走狗
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■ 第2章 猟(かり)7

 俺は、和美と千恵を台車に乗せて、牢の中へ搬送した。
 悔しさに身悶えする、正二と泰介。
 変わり果てた姿の、息子の婚約者を見る家族達。
 うめき声を上げる仮設便所にされた、千恵と和美。
 黙々と牢の中に仮設トイレを設置する俺。
 仮設トイレの設置が終わり、俺はモニターをトイレ達も見え易いように、上にあげた。
 そして、使い方の説明をする為に、映像を再生した。

 映像が動き出すと、数秒でトイレにされた妹のシーンが始まる。
 そして、拘束され、今の千恵と和美のような格好にされ、食糞シーンが流れた。
「正二!泰介!貴様らー!何て事してたんだ!」
 正輔が真っ赤な顔をして、怒鳴る。
「おいおい…、おっさん。この程度で怒るな…。そんなんじゃ、途中で頭の血管切れちまうぜ…」
 俺が無表情で、正輔に言った。
 そして、その言葉を正輔はシーンが変わって理解した。

 千恵と和美は、野外飲尿調教を見て泣き出した。
 自分達の身に、何が起きるのかを理解したのだろう。
「おい…。お前達は、まだマシだ…。殆ど身内だからな…。しかし、俺の妹は見ず知らずの他人の糞尿を、腹が割けそうに成るまで、飲まされたんだ。いや、見ず知らずは、語弊が有るな」
 俺は、映像を巻き戻し、最初の子供を映す。
「この子は、隣のマンションに住んでいて、妹にも良く懐いてた。この母親達も顔見知りだ…。それに、この親父は、俺のマンションの管理人なんだ。こいつらは、俺の自宅の直ぐ側で、俺の妹にこんな事をさせたんだ…」
 そして、こんどはスキップして、涼子と2人で並べて、野外飲尿調教しているシーンを映しだした。
「この隣にいるのは、俺の妻だった…。そして、手前の妹を見てみろ。こいつらが何をしたか、良くその目で見ろ…」
 画面は、香織のオ○ンコとアナルに面白がって、石を積める男が映っている。
 香織は、不自由な口で泣きながら、痛い痛いと叫んでいる。
 俺は、映像をスキップする前に戻した。

 淡々と話す俺の目は、囚人達を虫けらのように見ていた。
 みんなその映像の酷さに、言葉を失っている。
 俺は、そんな囚人達に、ルールを説明した。
「良いか。必ず一人1回ずつ以上、大小両方使え。それが終わるまで、こいつらはこのままだ…。この格好の間、食事も飲み物も与えん」
 俺は、そう言うと踵を返して、牢を出て行った。
 時計を見ると、2時間近くが過ぎている。
 俺は、囚人達に餌を与える事にした。
 下剤と利尿剤入りの、スペシャルランチを用意する。

 キッチンに行くと、色々な保存食が置いてある。
 冷蔵庫を開けると、様々な料理が真空パックに詰めて冷凍されており、賞味期限まで書いて有る。
 しかも、良く見ると手前から奥に掛けて、順番に並んでいた。
 由木は、とても几帳面な性格らしい。
 俺は、業務用のクリームシチューの缶と、下ごしらえした野菜の真空パックを取り出した。
 それらを中型の寸胴に入れ、水を足し沸騰するまで煮込む。
 火を消して調味料で味を調えると、下剤と利尿剤を入れ、業務用のエレベーターで地下に運んだ。
 コントロールルームの奥にある、エレベーターの搬入口を開け、シチューを運ぶ。
 途中、餌皿を7枚用意し、台車に乗せる。
 そして、据え置き用の重さ30s程の頭台と、口枷に嵌める漏斗を2個、台車に乗せる。
 牢の扉の前に来ると一旦置いておき、食事の準備を開始する。

 俺は、自走式の車輪が付いた、長さ8m高さ1m程の鳥居型に組んだ、鉄骨を運び込む。
 そして牢の鍵を外し、家族全員に外に出るように言った。
 しかし、外に出て来たのは、正輔だけだった。
 俺は、充分に予測していたので、驚きもしなかった。
 正輔は、不敵に笑うと足を大きく開き、腰を落として、左手を手刀をつくり、肘を軽く曲げて出し、右拳を握りしめ脇腹に引いた。
 なかなか隙の無い、古流空手の構えだ、右拳の位置から判断すると、糸東流系の協会空手だろう。
 俺は、両手をダラリと体側に下げ、足を肩幅に開く自然体を取る。
 途端に険しい表情になり、裂帛の気合いと共に、突っ込んで来た。
 これだから、空手しか知らない奴は扱い易い。

 俺は、中段突きを左手で右に流し、回転しながら肘打ちを後頭部に叩き込んだ。
 俺の肘打ちは、寸分違わず正輔の盆の窪を貫いた。
 まったく、イノシシでも、もう少しマシな戦い方をする。
 加減を間違えれば、即死も有りえるタイミングだ。
 正輔は、自分に何が起きたのかも解らず昏倒した。
 俺は、昏倒する正輔を尻目に、全員を牢から出す。
 囚人達は、オドオドと牢から出てくる。
 その首輪を1つずつ、下の鉄パイプの横棒に付いている、金具に取り付ける。
 最後に正輔に喝を入れ、眼を覚まさせ、横に並ぶように指示する。

 正輔は、頭を振りながら、まだ向かって来ようとするが、俺が睨み付け
「加減された事も解らないレベルで、俺に勝てると思ってるのか?次は殺すぞ…」
 静かに恫喝すると、スゴスゴと従った。
 こうして全員が、鉄棒に首輪を固定され正座する。
「良いか、これが食事の基本姿勢だ。これから食事の時は、速やかにこの姿勢を取れ。解ったか」
 俺の言葉に、小さく返事を返す囚人達。
 俺は、一旦牢から出ると、湯気を上げるクリームシチューを運んでくる。
 みんなの目の前に皿を並べると、その中にシチューを入れて行く。
 皆凍えていた為、その温かさが心地よさそうだった。

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