走狗
MIN:作

■ 第1章 出来事12

 その後、飲尿調教が始まったが、男達も一回りして限界だった。
『おい、そう何度も出ねえよ…。いっその事、外に設置するとかよ〜何かねぇのかよ』
 大柄な男が、冗談交じりに言ったのを、カメラの女が本気にした。
『良いわね。それ…、設置しましょうよ。カメラとかは用意して貰うわ…。連絡してくるね』
 そう言って、大柄な男にカメラが渡り、お面の女が香織に近づいて口枷を外し
『そう言う事になったから、頑張ってネー。でも香織ちゃんが出来ないから駄目なんだよ』
 明るく笑いながら言う。
『そ、そんな…。外で…放置されるんですか…?乱暴とかされたら…どうなるんですか…』
 香織は、上を向いたまま、涙を流しながら、哀願する。
『まぁ、せめて顔がバレないようには、して上げるけどね』
 お面の女が香織にそう言った所で、シーンが切り替わった。

 薄暗い公園の植え込みの奥に建つ、大きめの公衆便所を、カメラが映し出す。
 植え込みに建つ一本の外灯が、公衆便所をボウッと照らし、不気味さを演出する。
 俺は、このトイレを知っている、香織が拉致された公園の、公衆便所。
 つまり、俺達の家だった場所の、直ぐ目と鼻の先だった。
 カメラは植え込みを回り込んで、男子便所の中へ。

 男子便所の小便器区画は3つに分かれていて、その一番奥に香織が設置されていた。
 足はM字に曲げられ、縦長の便器の中に身体を嵌め込まれ、鎖で配管に止められている。
 上を向いた顔は、マスク型の口枷に変わり、目だけがくり抜かれている。
 両方の乳首から鰐口クリップで止められた、大きな木の看板が下がっており、その看板にはこう書かれていた。
【飲尿調教中、この便器に向かって放尿してください。飲み込み方が悪い時は、正面のスイッチをお押し下さい】と書いて有った。
 トイレの中には、感知式のビデオが設置され、人が来た時はビデオが作動する仕組みになっていると、香織に説明している。

 そして香織はその状態で、2日間放置されたようだ。
 初日の昼間、公園内に遊びに来ていた4歳ぐらいの男の子が、一番最初の訪問者だった。
 カメラの映像は、不思議そうに香織を見る子供。
 俺も知っている、隣のマンションに住む、好奇心の強い男の子だ。
 そして、母親が登場し香織を見て驚くが、一言[変態!他所でやってよ]と侮蔑を込めて去って行く。
 暫くすると、お母さん連中を5人引き連れて戻って来て、30分ほど罵倒と嘲笑を浴びせて、帰って行った。
 全員香織とは、顔見知りの近所の奥様連中だ。

 それから、夜まで全く訪問者が無く、放置は2日目に入るように見えたが、犬を連れた親父が、フレームインしてきた。
 驚いた事に、その男は香織がそこにいる事を知っていたようだ。
 そして、俺もこの親父を知っている。
 俺の住んでいた、マンションの管理人だった。
 普段は、好々爺然としているが、どうもSM関係のサイトに登録しているらしい。
 この後の映像で、それが理解できた。
 管理人は、犬を香織にけしかけながら、自分も小便をしだして、香織の顔にわざと掛かるように、放ってボタンを何度も押して、帰って行った。
 この映像の後、陵辱者達はネットの書き込み欄に、情報をリークする映像を入れてきた。
 1日目の深夜から、怒濤の来客だった、香織は述べ200人ぐらいの小便を飲み、2日間それだけを口にして過ごした。
 2日目の夜、回収が行われ、工場跡に移動する車内で香織の拘束は解かれたが、香織の目は半分以上正気を失っていた。
 ここで3本目のファイルが終了した。

 4本目は強制売春だった。
 1ヶ月半を掛けて、ほぼ毎日。
 夕方から夜まで、1発1万円の料金で1日のノルマを決められ、夜の町に送り出される。
 香織は、客を取るまで監視され、客を取ってからは、客にビデオカメラを預け、その一部始終を撮ってくる、と言う方式だった。
 香織は、この間、述べ120人ほどを相手にし、その間300発以上の精を、その身体に避妊無しで受け入れた。
 そして、4本目の終了は俺の心をささくれさせた。
 香織の主人を名乗る、3人が見守る中、妊娠検査薬に放尿し、陽性反応が出て、泣き出す香織。
 それを見た、カメラの女の高笑いと侮蔑の言葉を、俺は一生忘れないだろう…。
 カメラの女は、香織に笑いながらこう言った。
『やっと妊娠したの…。おめでとうね!何処の誰の種か解らないけど、堕ろすしか無いわね。ざまぁないわ!もっと妊娠して、何度も堕ろして。一生子供の産めない身体になれば良いんだわ…!貴女達兄妹には、そう言う人生がお似合いなのよ!ああいい気味!はははははー!』
 高笑いする、カメラの女の声で、4本目は終わった。

 実質の所、この女の目的は、香織への仕返しだと思う…。
 いや思わなければ、この執拗さは理解できない。
 しかし、俺の記憶が間違いなく、且つ俺達の兄妹関係が、俺の思い込みでは無く、感じていた通りの物であるなら、此処まで恨みを抱く行動は無い筈だ。
 此処まで4本分、16時間少々の映像を見続けた俺の頭は、登場人物のプロファイリングを、有る程度終わらせていた。
 先ず、カメラの女は、中流以上の家庭で、両親のどちらかは、躾に厳しい環境に育っている。
 恐らく、母親であろう…。
 言葉の端々に、日頃注意されている言い回しを多用している所が見られる。
 お面の女は、親とは上手く行っておらず、姉がおり、その姉もSM、恐らくSの性質で生活を補っている。
 道具などの所持の種類と、数量から見ても、プロの部類に入るはずだ。
 それと、この女には出来の良い中学生ぐらいの弟が居る事も、会話の中に出て来た。

 大柄な男と香織に目を打たれた男は、4年前の5月20日の夜から、5月27日の間に補導若しくは、逮捕されている。
 これは、この2人が4本目以降に一度も出て来ない事から、恐らく2ヶ月半以上拘留されている事を物語る。
 年齢と期間的に、少年刑務所に送られていると判断するのが、妥当だと推測できる。
 今回の4本目で活躍してくれた彼は、4人姉弟の末っ子で、姉たちは揃って常識が無いようだ。
 そして、最後にこの5人の内、全員に繋がりがあるのは、仮面の女だけで、裏と繋がっているのも、カメラの女と言う事が解った。
 俺は、心の中で固く誓いながら呟いた[必ず見つけてやる!]と…。

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