屋上の王子様
二次元世界の調教師:作

■ 3

 そのまま4時間目の授業開始のチャイムが鳴ると、私はさっきまでのお気楽気分が吹き飛んでしまいました。今度はさらに長い50分、良からぬ事を考えぬよう過ごさねばなりません。始めに考えた2つの考えがどんどん膨らんで来てしまいます。

 中山君が帰って来るまでに、誰かに見つかったら、どうしよう……

 中山君が帰って来なかったら、どうしよう……

 ふと気が付くと、私は顔に冷たい滴りを感じました。よせばいいのに、無意識に声を出そうとしてしまっていたのです。

「んーっ!
 んんーっっ!」

 さらに首や手が痛くなるまで必死に体をもがかせ始めていました。そんな事をしても無駄とわかっているのに。大人しくしておけば楽なのに。

 でもそうしなければおかしくなってしまいそうでした。

 こうして永遠とも思われる長い時間が過ぎ、暴れるのにも疲れた私がただメソメソと泣いて顔をベトベトにしていると、ようやくチャイムが鳴りました。お昼休みです。今度こそ中山君は来てくれるでしょうか。

「へえ、こんな所に出られたんだ。」

「スゲえだろ。
 俺もこないだ初めて知ったんだ。」

 背後から聞こえて来た声に私は愕然とし、凍り付いてしまいました。中山君ではありません。男子2人のもっと低い声です。

(ああ、もう、おしまいだわ……)

 さんざん考えてしまった怖ろしい可能性が現実になってしまったのです。彼らはSM道具で目と口を塞がれ首輪を繋がれている大柄な女子を見て、どう反応するでしょう? その後の惨めなシナリオを、私は何通りも想像してしまっていました。

 が、その危機一髪の瞬間でした。

「何してんの?」

 甲高い女の子みたいな男の子の声です。

「いや、何でもない。」

「こんな場所があるんだな、って調べてただけだよ。」

 すっかり作ったような展開でしたが、私の危機を救ってくれた王子様が、アイマスクを外してくれました。

「危ない所だったね、お姉さん。」

 そうニコニコ無邪気そうに笑うコナン君が、本当に白馬の王子様のように見えてしまいました。

「さっきの人達、タバコを吸いに来てたみたいで、僕が声を掛けたらすぐ逃げて行ったよ。」

 涙でけぶる目を見られるのはとても羞ずかしかったけど、私はしっかりと「王子様」を見つめます。

「SMごっこ、スリルがあって楽しかったでしょ、まさみお姉さん。」

 彼が忌まわしい口枷を吐き出させてくれながら、私の顔を覗き込んで来ます。私はさっき味わったのとは違うドキドキで胸をときめかしてしまいました。

「ねえ、ホントの名前教えてよ、お姉さん。」

「日浦、麻衣……」

「まいお姉さんって、言うんだね。
 僕は中山大地。
 大地君って呼んでよ。」

「イヤ……」

 えっちな大地君が、私のハーフパンツの中に無遠慮に手を突っ込んで来ても、拗ねて甘えるような声しか出ませんでした。

「まいお姉さん、ビショビショだよ。
 もしかして、おしっこしちゃった?」

「ち、違うよ……」

「じゃあやっぱり、SMごっこが気に入ってくれたんだね。」

「ああ……」

 信じられませんでした。私はえっちの経験はまだありませんし、怖くて1人えっちもした事もなかったんです。もちろん女の子が気持ち良くなると濡れてしまう、と言う知識くらいはありましたけど。

「麻衣お姉さん、キスしよ。」

「大地君……」

 私は1人っ子ですけど、黒縁眼鏡のコナン君みたいな大地君が唇を尖らせて迫って来ると、まるでかわいい弟とイケない事をするような感じがして、異常に興奮してわけがわからなくなり、目をつむって彼に唇を与えてしまったのです。

 キスの間も、大地君の手は私の濡らしてしまったアソコを弄っていました。こうして初めてのキスとえっちを同時に経験してしまった私は、身も心もトロトロに蕩けるような心地良さに浸っていました。

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