真梨子
羽佐間 修:作

■ 第3章 目覚め23

「梶部長は、こういう類のお店は、初めてですか?」
 横田が、プロジェクトチームの梶を伴ってHalf Moonを訪れたのは、10時を回っていた。

「そうだね。こんな高級なのは初めてだね! もっと下世話なところは経験あるがね」
「お嫌いなら、直ぐに河岸を変えますが、どうします?!」
「いやいや! 結構だよ。 大変気に入りました! あはははっ」
「そうですか。それは良かった」
「しかし、よくこういうところを利用するのかね?」
「僕がここに来るようになったのはですね、ここのオーナーのお名前はいえませんが、日本有数のお金持ちで、我が社のエステの上得意様なんですよ。 この店は趣味で運営されているんですが、ここの女の子達は、オーナーの要請でうちのサロンで磨き上げて皆さんに可愛がって貰っているんです。 それがご縁で時々接待などで利用させて頂くようになったんです。
見てくださいよ、梶さん。 女達、輝いているでしょう!?」

 梶と横田の視線の先には、天井からこちらに背を向けて吊るされた素晴らしいプロポーションの全裸の女が、女王様然としたボンデージに身を包んだ女に、鞭でお仕置きを受けていた。
 鞭がヒュンと唸り、肌で弾ける音が響く。
「ひっ!ああああああぁぁ……… 許してくださいぃぃぃ・・・・・・・・・」
 か細く悲哀を帯びた女の啼き声が、フロアに響き渡る。
 しかしその声には、どこか湿り気があり、牡を誘う牝の音色が含まれている。
 白い肌に鞭が遺した赤い筋が幾条にもはしり、この哀れな光景は、ここに集う客たちにはこの上ない被虐美だった。

「女を虐めるのは、男の夢の一つだよな?!」
「そうですね!」
「どんなに聖人君子ぶっても、牡として牝を荒々しく犯したい!って欲求はすべての男が持っているもんだ。 それを実際に出来るかどうかは、別の話だがね。 しかし、時間制で金で演技する商売女じゃどうもなぁ、やっててもどこか白けているんだよなあ」
「ですよね〜 梶さん! でもここの女達はね、その欲望を満たしてくれますよ!」
「ん?!」
「ふふ。 そういう金で感じた振りをするプロじゃないんですよ」
「プロじゃない?!」
「ええ。 風俗のイメージ・プレイなんかじゃなくて、見知らぬ男達に本人の意思にかかわらず本気で犯されているんです。  本当に哀しくて、本当に感じて涙も淫汁も流しているんですよ 」
「そ、それは?・・・・・・」

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