真梨子
羽佐間 修:作

■ 第4章 淫・由梨22

 シャワーを終え、ドレッサーに映す裸身は、我ながら美しいと思う。
「うふふっ」
 自然に笑みがこぼれてしまう。
 この身体を浩二に抱きしめて貰えると考えるだけで胸が熱くなってくる。

「あっ…」
 鏡に映る胸のあばら骨の辺りに赤い痣を見つけた。
――キスマーク…

 昨夜、真梨子は初めて同性と身体を重ねた。
 そして流れの中で初めて同性の性器を舌で愛撫し、そしてその淫らな行為を大勢の男に見られながら激しい快感に酔い痴れたその跡形だった。
 今、思い出しても恥かしくて身体の奥がキュンとする。

 その時も感じたことだが、Half Moonに出入りするようになってずっと思っていることがある。
 絶対の信頼を寄せる浩二の愛を感じながら縄で縛られ、サディスチックに可愛がって貰う快感と、見ず知らずの大勢の男達の前で肌を露にして、淫らな狂態を晒し、淫らな牝犬として蔑まれ、いたぶられながら身体を包む快感は、まったくの別物なのだ。
――どちらが気持ちよいというんじゃじゃないわ… 私の身体は、どちらも欲しがってる…

「でも迷うべくもないわ! 私は浩二さんの女… もう、あんな事止めなくっちゃ… 浩二さん以外の刺激を求めるなんてやっぱり浩二さんに対する裏切りだもの…」

「ず〜っと私をほったらかしてるから、こんな変な事考えちゃうんだよ〜 浩二さんが悪いの〜」
 舌を出して写真立ての中で微笑む浩二に向って、可愛い不平が口をついた。
 真梨子には、とても幸せな瞬間だった。

   ◆ 
「終わった〜〜〜」
 久美が歓声をあげた。
「ふぅ〜〜」
「二人ともお疲れ様でした」
 秋山が、真梨子と久美に労いの言葉をかけた。
 高倉ビューティに提出する中間報告とシステム提案がようやく完成したのだ。
「お分かりでしょうけど、肝心なのは明日の会議で、この2次システム提案の了承を取る事だからね!お二人さん」
「はい! 分っています」

「お嬢様方 ちょっと遅いけど、軽く食事でも?!」
「私は、ちょっと…」
 久美の顔が少し翳った。
「やっぱりそうだね。 明日に備えて帰るとしますかぁ。 じゃまた今度にしよう」
 そのとき真梨子の携帯が鳴った。
雅ママからだった。

「ちょ、ちょっとごめんなさい」
 秋山に背を向け、窓際まで移動して電話をとった。
「もしもし。 真梨子です」

   ◆

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