真梨子
羽佐間 修:作

■ 第1章 東京転勤3

−プロジェクト−

 レインボービル1階の受付で、来意を告げると、15階の社長室へ行くようにエレベータまで案内された。
 エレベータが開くと、秘書らしい美しい女性が待っていて、先に立って社長室まで案内する。
 4人の来社を告げるとドアの向こうから涼やかな声が届いた。
「どうぞ」

 窓際のデスクから、TVで見かけるそのままの高倉由紀が、笑みをたたえてソファを薦めてくれた。
 名刺を交換した後、一人一人の目を見詰め、語りかけるように喋り始めた。
 さすがに貫禄があり、優雅な雰囲気を漂わせ、今回のプロジェクトへの意気込みや期待を能弁に語った。
 最後に、高倉側のプロジェクトの担当を紹介すると、社長室に呼び入れられた。
 全体の責任者として、創業時からの高倉のパートナーの常務取締役:木島 紀子、IT室課長:吉野 勇作、営業統括本部課長:沢田 祐二、FC営業本部主任:新谷裕美、連絡係として秘書室の横田 真二、各セクションから合計5名が紹介された。
 プロジェクト専用の部屋が用意されているので、早速移動する事になった。
 社長室を辞する前に、高倉由紀が、ITコンサルティングのスタッフ達に握手を求めてきたが、真梨子にだけは『羽佐間さん、よろしくね!』と親しげに声を掛けて握手を交わした。
 ちょっと驚いてしまったが、このプロジェクトの人選には、高倉側も関与している事なので、今までの真梨子のキャリアが評価された事が想像できて、嬉しかった。

 5FのIT室の隣に、「情報システム再構築プロジェクト」とネームプレートが付けられた部屋が用意されていた。
 それぞれの席を決め、席に座る。
 梶部長が「さあ、プロジェクトの発足だ!秋山、羽佐間、菅野! じゃ俺は会社に戻るが、しっかり頼むぞ!」と言って部屋を出て行った。
 3人は、毎日この部屋に直接出勤する事になり、週に1度、金曜日の朝に進捗報告に、東京支社に行くスケジュールになっていた。

 さっそく現状分析の為に、各セクションのヒアリングを始める事になり、まず沢田祐二の属する営業統括本部から始める事になった。

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