走狗
MIN:作

■ 第1章 出来事13

 5本目をダブルクリックした時、俺は自分の手の震えが、消えている事に気が付いた。
 感情は激しく憎悪に燃えているが、頭の中は澄んだ湖のように平静を保ちだした。
 5本目のビデオでは、香織は廃工場で宙吊りにされていた。
 お腹をアップに映して、香織の表情を舐めるように、下から撮る。
 香織は、嫌々をして涙を流している。
 どうやら、この後香織は何をされるか、言い聞かされているようだ。
 この格好と、このカメラの移動の仕方を見れば、自ずと俺にも理解できた。

 人の字に貼り付けられた、香織の股間に長いバイブが嵌め込まれ、カメラの女自ら、鉄のナックルを嵌め、香織の妊娠している腹を殴りだした。
 3発4発、香織は涙ながらに許しを請う。
 10発11発、香織のお腹は、全体が紫色に変色している。
 15発目で、香織の股間から、赤い鮮血とバイブが落ちてきた。
 香織の堕胎が完了したようだ。
 哄笑を始めるカメラの女と、項垂れ、力なく泣き続ける香織。
 そしてその後も、香織の股間に執拗にバイブをねじ込み、[感じるのよ!イキなさい!]と命令する、カメラの女。

 この頃から、香織の身体は変化を始める。
 右の乳房が常に赤黒く腫れている。
 もちろん、身体全体が痣や擦り傷だらけだが、特に右の乳房だけが腫れ上がっているのだ。
 それは、次のシーンになって、意味が解った。
 それはカメラの女が、仮面の女と話している場面だった。
 『そろそろ、この子の身体をオモチャらしく変える時期じゃな〜い?』
 仮面の女の言葉に、
 『そうね…そろそろ本格的に、変える時期かしら…。そろそろバレて貰わなくちゃ面白くないしね…』
 カメラの女の声。
 こいつらは、初めから俺の嫁、涼子を巻き込むつもりで居たようだ。

 そうして、香織の肉体改造が始まった。
 今回為されているのは、右乳房のみの肥大だった。
 香織の売春に向かう前に、左乳房には
 【この乳房に触れると、規定の10倍の料金をどの様な手段を持っても、徴収します】と油性マジックで書かれ。
 右乳房には【この乳房は、どの様に扱っても構いません、ただし、ナイフ等で切り刻むのはお控え下さい】と書かれた状態で売春に出された。
 香織の客になった物は、こうして右乳房のみを、揉み、抓り、握り、殴り、蹴り上げ、有りとあらゆる陵辱を繰り返した。
 苦痛に歪む香織の表情を、楽しむように右乳房だけを、攻撃する客達。
 苦痛に顔を歪めながら、感謝の言葉を吐く香織。
 こうして、香織の右乳房は、左に比べ大きく変形し始めた。
 パソコンの画面の中で壊れてゆく唯一の肉親を、俺は何処か遠い目で見ていた。

 6本目が始まった時は、高校2年の夏休みが始まっていたようだ。
 香織は、朝早くから呼び出され、売春を繰り返す日々だった。
 香織の右乳房は、この時には明らかに左より1.5倍ぐらいの大きさになり、服の上からも妙なラインで直ぐに解った。
 お得意様と言うか、リピーターが何人も居て、香織を見かけて声を掛けてくる。
 香織は、夏休みのこの時期、一日20人を越える男を相手していた。
 余りの数に、映像の殆どは、ダイジェスト版のように細切れで映されている。
 この時期、香織に許された避妊の方法は、オ○ンコに指を突っ込み、精子を掻き出して、それを舐め取ると言う方法だけだった。
 当然、この後2度目の妊娠をしてしまう香織。
 4本目のラストと同じように、嘲笑うカメラの女、諦め項垂れる香織、黙々と香織を吊す、仮面の女。
 香織の堕胎が始められた。

 俺の頭は、可笑しく成ってしまったのかも知れない。
 香織の泣き叫ぶ姿、苦痛に歪む顔が、とても愛らしく好意的にすら、思えだした。
 俺の精神の中の奥に潜む、もう一人の俺が存在を示し始めた。
 黒い四肢を身動ぎし、その呪縛を俺自身に感じさせる。
 存在を主張し、眼を開き出す。

 7本目が始まった時、俺は有る事に気が付いた。
 香織の身体に有る傷が、映像で映されている以外の場所に、増えているのだ。
 そして、これも次の一連のシーンから、納得がいった。
 呼び出された香織は、カメラの女に箱を渡される。
『これを、貴女の家のリビングと寝室、浴室とトイレに2個ずつ仕掛けなさい。そして、家に一人で居る時は、首輪を嵌めて全裸で居るのよ』
 そう言って、小型のカメラと送信機のような物を手渡される。
『これで私が24時間、香織ちゃんの行動を監視してあげる。宿題や言い付けを守らなかったら、香織の身体メチャクチャにしてあげるからね』
 嬉しそうな声音で、カメラの女が香織に宣言する。

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