真梨子
羽佐間 修:作

■ 第5章 オフィス・嬲26

 昨夜、真梨子がいつも以上に快感を感じ乱れてしまった一番の原因は、始めてマスクや仮面を付けずに男達の前に裸身を晒したからだ。
 メーキャップアーティストの卵だと言うhalf moon・マゾ奴隷の新人・ゆかりが真梨子に宝塚ばりの濃い舞台化粧を施した。
 仕上がった姿を鏡に映すと『ウソ! 私…』と思わず声をあげてしまった。
 紫色のショート・ウィッグを被り鏡に映るその顔は、重いほどのつけまつ毛を瞬かせ驚きの表情を浮かべていた。
 パープルの濃くひかれたアイシャドウが映え、切れ長の大きな目には切なげで妖艶な色気が漂い、自分で見てもまったく別人かと思えた。
――こ、これなら知ってる人が見ても私だとは分からないはずだわ…

「誰が見ても高級娼婦って感じね、真梨子さん。 精々楽しんでいらっしゃいな」と控え室を覗いた雅ママが冷たく哂って言った。
 主人との操を守る為と言ってHalf Moonを卒業したはずの真梨子が再び梶と現れてから、雅の態度はどこかよそよそしく冷たさを感じさせる。
 その態度から、梶が真梨子との関係を未だに雅に告げておらず、雅は梶が言ったとおり電車で真梨子から誘惑したと思って軽蔑されているんだと真梨子は思っていた。
 浩二や会社の人達に痴態をばらすと脅されて、9月までの約束で淫らな行為に服従する事を強いられている事、そして助けて欲しい!と何度言おうとしたか知れない。
 しかし梶は約束どおり雅にすら真梨子の素性を明かしていないものを、自ら事情を明かす事で夫の仕事にどんな影響を及ぼすかを考えると真梨子にはどうしても言えなかった…

「さ、いくぞ!」
 ふいに梶が手にしていた首輪のリードを引っぱり、控え室から連れ出された。
 ステージの袖までよろけながら引きづられていく。
 惨めで屈辱的な扱いに涙が滲む。
 ステージの袖から客席を見ると、客たちの視線はステージに釘付けになっている様子だ。
膝がガクガク震え、身体が崩れ落ちそうになるとニップルピアスを摘まれて強引に引き起こされ、スポットライトの死角でステージが空くのを待つ。
 ステージ上では何週間か前に、初めて女同士で睦みあったマゾ奴隷・久美が男達に穴という穴を塞がれて嬌声を放っている。
 マスクを被っているのでその表情は見る事は出来ないが、怒張を含まされた口から漏れる喘ぎ声は、快感を貪る牝犬そのものだ。
 今から我が身に起こる恥ずかしい出来事に心臓は苦しいほど激しく鼓動を刻み、身体の奥 底から沸き起こる期待感に真梨子の身体は熱を帯びていった。

「さあ、お前の番だ!」
 気を失い担ぎ出される久美と入れ替えに、鎖に引かれて真梨子がステージにあげられた。
――あああああぁぁ 恥ずかしいぃぃ・・・
 煌々としたライトが真梨子の裸身を照らした瞬間、絶望的でぞくぞくとする怪しい光が頭の中で弾け、淫汁がジュクジュクと溢れだす。
 数人の男達の手によってステージの真ん中に手首から吊り下げられ足を大きく開いた格好で繋がれると、真梨子の花園が零す被虐の悦びの涙は、足首にまで伝い流れ落ちていた。
「顔を隠さず素のままのお前の恥かしい姿を晒して嬲られるのは堪らなく気持ちいいだろう! お前は変装してるつもりかもしれないが、お前を知ってる男だったら、この淫らな身体の持ち主は、羽佐間真梨子!お前だとよく分かるはずだ! 嬉しいだろう?! くっくっくっ」
 梶が耳元で囁いた瞬間、真梨子の身体がブルブル震えだし、細く啼く様な悲鳴をあげてアクメを迎えてしまった。
「これだけで逝ったのか?! あ〜〜〜はっはっはっ!」
 梶の哄笑が俯いた頭上から降り注がれる。
 その惨めな自分の姿を想像すると、更に真梨子は熱く濡れていく。

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