真梨子
羽佐間 修:作
■ 第1章 東京転勤1
第1章 東 京
−東京転勤−
羽佐間真梨子は、新神戸駅で、夫の羽佐間浩二に見送られ、新幹線「のぞみ」に乗って東京に向かっていた。
東証マザーズに上場したばかりのITコンサルティング鰍フ大阪本社に努める真梨子は、4月から半年の予定で東京支社に転勤する事になった。
真梨子は、まだ入社6年目だが、優秀なマーケティング調査・分析力が買われ、部下を5人を統率するチームを任されている。
今回は、社長の島田、直々に東京赴任を依頼され、エステ業界大手の「高倉ビューティ」の情報システム再構築コンサルティングチームに加わる事になった。
社長の島田と、夫の浩二は大学時代からの友人で、仕事上の付き合いもあった。
その仕事で、真梨子は浩二と知り合ったのだから、島田が二人の愛のキューピットと言えなくもない。
島田社長は二人が1月の末に結婚したばかりである事を知った上での転勤依頼で、浩二に相談したが、真梨子のキャリアアップの為に是非行って来いと薦められた。
浩二は普段から二人の18歳もの年齢差から、俺がいなくても一人で生きていける様に自分を磨いておけと言っていたので、そう言われるのは想像していた。
しかし真梨子は、一緒に暮らし始めてまだ2ヶ月しか経っていないこの時期に、半年も浩二と離れて暮らすのは寂しくて仕方がなかった。
『半年経てば、マンションも完成するし、もういちど新しい生活をスタートさせるぞ! 東京で頑張っておいで』
浩二のこの言葉で、行く決意を固めたのだった。
今、浩二は真梨子の為にマンションを建てている。
10階建ての最上階1フロアが二人の住まいになり、階下は賃貸マンションにする予定で、『俺の身に何かあっても、家賃収入で真梨子が暮らしていけるように』と、浩二が半年前から準備していたものだ。
設計段階で、真梨子の部屋や、リビング、キッチンなど好きなようにしていいと言われていたので、本を買い込んで一生懸命アイデアを考え、ほとんどが真梨子の原案通りに去年の11月に着工された。
浩二は、自分の部屋と、プレイルームらしい部屋は、自分で設計し、『出来てからのお楽しみだ!』と真梨子には図面すら見せてくれなかった。
新幹線の窓から見える景色は、ようやく春の訪れを感じさせうっすらと霞がかかっている。
浩二と当分逢えない事を想うと涙が滲んできた。
――あっ、メール?! 浩二さんだ。
【頑張れ!真梨子!チュ(^・^*)】
携帯に届いた短い文章を見た途端、東京へ行く事がだんだん気が重くなっていた真梨子の心が、嘘のように吹っ切れた。
「うふ。 ありがとう!浩二さん」
暫く逢えないから、昨夜は浩二に厳しく可愛がって貰った身体のいたるところに、心地よい筋肉の軋みと痣が残っている。
浩二の愛奴の証の股間のリングが、股をよじると大腿の付け根に感じることが出来た。
触る訳にはいかないが、両手をスカートの上から、大腿の合せ目に置き、浩二を想った。
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