助長させると・・このとき征次は思った。

 壁にもたれて泣く美奈の横に並んで座り嬲り始める・・。
「愛人さんよー・・サーどうしてくれるんだ?」

 征次は美奈の肩に手を回し・・涙に触れ・・唇に触った、美奈は逃げる仕草をしかけたが肩を強く掴まれ完全に観念した。

「んん・・さーどうするよ・・」

 嗚咽を漏らしながら美奈は俯いてようやく口を開いた・・。
「前田さん・・ど・・どうしたら許して頂けますか」

「コラー・・こっちを向いて喋らんかー」
 征次は殴る仕草をする・・美奈は涙を飛ばして顔を手で覆う・・。

「もー叩かないで・・エーン・・叩かないで下さい・・」

「痛い目みたくなかったらこっちをみて喋れ! バカアマ」

 美奈は恐る恐る顔から手を離し、征次を哀願する目で見つめた。

 征次は・・ゾクっとする・・。
(オーいいオンナだ・・こりゃ想像以上だぜ)

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