授乳女教師
Tsuka:作

■ 苦悩と戸惑い8

「牧野君、先に来てたのね」
先生はいつも通り、静かに落ち着いた口調だった。先生は机を挟んで俺と向かい側の椅子に座る。
俺の直ぐ脇を通り過ぎたためか、空気が僅かに漂って、大人の馨しい芳醇な香りが鼻孔をくすぐる。
(川上先生の匂いだ……)
場違いだがドキッとしてしまう。普通だったら歓迎すべき状況下だが、今回は違う。
(先生は一体俺をどうするつもりなんだ…?)
うつ向き加減だった俺は、顔を少し上げて目線を先生の方に向けた。ちょうど真正面に先生の顔があった。
いつもと変わらず落ち着き払った表情をしている。
ただ一つ、いつもと違うのは先生の目に何か決意のような物が感じられる事だ。それが不安感をより強く募らせる。
(謹慎…? 停学…? 確かに成績は悪くなったけど、そんな重い処分をされるような悪い事はしていないし…)
いくら考えても分からない。
俺は再び視線を机の上に落とした。視線を落とす途中、ブラウスに包まれた胸が弾けそうに盛大に膨らんでいるのが、チラッと視界に入る。
(俺は…、あのデカイおっぱいに狂わされているんだ……)
魅力と欲望、そして母乳がいっぱい詰まった憧れの美しい爆乳。
(直ぐ手を伸ばせば届く距離にあるのに……とても遠くに感じられるな…)
いや、今はそんな事を考えている場合ではない。俺はジッと息を潜めて先生からの言葉を待った。

先生は暫く俺を見つめていたが、フゥッと息をつくと口を開いた。
「ごめんなさいね、どうしても話したい事があって。時間を作って貰ったの」
何だ…? 何が待ち受けているんだ? 身が詰まるような思いをしながらも答える。
「いえ、別に…大丈夫です」
「そう……。あのね、話す前に一つだけ約束して欲しい事があるの」
「…はい…」
「胸の内に隠している事を正直に話して欲しいの」懲罰に関する話ではないんだと思い、俺は少し安心した。
「………はい、分かりました」先生は一つうなずく。
「じゃあ…早速だけど、牧野君…最近様子がおかしいわよ…? どうしたの? この間も…」
川上先生は少し間を置く。
「この間も先生とすれ違った時に泣いてたでしょう…?」
「!!………」
「一体何が牧野君を変えてしまったの?」俺は返事に窮した。

体育祭の日、あの保健室での出来事をずっと引きずっていた。あの時の川上先生の言動が、俺の心に暗い影を落としているのだ。
だがそんな事は言えない。言いたくない。これ以上傷口を広げるような辛い思いをしたくはない。
「……………」俺は黙っていた。
「黙ってないで答えて」
「いえ、特に何も……」
「嘘よ。嘘はつかないで。嘘は嫌よ」
先生が鋭く否定する。
今日の先生はいつもと何かが違う。普段の淡々とした突き放す感じではなく、何とか取り入ろうとする感じがハッキリと窺える。妙な感覚を覚えた。先生は尚も言葉を繋ぐ。
「先生はね……牧野君が変わった理由、分かってるのよ…」
「……………。」
「あの時の……体育祭の日の事が発端なんでしょう?」
「!!!」
俺は心臓が破裂しそうなくらい驚いた。先生は的確に気づいていたのだ。

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