真梨子
羽佐間 修:作

■ 第1章 東京転勤5

―真梨子Fan Club― 4月15日(金)

 多忙で充実した日々が続いていた。
一通り各セクションとの2週間に渡るヒアリングが終わり、組織の概要は大体把握出来た。

 日々の仕事やランチを共にしたりして、メンバーとは随分と打ち解けた雰囲気になってきている。
 今日は、高倉の木島常務の主催で、プロジェクトメンバー全員が揃っての初めての会食だった。
 表参道の洒落た居酒屋に席が設けられており、木島常務の挨拶で会はスタートした。
 実務を担う若手の懇親が目的だから、この挨拶で失礼するという木島常務から素敵なご褒美があった。
「皆さん、本当にご苦労様ですね。 とてもいい感じの分析レポートを頂けそうだから、仕事を兼ねてだけど、ITコンサルティングの皆さんにプレゼントがあります」

「え〜?! なんでしょう?」菅野 久美が、嬉しそうに歓声をあげた。

――ふふ この子は憎めない人だわ
 真梨子は素直に感情表現できる、久美を羨ましく思った。

「これよ!どうぞ!」
 差し出されたのは、【セレブ フルボディスペシャルエステ 特別会員券】と書かれた会員証だった。
「え〜〜!これ、ホントに頂けるんですか?」
「ええ、もちろん! 但し、私たちのサービスの素晴らしさを知って欲しいって意味もあるから、直ぐにでも体験して、今のお仕事のアイデアに繋げて頂くってのが条件よ! いかが?」

「はい! それはもう、悦んで! ね?真梨子先輩?!」
「えぇ・・ 勿論嬉しいですけど、良いんですか?これって正規だと、100万円以上しますよね?!」

「ええ!平均でお一人当たり300万位ご利用になられるサービスよ
「このサービスを広く世の中のセレブ達に利用して頂く為にも、この企画に携わる貴方達に、この心地良さを実感して欲しいのよ この体験を活かして仕事に反映させてくださいね! 」

「はい!」
「はい! ありがとうございます」

「うわぁ〜! いいなぁ。 ホント羨ましい」とFC営業の新谷 裕美は、心底羨ましそうな声をあげた。

「ダメよ! 新谷さん。 貴女達には、社員割引があるでしょ!そんな言い方したら羽佐間さんたちが利用しにくいじゃない!? ねぇ」
「は〜い ゴメンナサ〜イ」

「あのぉ〜常務・・・ 僕は?」秋山がおどけて拗ねて見せた。

「ホホホ もちろん貴方にもね 男性としてのエステ体験をして頂きますよ はい、これ!」
【メンズエステ 特別会員券】と記されていた。

「あはは そりゃそうっすね ありがとうございます」
「早速、来週から各自のスケジュールを見ながら、出来るだけ短期間で体感させて頂きます」と秋山が代表して礼を述べた。

「どう致しまして! いい企画に繋げていただければ、安いものです お店のスタッフには、さっそくVIP待遇に!って指示しておきますからね スケジュール調整して、綺麗になってください」

「ははー 恐縮です」
拍手で送り出されて、木島常務は店を後にした。

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