走狗
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■ 第1章 出来事20

 カメラの女はそんな涼子の顔を、踏み付け言葉を投げる。
『考えてあげても良いわ…。そうね、3日上げる…。その間に、自分の関係を整理してきて…。会社も交友関係も親類も…、全部ね…。そうそうこいつの分も…』
 そう言いながら香織の腹を蹴り、又涼子の顔を踏み付ける。
『そ、そんな…』
 涼子が呟くと、カメラの女は香織の首輪を引き寄せ、右手を後ろに差し出す。
 すると、男の一人がカメラの女にバリカンを渡す。
『ちゃんとしなきゃ…。これが遺髪になると思いなさい』
 カメラの女はおもむろに涼子の顔の上で、香織の髪の毛をバリカンで刈り落としてゆく。
『いやー』
 香織は悲鳴を上げるが、抵抗しない。

 刈り落とされる香織の髪の毛は、涼子の顔に降り注ぐ。
『香織ちゃん!止めてー!そんな事しないでー』
 涼子の声が虚しく響く。
『そうそう…これも香織の遺品に成るかもね…あんたへのプレゼントだったらしいけどね…』
 そう言いながら、ポケットから大きめの銀細工で真ん中に直径5〜6cmの黒曜石をあしらった、ブローチを放り投げる。
『ちゃんと付けてなさいよ…思い出の品になるかも知れないしね』
 高笑いするカメラの女。
 足の下で、唇を噛む涼子。

 呆然と座り込む香織。
『3日以内に準備できたら呼んでね。あのカメラに向かって話して、私達が見てたら来て上げる…。その間香織で遊ぶから、早くしないと大変な事に成るわよ』
 そう言って、全裸の香織にシーツを被せて部屋を出て行った。
 扉が閉まり、一呼吸置いて又開いて、カメラの女が顔を出し
『忘れてた、この首輪付けないとカメラ動かないんだった』
 そう言って首輪を涼子に放り投げ、今度こそ居なくなった。
 香織の髪の毛に埋もれ、後ろ手に拘束され、泣き出す涼子。

 場面は変わって、リビングで首輪を握りしめる涼子が、必死にカメラに話しかける。
『会社も辞めて来て、友人にもアメリカに引っ越すって言って来たわ!親族は、遠縁の人しか居ないから、問題ない!言う通りにしたわ!早く来て!』
 涼子は、人権派の弁護士の事務所手伝いとして入ったが、当時では大先生の秘書をやっていた。
 俺が幾ら辞めてくれと頼んでも、聞き入れてくれなかったのに、あっさりと辞めて来たらしい。
 涼子の表情は、焦燥に駆られている。
 再度場面が変わり、先程より暗くなっている。
 リビングのカメラに向かい、又も必死に叫ぶ涼子。
『ねぇ!見てるんでしょ…お願い…お願いよ…香織ちゃんを…私の前に連れてきて…無事な姿を見せて…』
 カメラに向かい正座して、哀願する涼子。

 俺はその姿を見て、本当に口惜しくて堪らなかった。
(何故俺はこんな事を知らなかったんだ…何故今になって…これは、俺の前に現れる…)
 3度目は、首輪を首に巻いた涼子が全裸で土下座し、カメラに向かって蕩々とお願いをしている。
『お願いします…どうか、こんな身体で良ければ、お好きなようにオモチャにして下さい。ですから、香織ちゃんを連れて戻って下さい。お願いします』
 そう言うと涼子は、何度も何度も床に頭を擦り付け、同じ台詞をカメラに唱える。
 5度目の哀願で、家の電話が鳴り、涼子は電話に飛びつく。
 二言三言会話した涼子は、カメラに顔を向けると泣きそうな表情になり、身体を入れ替えカメラに正面を向ける。
 俯きながら足を大きく開いて、オ○ンコを晒し、オナニーを始めた。
 何か言われたのか、涼子は弾かれたようにカメラを直視し
『年増の、貧弱な身体のオナニーショーですが、全国の皆様お楽しみ下さい』
 大声で宣言し、指を激しく動かす。

 そして、絶頂を迎える時、涼子は
『御主人様達に、オモチャとして服従を誓います〜。イク〜〜』
 そう言って身体をビクつかせた。
 絶頂を迎え、ヒクヒクと痙攣する身体で崩れ落ち、電話を受け答えする涼子。
 電話を切った後、モソモソと全裸のまま、玄関先で正座して踞る。
 踞った涼子の背中は、ブルブルと震えている。
 恐らく、泣いて居るんだろう。

 場面が変わり、玄関に平伏する涼子の姿が映る。
 画面は、随分暗くなっていて、オナニーショーから5時間ほど経っていると思われた。
 涼子の身体の下には、水溜まりが出来ていた。
 玄関の扉が開き、陵辱者達が現れる。
『待ったー?ちょっと遅く成っちゃたわね〜』
 仮面の女が、戯けながら入って来て、平伏した涼子の背中に土足で乗り、靴の汚れを擦り付けてリビングに向かう。
 同じように、他の3人の男達も、涼子を足拭きマットのように、土足で踏みしだき部屋に上がってくる。
 そして、ドロドロのシーツを被せられ顔の下半分を覆うマスクを付け、キャップを被らされた女が入って来て、その後にカメラの女が現れた。

 この構成からシーツの女は、香織だと推測したが、香織は素足で玄関の隅に追いやられ、身体を抱きガクガクと震わせている。
 そして、カメラの女は涼子の頭を踏み付け
『お待たせー…。遅くなったのは、香織ちゃんの出来があんまり良くなかったから…、お仕置きしてたの…。ごめんなさいね…、涼子ちゃん』
 そう言って、涼子の後頭部をグリグリと踏みにじった。
 ここで8本目が終わる。

 ブラックアウトしてゆく画面に、映る自分の表情を見て俺は驚く。
 俺は人間が、こんな複雑な感情を浮かべらる事を初めて知った。
 俺の口元は笑い、目尻は吊り上がって、頬を涙が伝っていた。

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