走狗
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■ 第3章 覚醒13

 俺は、千恵に忠雄を牢に帰すように言うと、美加園に向き直った。
「俺がこいつに何をしたか、知りたいか?」
 美加園は、興味津々で俺に詰め寄り、バインダーを抱える。
 俺は、昨日のことを美加園に話してやった。
 美加園は、メモを取りながら、呆れた顔に変わって行き、最後には頭を抱えていた。
「この子…。良く壊れなかったわね…。無茶も良い所だわ…。普通だったら、1時間で壊れるわよ…。こんな、データは…、役に立たないわ…」
 そう言って、バインダーを後ろの机に、放り投げる。
 溜息を吐く美加園に、俺は乙葉の電極を外す依頼をした。
「はあ?どうして…?折角付けたのに…」
 美加園は、腰に手を当て俺に聞き返した。
「もう、必要ないからだ…乙葉こっちに来い」
 美加園にそう言うと、乙葉を呼んだ。

 乙葉は、俺に呼ばれると、直ぐに四つん這いに成り、俺の足下に平伏する。
「ご主人様、参りました」
 乙葉は、艶のある声で、俺に応える。
「そのまま、イケ!」
 俺が命じると、乙葉の身体がビクリと震え、[ご主人様、イキます]と言うと、ビクビク身体を震わせ[イク〜ーーっ]と大声で果てた。
「何をしている…。良いと言うまで、イキ続けろ…」
 俺の命令に、乙葉の身体は忠実に反応する。
 ビクビクと震える身体は、時折大きく跳ねて、乙葉の足下には見る見る、愛液の水溜まりが出来た。
「良し、次は痛みを生み出せ…」
 乙葉の身体は、途端にブルブルと震え、脂汗がにじみ出す。

 それを見ていた、美加園は驚きの表情のまま、凍り付いている。
「もう良いぞ、乙葉立ち上がれ」
 そう言うと乙葉は、俺の横にスッと立ち上がる。
 乙葉の表情を見た美加園は、更に驚き一歩後ずさった。
 恍惚とした表情の乙葉は、あの人をドキリとさせる凄艶なモノに、変わっていた。
 俺は、特殊なナイフを取り出し、乙葉に手渡し
「それを、心臓に突き立てろ」
 俺の命令を聞いた、美加園が驚き飛び込んでくる。
 しかしそれより早く、乙葉は自分の胸に、ナイフを突き刺す。
 乙葉は、そのまま崩れ落ちて行く。
「あんた馬鹿じゃない!」
 美加園は、俺を睨み付けながら怒鳴ったが、俺は知らん顔してナイフを拾い上げ
「乙葉を、良く見てみろ…」
 ナイフを差し出し、乙葉の方に顎をしゃくる。
 美加園は、抱き上げた乙葉を見詰め、首を傾げる。
「あれ…血が出てない…」
 呆然とする、美加園にナイフを放り投げる。
 美加園は、それを受け取るとナイフの先を押す。

 ナイフの刃は、持ち手にスルスルと吸い込まれて行った。
「それは、ダミーナイフだ…。手品なんかで使う、殺傷能力はない。だが、乙葉はそんな事は知らない…。俺の命令で躊躇無く、自分の命を絶てるように成った…。そんな奴隷に、電極は必要か?」
 俺の質問に
「確かに要らないわね…。でも、本当に心臓止まってるわよ…この子!」
 一旦安堵した、美加園が慌てて、立ち上がりAEDを取りに行く。
 俺は、乙葉の胸に手を当て、ドウンと正一を覚醒させた、打ち方をした。
 乙葉の心臓は、見事に動き出し、軽い唸りを上げて眼を覚ました。
 美加園はAEDを手に持ち
「良ちゃんって…何者?何でそんなこと出来るのよ…」
 呆然と俺を見詰める。
「さあな…。身の上話をする、間柄でもないだろ…」
 俺は、乙葉から身体を離し、肩をすくめた。
 この時、見たく無かったが、美加園の瞳は、妖しく濡れ光り、足をモゾモゾと擦り合わせていた。
 俺は、そんな美加園を見なかった事にし、乙葉に
「ベッドに上がって横に成れ、処置を頼むぞ…」
 そう言うと和美を連れて、地下に向かった。

 廊下の途中で千恵と合流し、牢へ向かう。
 メイド服を脱ぎ、全裸になった千恵と和美に
「良いか…。その日一番上手く振る舞った者に、褒美をやる。だから、絶対に他の者には、悟られるなよ…」
 頬を撫でながら注意すると、2人は満面の笑みを浮かべ、大きく頷いた。
 俺は、調教部屋から、牢に向かって歩いて行く。
 2人は、俺の後ろを項垂れながら四つん這いで、着いてくる。
 牢の扉を開けると、全員が一斉に俺に視線を向ける。
 俺は、素早く全員の視線を受け止め、木偶の精神状態を把握する。
 敵意を向けているのが殆どだが、中でも強いのは、正輔、響子、啓介、それと、安曇野家全員。

 西川家と千佳、美登里は、怯えた表情を浮かべている。
(少し、反抗心を砕くか…それとも、先に屈服させるか…)
 一瞬迷ったが、俺はこの場に及んで、俺に敵意を見せるのは、反省の意志無しと判断した。
「全員出ろ…。朝の調教だ…」
 俺は、静かに告げると牢の扉を開けユックリ、調教部屋に向かった。
 全員が牢から出て来て、調教部屋の思い思いの場所に固まる。
「俺に文句がある奴は、誰でも良い。出て来い…」
 俺は、腕組みをして、罪人と木偶達に向かって、言い放つ。
 予想通り、守と全一以外の男と、響子が前に出て来た。
「遊んでやる…。俺を倒したら、全員ここから出られるぞ…」
 そう言うと腕組みを解いて、手招きする。

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