走狗
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■ 第2章 猟(かり)17

 俺は、美加園を伴いリビングへ向かう。
 美加園は、リビングのソファーに座ると足を高く組み、またあの有るか無いかの笑みを浮かべる。
 俗に言う[アルカイックスマイル]と言う奴だ。
 俺は、千恵と和美をこの場に呼んだ。
 2人は、美加園を見て、ボーッと見詰めている。
 俺は2人に、美加園を紹介してやった。
「これから、お前達を改造してくれる。Drの美加園晃さんだ…」
 俺の声に、ロボットのように頭を下げる2人。

 そして美加園は、俺の抱いた印象と同じ事を感じ、2人に話しかけた。
「あら、こちらチワワみたいで、可愛いわね…。こっちは、子豚ちゃんかしら」
 2人は、その言葉を何の感情も示さず聞いている。
 俺は、2人の反応に
(こりゃ、駄目かも知れん…。ここまで無反応に成るとはな…)
 頭を抱え、心の中で同意した。
「私は、人体造形に関しては、プロ中のプロよ…。貴女達も、美しく変えて上げるわね」
 そう言うと、千恵と和美を身を乗り出して上目遣いに見詰める。
 そして自分の身体に、視線が移って行くのを確認すると。
 美加園は、スウッと立ち上がり、二人を見詰めながら、テーブルに乗りスーツを脱いで行った。
 下着姿で、その抜群のスタイルを披露する美加園。

 こいつは、自己顕示欲の固まりなのか、注目されて調子に乗ったのか、下着を外し全裸になる。
 全裸のままテーブルの上で、クルクルと回りながら、俺達3人に見せつけた。
「どう?これ全部私が作ったの…。凄いでしょ…、綺麗でしょ…」
 股間には、男と女の持ち物が、両方ついているが、玉は無かった。
 確かに腕は凄いと思う、だが馬鹿だ!
 しかし、俺はこんな馬鹿の扱いは、良く知っている。
 俺は、立ち上がり、美加園の頭を一撃すると
「服を着ろ!このナルシストが!」
 一喝する。

 俺の言葉と行動に驚いた、美加園は頭をさすりながら、服を着る。
 チョコンと一人掛けの椅子に腰掛けた、美加園に俺は
「で…。お前はここに、何をしに来た…?その、身体を見せるために来たのか?なら、要らん。帰れ!」
 俺の叱責に、ビクッと震え美加園が口を挟む。
「私、幹部なのに…。打った…、聞いた事もない奴に…。打たれた…」
 ブチブチと文句を言う、美加園に
「はぁ〜っ!幹部だ〜!俺はお前らの組織に、所属したつもりは無いぞ!俺には階級なんか知ったこっちゃねぇー」
 怒鳴ってやった。
「えーーーっ!だって、この家使えるの幹部以上の順番待ちよ!あんた何者?」
 驚く美加園に、俺は概略を教えてやった。

 美加園は、俺の話を聞きながら、この状況を理解しだした。
「はーん…、由木さんが絡んでるんだー。って事は…かなりヤバげな話ね…。これは、私の立場も本格的に…」
 一人納得する美加園だが、独り言を言った次の瞬間、口を押さえ回りを見渡す。
 俺はその仕草に、こいつが何を気にしたのかを直ぐに理解した。
「俺は何も聞かないし、何も知る気は無い…。ただ、お前が俺の下で手を貸すか、貸さないかだ…。それだけで良い」
 俺の言葉が、自分に対する助け船だと悟った美加園は、口から手を離し
「はい!解った!協力する!します」
 と慌てながら答えた。

 俺は、そんな美加園にクスリと笑い
「俺は、自分の仕事のパートナーに、小心者は置かない主義だ…。お前はどうなんだ?」
 目を覗き込みながら、真剣に問い掛けた。
 美加園は、ドギマギしながら
「大丈夫…大丈夫よ…」
 俺に答えた。
「なら…、落ち着け…。立派な物ぶら下げてんだからよ!」
 俺はそう言いながら、美加園の股ぐらを握った。

 取り敢えず美加園は、俺とチームを組み、囚人の改造・医療・解体を担当する事になった。
 俺は、美加園に和美を見せると、希望と現在の状況を知らせた。
「…とまぁ、そう言う事だ。でっ、和美はいつ使えるようになる?」
 俺は、美加園に質問した。
「そうね…。ざっと見積もって…、1時間かしら…」
 美加園は、和美をマジマジと見ながら、俺に告げた。
 俺は頭を抱え、美加園に話をする。
「お前…。俺の話を聞いてたか?和美は、ほんの2時間前に堕胎したんだぞ!それが、何であと1時間で使えるようになる!」
 俺の言葉に、美加園は
「あら…。その程度の修復なら、20分も有れば出来るわよ…。私が言ったのは、この子豚ちゃんの豊胸と、ホルモン調整に掛かる時間を含めてよ」
 不思議そうな顔をしながら、俺に答えた。

 俺は、真面目に話す美加園の顔を、呆気に取られて見ていた。
 美加園は、和美の胸に触れながら
「大丈夫。私が綺麗に整えて上げる…。感度もすっごく良くして上げるね…」
 ニコニコと笑いながら、話している。
 どうやら俺の常識は、こいつらの世界では、通用しないようだ。
 俺は、頭を切り換えて、修復は全て任せる事にした。
 俺の担当は破壊専門だ。

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