真梨子
羽佐間 修:作

■ 第2章 体験エステ5

−千代田線− 5月9日(月)

 少し恐れを感じていた東京での一人暮らしにもようやく慣れてきた。
 しかし、東京の通勤ラッシュにだけ、ほとほと辟易してしまう。
 真梨子が経験している神戸や大阪の比ではない。
 乗っている時間はほんの20分程なのだが、乗り降りするのに苦労するほどのすし詰め状態が続く。
 この千代田線は、痴漢が多いと、菅野 久美から聞かされていた。
 意図的かどうかは判らないが、お尻に手が当たっているのかしら?と思うのは日常茶飯事だ。

 浩二の好みで付け始めたガーターベルトは、下着としてはまったく機能的ではないと思うのだが、今では真梨子もそのシルエットや煩わしさがかえって好きになり、毎日、下着のオシャレとして楽しんで着けている。
 痴漢に出会うことを考えると、パンストに替えようかと思った事もあった。
 しかし、たったの20分だし、何ということはないと真梨子は高をくくっている。

 季節は、ゴールデンウィークが終わり、心地よい天気が続き、時折汗ばむ日さえある陽気だ。
 ガーターを着けた下半身を包むスカートの中を、春の風が潜り抜ける時の心地よさは、今が一番の季節だ。
 女にしかわからない悦びの一つだと真梨子は思っている。

 出勤前に、裸でドレッサーの前に立ち、今日一日身に着ける下着を選ぶ。
 真梨子は、この時間がとても好きだった。
 それに、週に2度のペースで受けるフェイシャルコースエステの効果は如実で、スベスベする肌の張りは、二十歳の娘のようだと田中店長に誉められた。
 真梨子も驚くほど、肌艶が良くなり、お風呂上りの肌の手入れも楽しく出来る。

 鏡に写る自分を見るのがとても楽しい時間になった。

 今日は、レースをふんだんに使ったローズピンクのガーターも含めた3点セットを選んだ。

   ◆
 ホームに電車が入ってきた。
 いつもの車両のいつものドアから乗りこむ。

 初めて見た時、可愛い!と思わず思ってしまった色白の聡明そうな美青年が、何日か前から真梨子をじっと見詰めているのに気付いていた。

 今日も乗り込んだ車両の向こう側のドア付近に少年はいた。
 やはり真梨子を見詰めている。

 一瞬目が合ったが、直ぐに彼が目をそらせ、何気ない風を装っている。
 きっとこの先の代々木上原で降りる東大の新入生なのかな?・・・と真梨子は想像していた。

 最初はストーカーなの!?と警戒する気持ちを抱いた。
 今は異性に初心な”可愛いい僕ちゃん”という感じがして、彼の”憧れの年上のお姉さん”のポジションを楽しみ、見詰められるのは悪い気はしなくなっている。

 今日は、乗降客の波に流され、電車が出発する頃には、斜め後ろのその美青年の胸に背中を預けるような姿勢で、体が触れるあう位置に立っていた。

 ほんの少しドキドキし、身構えてしまう真梨子。
 暫くしてから、青年の息遣いを首筋に感じるような気がしていた・・・

 最初は、手の甲が、ただお尻に触れている感じだった。
 明らかに意思を持った動きで真梨子のお尻を触りだした
 ――え・・・ ヤダ… 痴漢 ・・・

 今は、明らかにお尻を包み込むような感じで、掌の温もりをお尻に感じる。
 暫くすると、指先に少し力が入り、尻の割れ目に沿って、押し込むように上下に摩り始めた・・・
 抗議の意を込めて身体をよじり、後ろを覗くと、やはり彼の手だった。

 ――え・・・?! 何て目でみてるの?
 懇願するような目が潤んで必至でごめんなさい!と訴えているように真梨子には映った。

 ――あっ…
 お尻に固いものが当たる。
 ――この子、 私に興奮してる… どうしよう…

暫くすると、勃起した股間を尻の割れ目に押し付けたまま、手は動かさずに指先だけで、少しずつスカートをたくし上げてきた。

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