奥さまはマゾ
二次元世界の調教師:作

■ 3

 ああ、何と言うことでしょう。取り乱した父の声が最後に涙声になっているのを聞いて、私はこの破廉恥な取り引きを承諾してしまいました。私が携帯電話を閉じると、もう下劣な本性を剥き出しにした新山さんがニヤニヤ笑いながら言ったのです。

「取り引きは成立のようですね」
「はい」
「では社長が帰るまで、奥さまの体は私のものです。だけど心配はいりません。奥さまが私と結婚しなかったことを骨身に染みて後悔するくらい、かわいがって差し上げますから。気持ち良過ぎて、腰が抜けたって知りませんよ、ふふふ……」

 私はもう立ち尽くしたまま全身に悪寒を感じて慄え上がっていましたが、新山さんがこちらへおいで、と手招きするとフラフラと近寄って行ってしまいました。すると新山さんは持っていた大きな袋の中から真っ黒な道具を出して来たのです。

「首輪を嵌めてあげましょう」
「そんな、ひどい……」
「奥さまの体は私のもの。つまり奴隷になったのと同じですからね。首輪を嵌められたって文句は言えないでしょう」
「ああ……」

 どの道彼の言う通りにしなければいけないと覚悟を決めていた私は、大人しく首を差し出して黒革の首輪を着けられてしまいました。

「両手を首の所に持っていって」

 首輪の左右には手を通す円筒型の拘束具が付いていて、そこに手首を入れてガチャリと施錠されると、私はまるで昔の罪人のような惨めな格好になりました。

――ああ、こ、こんな……

 その時私の体を突き抜けたおぞましい感覚は何だったのでしょう。その答は新山さんに言い当てられてしまいました。

「なかなか素敵な格好になりましたよ、奥さま」
「こんなことして、面白いのですか!」
「何言ってるんですか、奥さま。今、興奮してズキンと感じちゃった、ってお顔をしてるじゃないですか。縛られたりするのが、お好きなんでしょう?」
「いい加減にして下さい!」

 図星を指されてしまった動揺を隠そうと、私は初めて激しく体を揺さぶってみましたが、首輪と手の拘束は頑丈ですでにどうにもならない状態でした。そして口惜しいことに、私の体に込み上げて来るゾクゾクした興奮は強くなる一方でした。

「もう無駄ですよ、奥さま。あなたはこれから私の好き勝手にされる運命だ。嬉しくてゾクゾクするでしょう? 初めてお会いした時から、わかりましたよ、あなたはマゾです。認めなさい。奥さまはマゾなのです……」

 気が付くと私は、床の上に仰向けで転がされていました。

「奥さまは今から着せ替え人形です。じっと大人しくしとくのですよ」

「着せ替え人形」と言う言葉通り、新山さんは私の服を脱がせて来ました。あっと言う間に着ていた服が剥かれて、その時着用していた純白でレースの下着だけになり、私は羞ずかしくて体をうつ伏せにし隠そうとしました。

「コラ、勝手に動くなっ!」

 ところがその途端、新山さんが私の頬を平手打ちして来たのです。「いい子」だった私は親に手を上げられたことなんか一度もありません。だから頬が真っ赤になってジーンと痛みの残る生まれて初めての暴力はとてもショックで、すっかり怯えてしまった私は新山さんに逆らおうと言う気持ちが吹き飛んでしまいました。

「奥さま、着やせなさるんですね。素晴らしい体だ……」
「あんっ!」
「小娘じゃあるまいし、ちょっと触っただけで何て色っぽい声をお出しになるんですか。ふふ、お乳の先が固くなってますよ、奥さま……」
「やめて下さい……」
「しかし奥さまの体はそう言ってませんね。ほら、コッチも」
「い、イヤッ!」
「全くかわいい奥さまだ。どんどん乳首が勃って来ましたよ。イヤよイヤよも好きのうち、とは良く言ったもんですね……」
「抱くなら早く抱いて下さいっ!」

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