走狗
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■ 第2章 猟(かり)19

 千恵を構っている間に、和美の処置が終わった。
 和美の胸は、大きく突き出し、Eカップ程に成っていた。
 しかも、美加園は言うだけ有って、見事なバランスで、乳房を形成している。
 だが、俺は気に入らなかった。
 これでは、和美にサービスしているのと、変わりない。
 涼子は、もっと歪にされた、香織に至っては殴られ変形されたのに、こいつは、何でこんな美乳を手に入れられるんだ。

 俺は、美加園に近寄ると、胸ぐらを掴み、引き寄せて聞いた。
「何だ…、これは…!お前は美容整形の医者か?誰がこんな物にしろと言った…」
 美加園は、俺の怒りの意味が解らず、引きつりながらも抗議する。
「私は、言われた通り、大きくしただけよ…。文句を言われる筋合いじゃないわ」
 確かにその通りだ、しかし俺の腹の虫は納まらない、こいつとは改造の方向について、徹底的に話す必要が有るな。
 俺は、少し冷静になると、全員をリビングに連れて行き、話をする事にした。

 リビングでテレビの前に座ると、俺はどんな風に、妻達が変えられたかをダイジェストで見せた。
 殴られ続けて片方の乳房だけ、変形させられた香織。
 涼子の馬鹿みたいに大きくされた乳房と、有り得ないほどのウエスト、それに反する尻。
 滑稽なデフォルメをされた、漫画のような身体が映し出されると
「あらら…。これは、爺が絡んでるんだ…。こんなの作るのは、あいつの好みだわね…」
 美加園が唇に指を当て、ぼそりと呟いた。
 こいつはどうやら、独り言の多いタイプだ、こう言う奴は得てして隠し事が出来ない。

 呟く美加園に、俺は映像をサーチし、年末年始の惨劇の映像を見せて
「お前…。この爺さんの事、知ってるのか?」
 一人だけモザイクで現れた、爺の映像を見せ質問した。
「知ってるけど、言えない…。良い、[言わないじゃなく]て、[言えないのよ]。まだ、死にたくないしね…」
 その答えを聞いて、今回は黙って引き下がってやった。
 突っ込んだら、この復讐劇自体が駄目になる気がしたからだ。
 そこで俺は、話の内容を変える。
「今…。お前達が見たものは、俺の家族に起きた映像だ…。和美、お前がそんな美乳に、成る資格があるか?」
 俺の質問に、和美は項垂れ、乳房に触りながら
「有りません…。御主人様の望まない物は、持つ資格が…有りません…」
 小さく呟いた。

 俺の怒りに触れ、自分の存在意義が薄れてしまったと感じたのか、嗚咽を漏らしながら、乳房から手を離す。
「ねぇ…。何でそんなに、落ち込んでるの?…この子の身体を歪に変えて、婚約者を追いつめたいんでしょ?じゃぁ、すれば良いじゃない?そこに何か問題が有る訳?」
 美加園の無神経な言い方に、和美は項垂れ、千恵は微笑んでいる。
「そんな事より、貴男がやってる事の方が、よっぽど酷いわよ…。貴男、この子達に強催眠剤を連続投与したでしょ…?そして、メチャクチャ強い暗示を掛けてる。こんな事したら、ハッキリ言ってこの子終わりよ…。自分で、何も出来ないお人形さん…。それも、これから一生よ…」
 美加園が俺の行動を見透かして、批難する。
「意志のない人形を作るような洗脳なんて、何の価値もないわ」
 美加園は、真っ直ぐに、俺の目を見詰める。
「自分から望んで全てを投げ出す、奴隷を作らなきゃ、面白みに欠けるわよ…。あなたなら出来る、私の目に狂いは、無い筈よ」
 美加園は、自分の目を指差した後、大げさに手を振って、ニヤリと笑った。

 そして髪を掻き上げ、頭を振って鋭い目で俺を見詰めると
「私は、腕一本でこの組織のテクニカル・VIPに成った人間よ。それぐらいの人を見る目は有るわ。貴男の後始末ぐらい、どうとでもして上げる。私に出来ない事は、死人を生き返らせる事と、完全に頭の中がおかしくなった人を戻す事と、あと脳みそを元に戻す事ぐらいかしら…。あとは、大体ご希望通り、だから思いっきり、やってみて…」
 形の良い胸を張り、自信満々に話す美加園
「方針を言ってくれれば、私がサポートする。お解り頂けた?」
 俺は、美加園の言葉に頷き、俺の基本的な考えを話す。
「ああ、解った俺はこの2人以外は、全員殺すつもりだ…。心を打ち砕いてな…。だから、俺は徹底的に責め上げる。お前はそれを出来る限り治してくれ。俺がそれを又壊す。殺してくれと頼んでも、俺は続けるつもりだ」
 俺は、自分の考えを美加園に話した。
「OK解った…。貴男の希望を叶えましょ…。私は治す、貴男は壊すね…。その替わり約束して、私にも協力する事…」
 美加園は、俺の胸に手を置いて、真剣な眼差しで見詰め、溜息を一つ吐くと踵を返した。
 俺は、こいつが解らなく成った、先程の馬鹿がこいつの本当なのか、今のシリアスが本当なのか、どちらが本当なのか解らない。

 そして、言い忘れた事を思い出して、美加園に告げる。
「そうだ。由木から、連絡で3人奴隷を造って、生かしておけって依頼が有ったんだ…」
 美加園は、その言葉にピクンと反応した。
「誰か残しておけって指定された?…貴男何か頼んだでしょ…。オプション的な物」
 美加園の言葉に、俺は頷き、ターゲットの情報を依頼した事を告げた。
「あ〜あ…馬鹿ねー。まだまだ足下見られるわよ、気を付けなさい。由木さんは、手助けしてるけど、良い人では無いわよ」
 妖しく笑って、俺に告げる。

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