真梨子
羽佐間 修:作

■ 第4章 淫・由梨1

−メイド−  6月16日(木)

「いらっしゃい。 奈保子さん 由梨ちゃん」
 麻倉 雅がにこやかに二人を迎えてくれた。
「こ、こんばんは…」
 由梨と呼ばれて真梨子は少し戸惑った。
「あら?!違った?今日は、由梨は封印なの? 真梨子さん」
――淫らな時間を求めてここに来た事を認める事になる…
「・・・今日は、真梨子です・・・」
「あら、そうなの… 残念だわ! どうしましょう・・」
「どうしたの、ママ?」
 奈保子がニコニコしながら雅に尋ねた。
 聞けば、男性のチーフスタッフ・星野が、今週初めから札幌にオープンしたお店のサポートで不在のところに、マゾ奴隷キャラの「里奈」が急に休むと言ってきて困っているらしい。
 雅は真梨子に今日だけでいいからスタッフとして手伝ってくれないかと言うのだ。

「そんな… 無理です! あんな恥ずかしいことはとても・・・」
 真梨子の視線の先には、スポットライトに照らされたステージで縄で縛られた女が片足を大きく拡げて吊られていた。
 蜜に誘われる蟻のように魅惑的な裸身に男達は群がり、女体はオス達の唾液で濡れ光っていた。
 淫具で蜜壷を容赦なく掻き回し、快感にのたうつ女の嬌声に混じって淫水の弾ける音さえ聞こえてくる。
「うふ 貴女、ステージであんな事されるって想像したでしょ?!」
「……」
「ふふ 真梨子さん。 あのステージの女の子のような事をして頂戴って言ってるんじゃないわよ。 この前のような少しHな衣装を着て、喫茶店のウェイトレスのように、お客様のお席に飲み物や、食べ物を運んで貰うだけでいいの」
 聞いた瞬間、真梨子の蜜壷はキュンと蠢き、熱い淫汁を溢れさせていた。
 初めてこの店を訪れた時から、大勢の男の前で恥かしい姿を晒して苛められている女達を、羨ましいと思う自分に気付いていた。
 しかし、ステージであんな真似は絶対自分には出来ない事だとも思っていた。
――それくらいなら…

「あら 渡りに船だわ。 ママ、真梨子さんはねぇ、今日はドキドキを楽しみに来たんですよぉ〜!」
奈保子は真梨子に言い聞かせるように、雅に今日の真梨子が来る事になった経緯を話してしまった。

「で、でも… あの…私は結婚しているし、会社は、アルバイト禁止ですからお手伝いする訳には…」
「うふ じゃ、ウェイトレス自体は嫌じゃないって事ね?! じゃノーギャラで、人妻の真梨子じゃなくて架空の露出好きの”由梨”だったら問題ないって事でしょ!?」
「うっ・・・ そんなこと・・・」
「あはは さすがママね! 架空の女”由梨”が自分の趣味でお手伝いするのね! うふふっ じゃぁ、真梨子さんの拒む理由は無くなっちゃったわねぇ! 」
「・・・・・・ でも・・・」
「私が付いてるわ! 真梨子さん 楽しんでいらっしゃい!」
「助けて頂戴な。 由梨ちゃん」

 少し考えた末、「…ええ… わかりました…」と答えてしまった。
「そう!じゃこっちへいらっしゃい」

 真梨子は、雅に手を引かれ、スタッフルームに連れて行かれた。

「ああ、貴女には言ってなかったかしら。 女の子達みんな首にチョーカーしてるでしょ。 あれには意味があるのよ。
赤いレザーは身体にタッチはNG。 黒いレザーはお触りOK! シルバーのチェーンはセックスOKのサイン! ゴールドのチェーンは何でもありって印なのよ。 それぞれにクロス(十字架)のメタルトップが付いていたらアナルOKって事なの。 このお店の会員さんの鉄の掟だから、皆さん絶対守ってくれますよ 貴女、何色にする?」

「私は・・・・・・」
真梨子は、カウンターの上に出されていた、カクテルを一気に飲み干した。

「私は・・・」
 雅も、奈保子も微笑みながら真梨子の次の言葉を待った。
「・・・あ、赤いチョーカーでなら・・・」
「赤いチョーカーなら?・・・ どうしたいの?」
「あ、赤いチョーカーを付けて・・・」
「赤いチョーカーを付けて・・・?」
「赤いチョーカーを付けてなら、・・・お、お手伝いさせていただきます・・・」
「クロスはどうする?」
「いえ! 付けないで下さい…」
「ふふっ そ ありがと!助かるわ」

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊