アタシのかわいい○ンコちゃん
二次元世界の調教師:作

■ 1

 アタシの体に初めてその「異変」が起こったのは月曜の早朝。

――今日から又朝練か。マジでカッタリい〜

 そう毒突きながらも、バスケ部の朝練に間に合わせるためアタシは6時前にはベッドで目を覚ました。もともとさほど寝起きの悪い方ではない。ふわあ〜、と布団から出てベッドに座ったまま大きく伸びをしたその時だ。アタシが「異変」に気付いたのは。

――な、何じゃコリャ!

 どうも胸の辺りに気持ち悪い感触を覚えたアタシは、パジャマの中を検分してあり得ない光景を見てしまった。胸の谷間にモジャモジャの剛毛が生えている!が、もっとショックだったのは……

――乳がなくなってる……げげ〜っ!

 これはどう見てもむくつけき野郎の胸板ではないか。何が悲しくて花も羞じらうジョシコーセーのアタシの胸が、こんな逞しい男みたいな分厚い筋肉にならねばいけないのだ。確かにアタシは決して巨乳ではない。高二のアタシのクラスの女子の中じゃ並だと思うけど、ちゃんと乳房が膨らんで先端には可憐な乙女の蕾が(自分で言うか!)ツンと乗っかってる、はずなのだ。こんなムキムキの固い筋肉の上に、あるのかないのかわからない萎れたチクビだけだなんて、悲し過ぎるぞ、オイ!

――このムネは見覚えがあるぞ

 だが、女のくせに冷静過ぎてかわいげがないと良く言われるアタシは、パニックになったりはしなかった。この大変な事態をまず把握しようと、見たくもないそのムネを観察して、すぐに理解した。

――ケースケのムネだ

 間違いない。何たって昨日抱かれてやったばかりなのだから。

――と、言うことは……
 
 アイツのムネにアタシの乳房が……それを想像したアタシは気分が悪くなった。遅刻常習犯のアイツがもう起きてるとは考えられないので、とりあえず登校してからアイツに聞いてみるか。そうと決めたアタシは、クヨクヨしても仕方ないので、サッサと朝食をすませると制服に着替え、朝練に出るため家を出たのだった。

 さて悲しいことに、ちっとはあったムネがムキムキの筋肉に変わりペッタンコになってしまったアタシだけど、バスケの練習にはまるで支障がなかった。いやむしろ余計なモノがなくなって動き易くなったし、ボールが乳を直撃するのを恐がらなくていいのは助かった。スポーツブラをしてても、結構痛いんだよね、アレ。アタシなんか全然だけど、一番仲の良いクラスメイトで巨乳のアヤカなんか、体育の授業で走るとユサユサ揺れてるもん。あれは結構ジャマに違いない。男より女の方が運動能力が劣る1つの原因なんじゃないかと、真剣に思ってしまった。

 そのアヤカと2時間目が終わった後の休憩にダベってた時だった。

「ねえ、ヒナの彼氏君が来たみたいよ」

 見ると今登校したばかりらしく、カバンを持ったケースケが教室の入口で中を覗き込んでいた。

「彼氏なんて言わないでよ」
「でも付き合ってるんでしょ」
「アタシそうゆうの嫌いなんだって!」

 そう。アイツに学校では絶対に彼氏面をするなと言い聞かせているのに。1年坊主のくせに2年生のクラスにノコノコやって来るんじゃねえよ!アタシはシカトを決め込むつもりだったのに、ケースケの野郎わざわざ「ヨシザワさんいますか」とアタシの名を告げたらしい。クラスの子が呼びに来てしまったので、アタシは仕方なく廊下に出て行った。

――くっそー。オメエみたいな目立つ野郎が会いに来たら、何事かと疑われんだろうがっ!

 アタシは1級下のケースケと付き合ってることをアヤカ以外には隠しているから、教室に来られちゃ困るのだ。努めて何でもなさそうな顔を装って廊下に出たアタシは、背中にクラス中の女子の視線を感じてしまった。間違いない。みんなアタシに会いに来た、この熊みたいな巨漢の男子は何者かと注目してるのだ。ケースケは一目見たら忘れられないほど目立つ。何しろラグビー部にスカウトされて1年でいきなりレギュラーになったヤツは、身長180センチ体重100キロ超という、とんでもない体格である。アタシだって170センチくらいあって女子としては高身長なんだけど、頭1つも背が高いし体重に至っては倍以上だ。

「あ、あのさ……」

――教室に来るんじゃねえっつってんだろうがっ!

 困った。そう声に出して言ったらそれこそ詮索されるネタになってしまう。アタシは精一杯怖い顔を作って睨み付け、目でそう訴えた。が、どうせ鈍感なケースケはまるで気にせず無神経に大声でしゃべり掛けて来るのだろう。と思ったら、違っていた。何とヤツはバカデカい体を折り畳むようにして、アタシにヒソヒソと内緒話のように囁いたのだ。

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