真梨子
羽佐間 修:作

■ 第3章 目覚め3

 タクシーに乗って、六本木に出た。
 シックなイタリアンレストランで、素敵なディナーをともにした。
 大好きなワインを振舞われ、フワフワ心地よく酔って真梨子は上機嫌だ。

「ご馳走様でした、川上店長 本当に美味しかったです!」
「そう!良かった。悦んで貰えて」

「ねえもう1軒、軽くお酒を付き合ってくれない?」
「はい 悦んでお供いたします!うふっ」
「それとね エステルームを出たら奈保子って呼んでね お仕事は忘れましょ!」
「は、はい 奈保子さん」

 少し歩いところにある雑居ビルに入り、エレベータで6Fにあがった。
 会員制倶楽部「Half Moon」と書いた看板があり、入り口に立つ黒服が、慇懃に出迎えてくれる。

 ドアを開けると、店内への薄暗い通路がある。
 店内は反射照明で廊下より更に暗く、真梨子は明るく照らされた暗闇にポッカリ浮かんだように見えるカウンターに案内された。

 徐々に目が慣れて、周りを見回すと、その光景にはっ!としてしまった。

 広く間隔を取って配された10席近いソファ席には、裸に近い格好の女性が胸を揉みしだかれていたり、店のスタッフらしき女性がボンデージファッションで給仕をしているのが見えた。
 女性の媚態を示す声も聞こえてくる。

「川上さん・・・あっ 奈保子さん ここは?」
「会員制のSM倶楽部よ 貴女、こういうところは初めて?」

「…い、いいえ・・・ 何度か・・・」

「ご主人と?」
「ええ」

「そう ご主人以外とは初めてなの?」
「はい」

「こんなところへ来ちゃうと、早く神戸に帰って、その素敵な身体を見せびらかしたくなっちゃった?真梨子さん!」
「・・・そ、そんな」

「いらっしゃいませ。 奈保子さん」
 青いロングのチャイナドレスに身を包んだ長身の美人が現れた。
「今晩は。 雅ママ」

「いらっしゃいませ。 雅といいます」
 真梨子に向かってにこやかに微笑み、挨拶をした。
「こんばんは・・・ はじめまして」

「こちら様は、初めてですね! 綺麗でチャーミングな方ですね、奈保子さん」
「でしょ〜 私のお気に入りなのよ」
「まぁ!羨ましい こんな可愛い子を可愛がっているのね?!」

「あ、あの・・・ そんなんじゃないんです・・・」
レズビアンと間違われたと思い、懸命に否定する真梨子。

「ほほほっ。 貴女は虐められたい方の人でしょ!」

「えっ、い、いえ・・・」

「あはは さすがにママね! 一目で見抜かれちゃったわね」
「・・・・・・ 奈保子さん・・・」

「大丈夫よ!このお店は 入会審査が凄く厳しくてホントに身分のしっかりした方しか入会できないのよ! ここでの出来事は、秘密厳守が絶対条件なの 」
「・・・・・・」

「安心よ!このお店なら 正直におなりなさい、真梨子ちゃん 楽しまなきゃ!ねっ!」
「・・・・・・」

「大丈夫 私が付いてるわ 貴女がマゾだって判っても誰も笑わないし、蔑まないわそんな貴女を歓迎して、しっかり見詰めて貴女に恥かしい快感を堪能させてくれるわ」
「・・・・・・」

「さぁ、ジャケットを脱いで御覧なさい」
 俯いて顔を真っ赤にしていた真梨子が、顔を上げた。
 エステルームで着替える時、奈保子の『バストが変な形に固まる』のアドバイス通り、ブラジャーなしで素肌にブラウスを着ていた。

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