真梨子
羽佐間 修:作

■ 第4章 淫・由梨9

−不安な快感−  6月20日(月)

 真梨子が、パンツスーツで出勤するのは、初めてだった。
 嫌いじゃないファッションなのだが、浩二と付き合うようになってからは彼の好みでずっとスカートを穿くようにしていた。
 術後のケアで膝上までのスパッツのようなコルセットを穿いているので、ロングスカートかパンツで過さなくてはいけない。
 周りのOLのようにパンツスーツを一度は着てみたかったこともあり、昨日近所のブティックで憧れている新谷裕美をイメージしてパンツを2本買った。

 ジーンズすらこの数年穿いたことが無かったので、とても新鮮な気分で憂鬱なはずの雨降りの中でもオフィスまでの道程が心はずんでいた。
 いつもより少し歩幅を伸ばし颯爽と歩いていると、ジャケットの中でフルフル揺れる豊満なバストがあった。
 流行の光沢のあるストレッチ素材のベージュのパンツは、ローウェストタイプで腰にぴったりフィットし、真梨子の細いウェストをことさら強調して魅せる。
 街行く人、誰もが見ているような気がして、気恥ずかしく、そして嬉しかった。
 しかし、歩く度に包皮を除去され剥き出しになった肉芽がショーツ越しにパンツの生地に微妙に摺れ、リングが怪しい刺激を与えてくるのには少し戸惑っていた。
 ショーツは、もう真梨子の淫汁をぐっしょりと吸いとってTバックの僅かな布地では染み出さないかと不安になってしまう。
――歩いてるだけでこんなのって… どうしよう…
   ◆
「おはよう〜、久美ちゃん」
「おはようございます 真梨子さん」
 朝の掃除で机を拭いている久美が顔をあげた。
「わぁ、珍しい!初めてじゃないんですか?真梨子さんのパンツスーツ! いいですね! 凄く似合ってます! バリバリのキャリアウーマンって感じですよ!ホントにそうですけど^^」
――あら 久美ちゃん、元気になったわ
「ありがとう 久美ちゃんもミニスカート、よく似合ってるわよ」
「え、ええ」
 ミニスカートの話をすると、一瞬だが先週と同じ暗い陰りが久美の表情に浮かんだ。
 直ぐに笑顔に戻った久美は、「何かいい事、あったんですか?真梨子さん」と、顔を覗き込んで聞いてきた。
「え? どうして? 何もないわよ」
「何もないわよって、笑ってる〜〜」
「そう うふっ 何にもな〜し!」

「それにしても凄くイメージ変わりましたね!真梨子先輩 とっても素敵です!」
「えっ、あ、そう? ありがとう」

「久美ちゃんこそ、何となく言いそびれてたけど、凄く大人っぽい女性らしくなったわよ! 
素敵な彼でもできたんじゃなくって?!」
「えっ、あぁぁ そっ、そうなんです… わかりますか?!」
「まぁ やっぱりそうなんだぁ わかりますか?ってわかり過ぎですよ〜」
「そうですか?;」
「凄く感じが変わったもの 大人の女性っていうかなぁ… 凄い色気よ 急にミニスカートにしたのも彼のお気に入りなんででしょ?!」
「え、ええ… まぁ、そうですけど…」
「でもお仕事するには、もう少し丈が長いほうがいいかも知れないわね このプロジェクトの間は、問題ないと思うけど このビルの人達、皆さんモデルさんみたいだものねぇ」
「ええ。 そうですね。 気をつけます」
 久美と喋りながら机を拭く手が動くたびに、フルフル揺れるバストの感覚が嬉しくて仕方がなかった。
 奈保子が言った『コンプレックスが無くなる事が美しくなる秘訣』という言葉が実感できる。
 別に自分が凄い美人だとは思ってはいないが、劣等感を感じていたバストが、逆に優越感を持てるほどに変化したことは、何と心を晴れやかにすることだろうと驚きを覚えていた。
 しかしクリ○リスのピアスの方は、まだ身体が馴染んでいない。
 人の視線を意識して心地よいのではなく、物理的に、確実に快感を刻み込んでくるのだ。
 何気ない普段の動作の中で、体勢によってはキュンと肉芽から全身に快感が走り思わず声が出てしまいそうになる瞬間がある。
 今も、身体を伸ばして机を拭いているだけなのに、ショーツの中で微妙に位置がずれるリングにクリ○リスが引張られ、甘く切ない感覚が押し寄せてくるのだ。
 そしてその度に思うことは、浩二に抱かれている幸せな自分の姿だった。

   ◆
 午後からのミーティングでプロジェクトルームに集まった沢田達も、真梨子の変化をとてもいいと誉めてくれた。
 吉野などは、パンツスーツのせいか知らないけど、凄くセクシーな感じがする!と驚いたように真梨子を見詰めるのだ。
 真梨子は、みんなにジロジロ見られると、ジャケットに包んだ身体に意識がいってしまう。
――知らないうちに、いやらしい表情をしていたのかも知れないわ・・・

 気取られまいとしても、立ち上がったり身体を捻ったりする度に、クリ○リスが擦れて湧き上がる快感はますます鋭敏になり、腰が砕けそうになってしまう程だ。

 ミーティングの最後に、真梨子にとってひとつ残念な知らせがあった。
 高倉ビューティで急な人事異動があり、プロジェクトに加わっていたFC営業本部の新谷 裕美が、秘書室勤務になり、吉岡専務付きとなったと聞かされた。
 今日は来ていないが、引き続きプロジェクトには必要に応じて参加するらしい。
 秘書と聞いて、男達と対等に渡り合う裕美の強いイメージからはかけ離れているように思え、真梨子は、裕美がこの異動を喜んでいるのか少し気になった。

   ◆

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊