真梨子
羽佐間 修:作

■ 第5章 オフィス・嬲9

−9月までの隷属−  7月18日(月)U

「いらっしゃい、純ちゃん。 あら、珍しい。 今日は素敵なレディとご一緒なのね〜」
「ああ。 ふとしたきっかけで出会ってね。 趣味が合いそうなんだよ 」
「始めまして。 雅と申します。 こういうところは初めてですか?」
「え、ええ…」
「愉しんでいらしてね」
「はい…」
―ママ… ありがとう… でも、どうしよう…

 案内されたのはカウンターだった。
 梶は一番奥の壁際の席を真梨子に勧めた。
 他の客から見えにくい場所である事が、真梨子の不安を掻き立てる。
 何事もなくこのひと時が過ぎてくれることを祈って、席に座った。

   ◆
 カウンターの中で星野がシェーカーを軽やかに振っている。
 やがて二人の前に、ピンク色のカクテルがスッと置かれた。
「どうぞ。 貴女のイメージでお作りしたカクテルです」
 奈保子と初めて訪れた時と同じもてなしだった。
「ほっほぉ。 このレディのイメージって何て名のカクテルなんだ?」
「Indecent lady…」
「インディセント・レディ?! あはは。 そんなイメージかね」
「あの… どんな意味ですか?…」
 梶が真梨子を見詰め、ふっと笑った。
「まずは、乾杯だ」
 グラスを合わせ、梶は一息で飲み干した。
「ふぅ! なかなか美味いじゃないか」
「ええ、ほんとに…」
 一口、口に付けた真梨子も相槌を打った。

「インディセント・レディ… 淫らな淑女ってとこかな」
「そ、そんな… ひど〜い… そんなイメージなんですか… 私って…」
 おどけたつもりが声が少し震えていた。
――星野さん… ひどいわ! ママが上手くカバーしてくれてるのに…
「ふふふっ。 僕も意外だったんだが、君にはお似合いのカクテルだと思うよ、由梨…」
 凍りついたように真梨子の動きが止まった。

―ユリ… 由梨! 部長は知っていた!? ウソ…

「あ、あの… 今… 何て… あのぉ…」
「もういいよ、羽佐間君。 あっ、ここでは由梨だったね」
――ひっ! 知られていた… 
 身体が震えて止まらない…
「驚いたよ、真梨子君。 君にこんな性癖があるだなんてな! 実に素敵な趣味だよ! あははっ」
「……」
「あ、あ… な、何か勘違いを… あの… 梶部長… あ、あの…」
「分かった、分かった。 真梨子君。 もう誤魔化さなくていいんだよ。 君が関西に帰るまで、君の淫乱な身体の疼きを慰めるのを時々手伝ってやろうと思ってるだけさ」
――あああぁぁ  どうすればいいの…
 堪らない沈黙が流れた。
 膝は自分の意思とは関係なく、ガクガク震えていた。

「恥かしい姿を見られたくて仕方がないお前の露出願望を、俺が9月まで旦那にも誰にも内緒で叶えてやるって言っているんだよ。 関西に戻ったら上場企業の社長婦人に納まって何食わぬ顔をして贅沢に暮らすんだろ?! 幸せな夫婦生活を壊したくないんだろ?」
――ああ、もうダメ… 
 頭はパニックになっていた。
――浩二さんに迷惑を掛けてしまう… 私さえ我慢すれば… 今までのように恥ずかしい姿を見られるだけなら… どんな顔をして浩二さんの前に… 浩二さんに棄てられたくない… それだけは絶対… 

 頭が真っ白になって、論理的な思考が出来ない… 
 席を蹴って、half moonを飛び出せば良い事だった。
 たとえ理由はどうであれ部下を脅して肉体関係を強いるなんて、梶にもそれなりの地位があり、それを失ってまで強引に真梨子に迫るなどできない事は、普段の真梨子なら判断できたはずだった。
 ましてそんな証拠などなかったのだから…
――でも、こんな下劣な男に抱かれるのだけは絶対に… そんな事になったら… わたし… 死ぬしか… 浩二さん…

「部長… ほ、本当に誰にも内緒で… 9月には… その… 今までのこのお店でのように…その… セ、セックスだけは許してください… でないと私…」
 沈黙を破り真梨子の口をついた言葉は、哀願の色を帯びていた。
「ふっ お前次第さ、真梨子 お前さえ黙って俺に従えばいいんだよ。 オマ○コに俺のチ○ポを挿れなきゃいいんだな?!」
「………はい…」
「まずは、告白して貰おうか? 私は恥かしい姿を見られるのが好きですってな」
「……」
「どうなんだ? 羽佐間!」
「…あっ… はい…」
「何だ? はっきり言ってみろよ! 羽佐間真梨子は、いやらしい姿を見られるとオマ○コを濡らす牝犬ですってな! あっはっはっ!」

「わ、わたしは… いやらしい… 牝犬… で す…」
「違う! いつもの羽佐間君らしくないなぁ いいか!こう言うんだ! 羽佐間真梨子は、いやらしい姿を見られるとオマ○コを濡らす牝犬です! 分ったか!?」

「羽佐間… 真梨子は… いやらしい姿を見られると… オ… オ… オマ○コを濡らす… 牝犬です…」
「ふふっ。 続いてこう言え! ちゃんと仕事を出来るように、真梨子のいやらしい露出願望を満足させてください。 言ってみろ!」
「あぁぁ… ちゃんと… 仕事を出来るように… 真梨子の… いやらしい… 露出願望を… 満足させてください… ぁぁぁぁ…」
「ふん。 そうか! ではお前の覚悟の程を見せてもらおうか。 今ここでパンツを脱ぐんだ! 羽佐間真梨子!」
―そんな…
「嫌ならいいんだぞ。 俺は別にな。 恥ずかしい姿を見られたいんだろ?! 社長婦人様」

 真梨子の手がゆっくりとワンピースの裾に隠れた。

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