アタシのかわいい○ンコちゃん
二次元世界の調教師:作

■ 2

「体、おかしくね、ヒナ?」

 うう。何と言うことだ。心配していたことが現実になった。アタシは分厚い胸板でパンパンに張り切っているはずのケースケのカッターシャツを見たが、悲しいことにダブッとして妙な具合の外見になっていた。「アタシのおっぱい」じゃ、ヤツのバカでかいカッターシャツを張り切らせるには膨らみが足りないのだ。が、ここでそんな話が出来るわけはない。アタシは小声で言う。

「後で話そう。昼飯喰ったら、体育館の裏に来い」

 学校で内緒話をするなら定番だろう。まだ夏休みが終わって日が浅くヤブ蚊がひどいけど、逆に他の生徒はまず来ることはないはずだ。こんな話とてもじゃないが、人には聞かせられない。

「ああ、わかった」

 さすがのケースケもさすがに体の異変で戸惑ってるのだろう。いつになく素直に小声でそう答えたのだが、ニヤリと笑って続けた言葉に、アタシは殺意を覚えてしまった。

「ヒナって、意外に大きかったんだね」

――こ、コイツ……ぶっ殺してやる!

 人の目がなかったら間違いなく張り倒していただろう。だが、教室の中のクラスメイトを気にして、ワナワナと怒りに慄えるばかりのアタシを尻目に、涼しい顔をしたケースケはカバンを持って1年の教室に帰って行った。

 3時間目の体育の授業。アタシは着替えながらアヤカと話し込んだ。

「なんかあったの?」
「いや、別に」

 他の子もいるので、アヤカは気を使って「彼氏」なんて言葉は使わず話してくれてるのだ。

――いつ見てもデカいな、コイツのムネ……

 アヤカと話してると、どうしてもその巨乳に目が行ってしまう。男子ならもうタマランのじゃなかろうか。ケースケも自分で「おっぱい星人」だと言ってたから、この子のこぼれそうな乳を見たら浮気しちまうかも知れない。

「いいよねえ、大きな男の人って」
「んなこたあ、ねえだろ」
「ヒナの方から誘ったんだよね」
「ああ、一応」

 実は何を隠そう、ケースケとアタシは幼なじみで、家が近いのでよく遊んでた仲なのだ。昔はなんも感じなかったが、中学に入った頃から異性として意識し始め、アタシが中三の時に誘いを掛けて男女の付き合いを始めたのだ。ケースケは小学校まではアタシの方が見下ろすようなチビだったのに、中学に入ってから見る見る成長してあっと言う間にアタシの背を追い越した。その頃からだ。アタシがコイツを「男」として意識したのは。

「あんまりデカいのも考えもんだぞ」
「うそばっか」

 やっぱりアヤカにはお見通しだったみたいだ。アタシは良く言えば男らしくてたくましい、一言で言えば野獣みたいな男が好みで、最近流行りの「草食系」男子なんてからきしダメ。だからアタシは、ケースケと男女の交際を始めたのだ。

「何ならアヤカに回してあげようか?」
「それは遠慮しとく」

 アヤカはかわいい。そんなに美人じゃないしちょっとおデブだけど、愛嬌があって性格もいいので、みんなから好かれている。当然付き合ってる彼氏だっているのだ。その彼氏はやせててごく普通の男の子だから、アヤカの言ってることはとても鵜呑みに出来やしない。

 さてアヤカだったらすぐに怪しまれるだろうけど、アタシの場合はムネがなくてもあまり違和感がなかった。着替えて外に出ても、誰も「異変」に気付きそうにない。準備体操をする時、相変わらずアヤカはユサユサとムネの膨らみを揺さぶっていたが、アタシと来たら普段とまるで変わんねーの。(泣)

 乳がねえっつうのは女としては情けないけど、アタシにとってはむしろ好都合かも知れない。多少なりとも身軽になった体をいつにも増して激しく動かしていい汗をかいたおかげで、昼飯の進むこと進むこと。学食の定食だけじゃ物足りないんで、総菜パンを2つ買って平らげ友達に呆れられる始末だった。

――しまった! ヤツに会いに行かなきゃ

 忘れるところだった。アタシは慌てて用事があるからとみんなから離れ、普通の子の2人前くらいお昼を喰ったとは思えない俊敏さで、ダーッと体育館の方向へ掛け出して行った。たぶんみんなアタシのあまりの元気良さに唖然としていたんじゃなかろうか。実に気分が良い。オトコってこんなに気分が楽なのか。

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