走狗
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■ 第1章 出来事10

 身体を洗われている、香織の表情は、虚ろで何も見ては居なかった。
『さぁ、終わったわよ…。傷は、これで完治した筈よ…。もう痛くないでしょ?』
 カメラの女が香織に聞いた時、香織は驚く言葉を口にした。
『はい。もういたくありません、ごしゅじんさま、ありがとうございました』
 抑揚のない掠れた声で、しかしハッキリと屈服した事を認める言葉を告げた。
『そう、御主人様って言えるように成ったの…。香織ちゃんは、これからもっとオモチャに成り切らなきゃ駄目よ…』
『そうそう。私達に遊ばれるのが[楽しくて仕方ない]って、心から思えるように成らなきゃね』
『へへへっ。御主人様の言う事は、何でもこなすんだぜ!そうすりゃ、いっぱい遊んでやるからよ』
『オ○ンコやアナルや舌の使い方も、叩き込んでやるからな』
『おい、黙ってないで、よろしくお願いいたしますぐらい言えよ』
 男の一人が、香織の乳房を踏みつけながら言うと
『ごしゅじんさま。よろしくおねがいします』
 うつろな表情で答えた。
 香織の心は、完全に折れていた。

 拘束を解かれた香織は、仰向けに成った大柄の男に跨り、オ○ンコを貫かれ、アナルと口を他の二人に犯されながら、必死に身体を動かしている。
『ほらほら、もっと尻振れよ!馬鹿、円を描くように回すんだよ』
 アナルを犯している男が、尻を平手でビシビシ叩きながら怒鳴る。
『舌をもっとチ○ポに絡めろ!唇も絞るんだ!どんな事が有っても、歯を当てるなよ』
 髪の毛を掴んで、手綱を絞るように、グイグイ前後に頭を揺さぶり、腰を突き出す。
『もっと、オ○ンコに力を入れろ!腰をくねらせて締め上げろ!』
 大柄な男が下から、両乳房を握りしめて、突き上げる。
 香織は、男達の間に挟まれ、力なく揺れ命令に従っている。

 4Pが終わり解放された香織は、正座をさせられている。
『さあ。今から香織ちゃんがどれだけ、素直になったか見せて貰うわね』
 カメラの女が、そう言うと大柄な男が前に進み出し、チ○ポを出して香織の前に立ち止まる。
『上向いて、口を開けろ…。溢すんじゃねえぞ、全部飲め』
 そう言って、香織の口の中に放尿を始めた。
 香織は、思わず口を閉じて、顔を背けてしまった。

 大柄な男は、容赦なく香織の腹を蹴り上げる。
『このやろう!何にも変わってねぇじゃねえか!誰が顔を背けろって言った』
 踞る香織の顔を踏みつけ、怒鳴り散らす。
『ねぇ、今日の所は動かないだけにしてくれない、あたしこの後デートなんだ。彼氏待たせたくないしー』
 女がそう言って、大柄な男に注文を付けた。
『けっ、勝手に言ってろ。俺もこの後、用事あんだよ!ちっ…おい香織!今日の所は飲むのは許してやる。その変わり動くなよ』
 モソモソと正座に戻った香織に同じ姿勢を取らせると、顔の真ん中に放尿を始める。
 香織は、今度は目を瞑りジッと動かない。
 男が入れ替わり、又香織の顔に放尿してゆく。
 最後の男が放尿を終わり、シーンが切り替わる。

 その時玄関に人の気配がして、振り返ると新聞が土間に落ちてきた。
 反射的に俺は、映像を止めて、プレーヤーを終了させていた。
 時計を見ると、07:11を示している。
 俺は、いつの間にか8時間以上も、妹の陵辱ビデオに見入っていた事になる。
 瞼の上を揉みながら、軽く震える手を情けない気持ちで、見詰めた。
(香織…。お前は、どんな気持ちで過ごしていたんだ…。何故、俺に言ってくれなかった…)
 アル中に成って震える自分の手を見ながら、妹の悲劇を知らなかった自分を責める。

 俺は、これまでの内容を、整理しだした。
 頭の中で、何かが引っかかっている。
 何か不自然な所…。
 しかし、具体的にそれが何か解らない。
 頭の中全体に、靄が掛かったように、回転が鈍くなっている。
 俺は、立ち上がり冷蔵庫の中身を開け、酒しか入ってないのを確認すると、諦めて水道をひねり水を飲む。
 そのまま、シャワーを浴びに行く。

 冷たいシャワーと熱いお湯を交互に浴びる。
 昔から変わらない、俺の癖。
 こうして、両極端の刺激を与え、身体を目覚めさせる。
 この2年間、一度もした事の無い、昔の癖だ。
 頭の中の靄が晴れず、俺は苛立ちシャワールームの壁を叩く。

 シャワーを終えた俺は、バスルームから出て部屋を見渡し、電気を消す。
 その時、頭の中で回路が繋がった。
 俺は、後ろを振り返り、バスルームを見る。
(そうだ…おかしい!何故だ…)
 俺はパソコンの前に行き、1本目、2本目、そして再生途中の3本目を見る。
(やはり、おかしい…1本目の、この暗がりを照らす明るさは、間違いなく近くで稼働する工場が有る筈だが、その音がしない!)
 俺は、次に2本目を確認する。
(これもおかしい…。これだけ機材や資材が運び出されているのに、クレーンが動くと言うのは、電気が来ている証拠だ…)
 そして、3本目を確認する。
(ここもそうだ…。何故、廃工場なのに水道が生きている。水道や電気は、閉鎖と共に真っ先に切られる物だ…)
 俺は、3本目を巻き戻して止めた。
(この薬…。見た事も、聞いた事もない効果…。なのに、チューブにはちゃんと印刷加工までされている…)
 俺の頭の中は、持ち上がってくる、影のような物の存在を感じ始めていた。
 それは、このメールが送られてきた時から、うっすらと感じていた物だった。

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