真梨子
羽佐間 修:作
■ 第1章 東京転勤6
お酒が進み、打ち溶け合って談笑するメンバー達の真梨子の人物評はこんな感じだ。
●営業統括本部の沢田課長は、当初抱いたイメージとは異なり、凄く真面目に会社の体制を変えようとする”熱い男”を感じている。
このプロジェクトのキーマンだと真梨子たちは考えていた。
●IT室の吉野課長は、コンピュータメーカーからの転職組で、エンジニアに多い寡黙なタイプで仕事振りは誠実だ。
東北の過疎地出身らしく朴訥とした喋り方が人柄を表しているようで”いい人”の典型のような人だと思える。
●FC営業本部の新谷裕美主任は、28歳でFC営業本部の主任を努めるキャリア志向の優秀な女性だ。
身長165cmの長身でFカップのナイスボディの持ち主で、真梨子は羨ましい気持ちを覚えてしまう。
しかもショートカットの髪型が良く似合い、大きな瞳が特徴の美人ときてはさぞ男性にもてると思えるのだが、仕事が彼氏と公言し、彼氏はいないらしい。
女性から見ると、嫌味な女の典型のようだが、学生時代はラクロスの日本代表にもなった程のスポーツウーマンでさっぱりとした性格で、真梨子は仕事を離れても友人付き合いしたいと思っていた。
●秘書室の横田 信二は、学生時代はラガーマンだったらしく、爽やかな如才ない秘書らしい身のこなしだが、笑顔の目の奥が笑っていないように思え、真梨子は苦手だった。
思えば皆、独身で結婚しているのは真梨子だけだった。
お酒が入るとまた違う一面が顔を見せる。
普段は凄く無口なIT室の吉野課長は、お酒が進み、酔うとやたらと陽気になり饒舌になった。
ケラケラ笑いながら、学生時代の失敗談を楽しそうにする。
さして面白い話題でもないのだが、底抜けに明るい表情と、東北訛りの独特の喋りに引き込まれ、皆で大笑いしてしまった。
吉野が唐突に先生に指名をして欲しい小学生のように右手を挙げて立ち上がった。
「いやぁ〜、羽佐間さんはいいなぁ〜! 実にいい! 憧れちゃいますよ! 知り合ってたった2週間ですけど、おしとやかで〜、美しくて〜、賢くて〜、優しくて〜、凄く話しやすくて、そんでもって清楚な色香! そんな羽佐間さんが大好きで〜〜す! 僕、惚れちゃいました〜! 旦那さんが居られようと、僕、真梨子Fan Club会員第1号で〜す!あははぁ〜〜」
「何言ってるんですか? 吉野さん、酔いすぎですよ〜!」
真梨子は少し驚き、吉野を制して座らせようとした。
しかし沢田が後を追い「じゃ、俺、2号だ!」と叫び、そして横田が手を上げ「俺、3号!」と名乗った。
「あらら。 じゃ私、女性会員 1号ね!」と新谷 裕美が手を挙げた。
「私も〜〜! 前から憧れの先輩ですもん。女性会員2号で〜す!」と菅野久美が手を上げた。
最後に秋山が、「じゃ俺は会長に立候補する〜! 告白したことはなかったけど、泉真梨子に惚れていました〜! しか〜し、半年前、羽佐間真梨子になったと連絡を受けたとき、沢山の涙を流しました〜。 惚れた女の幸せを祈る男の純情だぞ〜! ど〜だ〜!? 文句あっか〜!?」
やんやの歓声と拍手で秋山が会長という事になった。
「みんな、ふざけすぎですよ〜」と苦笑しながら真梨子は言ったが、意に介さず、真梨子Fan Clubの会則を作ろうぜ!と盛り上がり始めた。
『真梨子の半年の東京暮らしの間、毒牙から守る!』とか『40過ぎの旦那さんから我らの手に取り戻す!』『Fan Clubの集いの時は、羽佐間さんと呼ぶのは禁止!真梨子と呼ばないとダメ〜!』だとか真梨子Fan Clubの会則ネタでワイワイ大はしゃぎだ。
そのうち『真梨子の魅力とは?』という話題になり、『しっかりしてるけど、おっちょこちょいのところ〜』『何故だか守ってあげなきゃ!って思わせる〜』『とっても良い匂いがする』『何でも話せる聞き上手!』『遠慮気味なオッパイ!』とか真梨子の事をだしに話題は尽きず盛り上がっている。
新谷裕美が『食べちゃいたいくらい可愛い!』って叫んだ時は、『ええ〜!!』と驚きの声が上がり、”新谷レズ説”まで飛びだし、裕美は頬を染めて懸命に否定するが、その”必至さ”がますます怪しいとか散々からかわれた。
沢田の提案で、会則に『男女とも、真梨子独占を意図する抜け駆けは禁止!』という項目が追加されたのだ。
プロジェクトの親睦としては、大成功の時間だが、真梨子は苦笑するしかなかった。
2次会のカラオケBOXでも、そのままのノリで、大はしゃぎで、良い連帯感が出来た感じがして真梨子は嬉しかった。
大声で歌う吉野と沢田には、目に焼きついた光景があった。
真梨子が高倉に来て4日目、プロジェクト室を訪ねた時、書庫の高い場所の書類を、椅子に登った真梨子が取ろうとしていた場面に出くわした。
その時、真梨子のスカートからこぼれた白いガーターベルトに吊られたストッキングを穿いた太股を見てしまった。
二人で顔を見合わせ、その光景を暫く見詰めていた。
二人とも妙に色気を感じ、昂ぶりを覚えたのだった。
扇情的な下着は、真梨子からは全く想像できないものだった。
そして目の前の真梨子もきっと…
■つづき
■目次
■メニュー
■作者別