走狗
MIN:作

■ 第1章 出来事29

 俺は、映像を一旦停止し、携帯電話を手に取った。
 電話の発信先を知らせるサブモニターには、[日下部]の文字が浮かんでいる。
「おう、もしもしどうした?」
 俺は、携帯に出ながら時計を見て、この後の日下部の返事が想像できた。
『どうしたじゃないでしょ!俺は、何時間秋葉の駅で待てば良いんですか?今何時だと思ってるんですか!』
 想像と寸分違わぬ言葉を、笑いを含んだ声で怒鳴る、日下部に
「すまん約束は忘れてなかったが、時間を忘れてた…。今まだ家なんだが、来れるか?」
 俺の質問に呆れながら、しかし異変を感じて日下部が答える。
『へーっ、良さんが、時間を忘れるような事なんですか…。大丈夫ですよ、今から向かいます…。何か買って行きますか?』
 流石、大学の後輩だけ有って、飲み込みが早い。
 俺は、食事を依頼し電話を切る。

 俺は、携帯を置いて、再びパソコンに向き直り、再生ボタンを押す。
 香織と涼子は、寝袋のような物にくるまれると、場面が切り替わった。
 部屋に戻って来た、香織と涼子が映し出される。
 香織は、両肩と股関節に痛々しい包帯を巻き、右の乳房も元の大きさに戻っていたが、目線と挙動がおかしい。
 目が潤んでいて、モジモジと太股を摺り合わせている、股間を良く見ると香織のクリトリスは親指程に成っていた。
 香織は、玄関に入ると土間の上で四つん這いに成り、そのままお尻をくねらせ、リビングに向かう。
 そして、次に涼子が現れると、俺はその変化に目を見張った。
 腰の細さもさる事ながら、乳房とお尻が明らかに大きく成っている。
 乳房とお尻は、以前より二回り程大きく成り、香織に匹敵するサイズに変わっていた。
 しかし、身体自体は以前の骨格のため、何処かいびつに歪んでいる。
 涼子も、土間に四つん這いに成ると、お尻を振ってリビングに入って行く。
 涼子のクリトリスも中指程に肥大し、縦に貫いたリングには、魚釣りの重りが付いている。

 リビングでソファーの前に正座した2人は、一度頭を下げて顔を上げると、俺に挨拶した。
『オモチャの香織と涼子です。この身体で思う存分遊んで下さい。どんなことでもお答えします』
 ニッコリ笑った2人の表情は、どちらも情欲に潤んだ目をしている。
 俺は、その映像を見て目頭を押さえた。
 ここで、12本目が終了した。
 プレーヤーが終了し、いつものアイコンがパソコン上に並ぶ。
 すると、何かのプログラムが起動を始めた。
 画面が起動画面のように暗転し、英語が流れ出す。
「ん?何だ…。F−Disk?Ok?」
 動き出したプログラムは、次々に操作を始める。
 カリカリと音が鳴りハードディスクが動いている。
 作業状態を知らせるバーが100を示すと、電源が落ちた。

 その後、俺のパソコンは、電源を入れてもウィンドーズすら立ち上がらなかった。
 パソコンを前に呆然とする、俺。
 どうやら、消すことが好きな送り主は、俺のパソコンのOSごとデータを削除したようだった。
 そこに玄関を開けて日下部が現れ、俺に話しかけて来た。
「良さんどうしたんですか?珍しい。…それ…何したんですか…」
 日下部が、大きな身体でゴミを追いやりながら近付き、俺の隣でパソコンのモニターを見詰める。
「わからん…消えた」
 ぼそりと呟く俺に、日下部が
「そんな…。俺のセキュリティーを突破して、こんな状態にするなんて…。良さんどんな風にして、こう成ったんすか?」
 食って掛かる。
 俺が状況を説明すると、日下部は質問をしてくる。
「ダウンロードファイルのウイルスチェックはしましたか?」
 意味の解らない言葉に、俺は首を横に振った。

 頭を抱えながら、日下部が俺に説明し出す。
「恐らく、その映像の中に、断片的に組み上げ型のファイルが仕込まれてたんでしょう。それ以外俺のセキュリティーは、突破できないですから」
 日下部の説明に、頷きながらも理解せず、パソコンの復旧を頼んで、飯を受け取る。
 日下部は、俺の部屋の隅のゴミ溜めから、1つの段ボールを取り出し、パソコンの前に座って作業を始めた。
 俺は、パソコンを日下部に任せ、コンビニ弁当を食べ始める。
 ブツブツ呟きながら作業をしていた日下部が、作業をしながら俺に質問してきた。
「良さん…。これ、何見てました…?相当のやり手ですよ…、相手は」
 作業の手を止め、俺に向き直った日下部は、自分の鞄からノートパソコンを取り出す。
「良さんのパソコンは、マザーボードのデータまで書き換えられています。このパソコンは、この後いつ内容が消されるか、解らない状態です」
 ノートパソコンを立ち上げながら、日下部は俺のパソコンからケーブルを引き抜いて、自分のパソコンに繋げる。
「だから。パソコン変えますよ」
 そう言いながら、インターネットに繋いで、ネットショップで買い物を始める。

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