真梨子
羽佐間 修:作

■ 第2章 目覚め14

「秋山さん。 梶部長からお電話です」
「ほい。 ありがとう」

爽やかな真梨子の笑顔はいつも秋山に元気をくれる。
 ――この人の笑みは、本当に癒してくれるよなぁ・・・ しかしなぁ・・・

 電話を終えた秋山には、向かい側のデスクで、凛とした表情でパソコンを叩いている真梨子を見ると、昨夜翔太から聞いた話が今でも信じられない。

 秋山は、1週間前に翔太の痴漢行為を咎めた時、彼の指に付着した真梨子の愛液のことがずっと気掛かりだった。

 昨日、ミーティングを終えて、菅野 久美がテーブルの上の書類を片付けていた時、ボールペンが転がって落ちそうになった。
 テーブルのこちら側にいた真梨子が、咄嗟に身体を伸ばして、落ちそうになるペンに手を差し出した時、バレリーナのように片足立ちで足を跳ね上げ、テーブルに突っ伏すような形になった。
 一瞬だったが、真梨子のフレアスカートが跳ね上がり、白いガーターに吊られたストッキングと白い尻肉が秋山の目に映った。

 秋山は、下着を穿いていないのか?とドキッとしたが、尻の割れ目の上部に白い生地が覗いていた。
 Tバックのパンティの後ろの細い生地は、真梨子のむっちりした尻の割れ目に喰い込んで、何も穿いていないように見えたのだった。

 秋山は慌てて部屋をでた。
 ――あんなイヤらしい下着を着けて仕事してるんだ・・・ 真梨子は・・・

 なんだか無性に苛立っていた。
 ――真梨子に抱いていたイメージが壊されたからか?・・・
 矢も盾もたまらず昨夜、翔太を呼び出して、痴漢の顛末を詳しく問いただしたのだ。

 翔太の告白は衝撃的だった。
 あの痴漢行為は、ちゃんと約束したわけではないが、ある意味合意の上での出来事だったという。
 そしてその時に触れた真梨子の下半身には、毛がなく、性器にピアスをしていたと言うだ。

 翔太がプレゼントしたピアスをして、ノーパンで電車に乗れという命令まで真梨子は実行したと言うのだ。
 最初翔太がとつとつと話し始めたときは、とても信じられなかった。
 今でも心底信じているわけではない。

 ――目の前の真梨子は、今も性器にピアスを付けて仕事をしているのだろうか?・・・ あんないやらしい下着を着けているのだろうか?
 秋山は、真梨子のスカートの中が気になって仕方がない。

 そんな目で真梨子を見ていると、最近、真梨子の仕草が妙に艶っぽく、目が潤んでいるように見える。

 そしてさらに驚かされたことは、翔太は梶部長の息子だったのだ。
 2年ほど前に酔った親父を家まで送り届けてくれた部下の一人が真梨子だったと言う。
 その時に大嫌いな父親を甲斐甲斐しく労わる真梨子を見て、勉強漬けの翔太には真梨子が女神に見えたそうだ。
 それ以来、真梨子の事がずっと忘れられず憧れていたという。
 偶然電車で見かけた真梨子と話すつもりで毎朝、電車に乗っているうちに偶然身体に触れてしまったという。
 そしてその時の彼女の意外な反応に、つい魔がさしてしまったと翔太が言った。

 秋山は、自分が梶部長の部下である事を伏せたまま、抑えきれない劣情に支配され、禁断の要求を翔太に迫った。

『マ・ゾ・お・ん・な と僕が口を動かしたら、真梨子さんが崩れたんです!』
 この翔太の言葉が、秋山の脳裏を支配していた。

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