走狗
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■ 第1章 出来事32

 自宅に着くと、2人連れの男が俺を迎えた。
 1課の刑事だった。
 日下部の件で任意同行を求められ、俺はそのまま本庁まで連れて行かれた。
 俺は、パソコンが壊れたので、修理を頼んだ事を話し、日下部が殺された時、近所のコンビニで買い物をしたアリバイが有ったため、直ぐに釈放された。
 しかし、厄介なのは此処からだった。
 俺は、嘘を付いて休暇を取った事を課長に責められ、謹慎処分を喰らった。
 年上の部下は[そのまま一生休暇で居ればいい]と腹を抱えている。
(こいつ、いつか殺してやる…)
 項垂れて反省する振りのまま、署を後にする。

 やっと自宅に着いた俺は、パソコンの電源を入れ、謹慎に成ったため、警察のデータベースを仕えない事に気付く。
 すると、新着メールを知らせるチャイム音が鳴る。
 メールソフトを起動すると、新着メールが2通有る。
 どちらも、送り主不明だった。
 1通は、いつもの通りURLが1つだけだったが、もう1通は警察のデータベースに侵入する方法が、事細かに書かれており、IDデータまで添付されている。

 こいつらは、俺が自宅謹慎になった事を、この速度で知る事が出来るようだ。
 俺は、半分呆れながら、URLをクリックする。
 インターネットが飛んだ先は、いつものように2度開き、ボタンが11個並ぶサイトに飛んだ。
 13本目から23本目迄を、俺は手に入れた。
 恐らくこの映像は、月に1度のペースで、香織達が陵辱され、変わっていく様を映し出した物だろう。
 1本目から数えて、丁度23ヶ月分存在している。
 俺が居なかった、年月だ。

 映像は、俺の想像を超え、酷い物だった。
 香織と涼子は、陵辱者に使われていない間は、常にオ○ンコとアナルに何かを入れて、訓練するように命じられていた。
 与えられる食事は、ドックフードか陵辱者達の残り物に、糞尿を加えたモノを犬食いしている。
 犯されれば大きな声で喘ぎ、陵辱者達を褒め称え、自分を辱める。
 陵辱者には、新たに関節を入れた男も加わり、陵辱は激しさを増す。
 どんな苦痛も、どんな辱めも、命じれた表情を命じられた通りに浮かべ、受け入れて行く妻達。
 いろんな場所に連れて行かれ、その先々でオモチャとして扱われる。
 顔や身体には、見る度にピアスや入れ墨が増えている。
 陵辱者達は、俺達が貯めた貯金の3000万にも手を出し、湯水のごとく使っている。
 そして、ドンドン変わる妻達の姿に、俺は自分の心が、乾いて行くのを感じた。
(そう…良いんだ。こいつらには何をしても構わない…)
 俺の心が崩れて行く。
 そして、23本目の最後を見た俺は、完全に人の心を捨てた。

 その映像では、一切の責め具が片づけられた俺の家のキッチンで、舌のピアスをリングで1つにまとめられ、ガムテープで身体をグルグル巻きにされた、香織と涼子が座らされている。
 香織と涼子は、お互い向き合って、一目で解るグレーのタンクを抱き締めていた。
 二人の目の表情には、明らかに強い怯えと恐怖が浮かんでいる。
 カメラの女が、2人を見下ろし
『長い間楽しかったわ…。でも、もうお別れよ。だって後5日程で帰ってくるでしょ、旦那様…』
 楽しそうに笑いながら喋っている。
『そしたらさー、絶対に私達の事探し出しちゃうじゃない…。ゴメンなのよねトラブルは…』
 仮面の女が口を挟む。
『俺達ゃ、反対したんだけどよう…。まぁそんなみっとも無い身体で、生きててもしゃー無いだろ…』
 大柄な男が頭を掻きながら、2人に言っている。
『俺は、こんなんだったら、もっと全身に墨を入れたかったのに…』
 妻達の顔や太股や尻や胸に、入れ墨を入れて居た、男の1人が残念そうに言うと
『俺も、もっとピアッシングを試したかったぜ』
 十数個のピアスを付けさせた、もう一人も同意する。
『仕方ないでしょ。1年早まったんだから…こいつの旦那は、優秀すぎる程頭が回るって話だし、それに私の方にも都合が有るのよ!』
 カメラの女が、不満を顕わにして言う。
『だから、貴女達には居なくなって貰うの…ボンってね。最後の花火で又笑わせてね…』
 そして陵辱者達は、キッチンのガス台に行き、栓を捻る。
 涼子達の抱えたプロパンガスのタンクも同じように栓を捻った。
 天井から火の点いた、煙草をぶら下げて、陵辱者達は出て行った。

 場面が変わり、外からのマンションの映像。
 爆音を上げて、俺の自宅は吹っ飛んだ。
 ケタケタと笑う、カメラの女の声が俺の耳にこびり付いた。
 この映像に対する、俺のリアクションは、想像してくれ…多分外れていないと思う。

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