走狗
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■ 第2章 猟(かり)28

 俺は、美加園に千恵と和美のピアッシングと、クリトリスの処置を頼んで、出かける準備をした。
 美加園は、目に見える程、不機嫌な表情で俺の依頼を受け取った。
 後で知った事だが、美加園はこの時から、本格的に俺を狙うように成ったらしい。
 俺は、運転手の衣装を身に纏い、ガレージに止めてあるリムジンの扉を開いた。
 リムジンを操り、俺は一路都内へ向かう。
 2階の客間の窓から、俺を見送る美加園は両手で肩を抱き、ブルッと1つ大きく震えていた。

 11:40、俺は東京文化会館の駐車場に、リムジンを入れた。
 予想通り、駐車スペースは無い。
 仕方がないから、俺は駐車場をグルグルとユックリ走らせる。
 文化会館の公園口が見える所は、とても狭く、リムジンで動くのは辛い。
 11:55、ターゲットが現れる。
 俺は、何事もなかったように、リムジンを走らせ、公園口に止めた。

 車を降りて、西川守の所に行き、頭を下げながら
「西川様でしょうか?」
 問い掛ける。
 西川は、目の前に止まったベンツのリムジンが、まさか迎えの車だと思わず、パニックに成っていた。
 そこに赤のドレススーツを纏い、黒髪をアップにまとめた、鋭い目線の女が
「そうよ…。間違いないわ…西川家一行よ…」
 フェロモン全開で、話しかける。

 西川家の長女、乙葉だ。
 身長165p体重50sB88W51H85と引き締まった身体に、ボリューム満点の美女だった。
 パーツ、パーツは文句の付けようがない美女だが、全体的な印象は氷のようだ。
 華々しいドレススーツを着ていても、その身に秘めた冷ややかさが、見詰める者を凍り付かせる。

 その横にひっそりと佇む、セミロングの黒髪の女性、これも又別の意味で、危ない印象を与える。
 白のワンピースに、身を包む西川家の次女、優葉だ。
 身長160p体重47sB83W50H80こちらも、負けず劣らずのプロポーションだが、強い光を含んだ目線が、気性の荒さを物語っている。
 姉の取り込まれるような、目線とは逆に、強い反発で引き裂くような荒々しさが有る。
 喩えるなら猫科の大型獣のような、雰囲気を持っている。

 そして、どう見てもタダの一般人にしか見えない西川守。
 昔は、それなりだったであろう西川悦子、そして眼鏡の奥に整った風貌を持つ西川全一。
 リムジンに5人を乗せて、俺は都内を抜け出す。
 高速道路に入ると、5人はそれとなく話し出すが、余り話がかみ合って居らず、俺は良く5人で来たなと感心したものだ。
 余りにも責められるお父さんが、かわいそうなので、俺は早々に後部座席を密閉し、5人に眠って貰った。
 目が覚めたら那須温泉どころか、地獄の1丁目に着いているとは、それこそ夢にも思わなかったろう。
 リムジンは、洋館の玄関に静かに止まった。
 俺は、リムジンを降りて、新たな囚人を車から下ろそうとして、リムジンの扉を開けようとした時、洋館の玄関が開いた。

 洋館の玄関からは、3人のメイド服を着た女が、飛び出してきた。
 言わずとも知れた、千恵、和美、そして美加園の3人だった。
 俺は、呆気に取られ3人を見ていると、俺の前に並んで、にこやかな笑顔を見せ
「お帰りなさいませ、御主人様」
 3人揃ってお辞儀した。
(舐めてるのか…?馬鹿にしているのか…?美加園…。どうせ、お前の差し金だろう…)
 視線に全ての言葉を込め、美加園を睨む。

 すると、千恵が俺と美加園の間にスッと入ってくると、ペコリと頭を下げ
「晃さんは、違います…。これは、私と和美で言い出した事なんです。心から御主人様に仕える証として、メイドの格好をしました。そうしたら、晃さんも着てみたそうだったので、和美と一緒に勧めたんです」
 千恵がそう言うと、和美が出て来て
「そうなんです。悪いのは、私と千恵です。少し、悪のりが過ぎたのは、心からお詫びします。どうか、罰をお与えに成られるなら、私と千恵の2人にお与え下さい。晃さんは、悪くないんです…分不相応な、申し出ですが、お聞き届け下さい」
 和美が頭を下げて、俺に懇願する。
 俺は、2人の反応に驚いた、2人は完全に表情を取り戻し、意志を示しながらも俺に服従している。
 千恵と和美に手伝えと指示して、西川家を牢に運ぶ、美加園とすれ違った時に
「済まん勘違いだった…。それと、流石だ…。俺の予想以上の出来だ」
 詫びた後、美加園の薬による、効果に礼を言う。
 すると、美加園は途端に機嫌を直し、西川家の荷物をリムジンから降ろし出した。

 西川家の5人を、調教部屋に運び終わると、俺は千恵と和美に食事の用意を命じた。
 すると、2人は既にそれを、終えている事を俺に告げ、美加園は俺をパソコンの所に呼び出し、モニターを指し示す。
 パソコンのモニターには、牢に造り付けの給仕システムが映し出されていた。
 俺は、パソコンのモニターに映る、操作方法を憶え、コントロールルームに行って操作する。
 すると、モニターに映った通路の真ん中に、大きな石造りの箱が出て来て、その奥から食事が流れる、と言った仕組みに成っていた。
 俺は、説明書を読まない、自分の性格を後悔する。

 罪人達に食事を与えるように操作すると、俺は自分の腹も満足させる事にした。
 インターホンを操作して、千恵を呼び出す。
「はい、ご主人様ご用でしょうか」
 モニターの一つに、パタパタと走り込んで、息を切らせながら千恵が現れた。
「俺の食い物は、何かあるか?」
 俺の質問に、千恵は用意していると答え、持って来ると行って、画面から消えた。
(持って来る…。どうするつもりだ…?俺がここにいる間は、誰も来れないはずだぞ…?)
 千恵の言葉に、首を捻りながら、俺はパソコンを操作し、その他の機能を確認しだした。
 ここは、本当にいろんな仕掛けが施されていた、ざっと見ただけでは、覚えられない程に。
(猟は、ほぼ終わった、次は宴の準備だ…)
 俺は、モニターに浮かぶ器具を見ながら、奴らをどう料理するか考える。

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