真梨子
羽佐間 修:作

■ 第4章 淫・由梨18

「同じだ クククッ 同じ匂いだったぞ! 指だって由梨と同じで細くて長い指だった!」
 梶は、先程真梨子の背後から鼻いっぱいに吸い込んだ匂いを思い出していた。

 何日か前、横田に連れられて2度目に行ったHalf Moonで、由梨というすこぶるいやらしい身体をした女の全身を匂い、滴る愛液を顔に浴びてそれなりに興奮した時間を過した。
 身体には触れられないマークが付けられたデビューしたての初級のマゾ奴隷という案内だったが、その身体は陰毛の陰りがまったくなく、乳首やクリ○リスにまでピアスをしたマゾ女の身体そのものだった。
 まったくの素人でOLをしているらしい由梨という名の女の見せる恥じらいは、心底のものである事が実感でき、新鮮な興奮を覚えさせた。
 おびただしい愛液を滴らせながらも恥ずかしがる由梨に接して、ふと思い当たる事があった。
 それは女の発する匂いだった。
 天井からの鎖に繋がれた裸体を淫らにくねらせ、肌を晒す羞恥と、敏感な箇所に息を吹きかけるだけで絶頂に達して潮を吹いた”由梨”の放つ牝臭に混じって漂う香りに覚えがあったのだ。
――うん?この香水の匂い…
 真梨子の側を通る度に鼻孔をくすぐり、つい梶に真梨子を陵辱する場面を懸想させるあの匂いだ。
 まさかそんなはずがあるわけがない!と思うのだが、そうであってほしいと思う欲目で見ると、目隠しの間から少しだけ見える顎やうなじの形、輪郭が真梨子に似ている気がする。
 奴隷のプライバシーは詮索しないという店の固い掟を聞かされているので、聞くことも出来ず、ずっと心に引っかかっていた。

 横田から一週間ぶりに誘いの電話があり、由梨が今日は出勤するのか聞くと、『多分ね』と言うので矢も盾もたまらず、高倉ビルにまで足を運んでしまった。
 真梨子がHalf Moonに行くかどうかを確かめるつもりだった。

 そして真梨子の放つ香水の香りはまさしく”由梨”と同じだと思えた。
――真梨子が由梨であれば…

   ◆

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