走狗
MIN:作

■ 第3章 覚醒24

 守、悦子、全一は、鍋に投げ込まれた、エビのように跳ね回った。
「この薬は、治りが非常に早い…。だが、受けた時の何倍もの苦痛を伴う。そして、白い粉が出て来たら、それを流さなければ成らない」
 俺は手袋を外し、薬をポケットに入れると
「ここに水はないから、お前達の小便で綺麗にしてやれ…。こいつらは、便器以下だ…」
 そう言って、俺は踵を返し、牢を出る。
 のたうち回る西川家を放置して。
 あとは、忠雄が上手くやるだろう。

 牢を出た時、俺の携帯が鳴りだした。
 携帯を見ると、課長からだった。
「はい…。叶です…」
 俺が電話を繋げると、にぎやかな声の中、酔った課長が話し出した。
『おい!叶!お前反省したか?…明日から出て来い!謹慎を、お情けで解いてやる…。ん?明日は日曜か…月曜…、月曜から出勤しろ!解ったか…』
 酔った声で一方的に話して、電話を切る。
(不味いな…。こんなに早く、謹慎を解かれるとは…)
 俺は、携帯をポケットに滑り込ませながら、この後の時間をいかに作るか考え出した。
 しかし、どれだけ考えようとも、答えは出て来ない。
 思案しながら、俺は1階に上がる。

 俺は、階段の途中で、その気配に気が付いた。
 階段を上りきり、目を向けるとそこには、由木が立っている。
「ご機嫌いかがでしょう…?実は、主から言づてが有り、参上いたしました…」
 そう言って深々と頭を下げる由木。
「何だ…?言ってくれ…」
 俺は、間合いを計りながら、足場のしっかりした位置まで移動する。
「はい、主が言うには…。少し、生温いのでは…。とご忠告が有りまして…、当初の決意とは、些か離れてきたと言うご意見で御座います…」
 俺の移動に合わせ、クルリと向きを変え頭を下げる。
「それは、俺に殺せ…。と言っているのか…?」
 俺の言葉に
「それも、手段の一つでは有ります…。ただ、薬による洗脳は、些か趣に欠ける…。と主が申しておりますので…」
 由木は、頭を下げたまま、俺に伝える。

 俺は、そんな言葉を鼻で笑いながら
「解った…。善処しよう…」
 元より俺もこんな方法で屈服させて、満足するつもりもなかった。
「ところで、俺の謹慎が月曜で解けてしまう…。俺は最低、後2週間は期間が欲しい…。手はあるか?」
 俺の質問に
「御座います…。では、交通事故に遭って頂くとしましょう…。勿論、貴方様のダミーにで御座います。顔に包帯を巻けば、身元は分かりません…お任せを…。それと、期間ですが後2週間で宜しゅう御座いますね…?何ぶんここは、お使いに成られたい方が、多御座いますもので」
 由木は、即答し、一瞬俺を見詰めると、言葉を加える。
「但し…。それ相応の対価は払って、頂かなくてはいけません…。それで、宜しいでしょうか?」
 俺は、暫く考え
「それで構わない…」
 承諾した。

 話が終わり、由木は2歩後ろに下がると、クルリと踵を返し玄関から出て行った。
 きっちり俺の射程外に出るまでは、背中を見せなかった。
(射程をここまで計られるなんて…。俺の戻りもまだまだ、だな…。それとも、あいつには最後まで見切られるのか…。成って見るまでは解らんか…)
 俺は、自分の手を見詰め、漠然と考える。
 2階を見上げると、美加園が不安げな表情で、玄関を見詰めている。
 俺の目線に気が付いた、美加園が
「由木さん…。来てたんだ…」
 ポツリと呟き、廊下の奥へと消えて行った。
 俺は、階段を戻して、2階へ向かい処置室に入る。

 処置室では、2体の木偶が改造されていた。
 2人の股間は隆々と勃起し、チ○ポには10個程の突起が付いている。
 俺の目線を見た、美加園が説明を始める。
「この2人のちんちんは、これが標準よ。不能に成る事は無い。ここから操作すると、最大、長さ25p・直径8pに成るわ…。そしてこのイボは…、女のクリトリスと同じ効果があるの…。但し、有る操作で身を貫く針にも成る…」
 そう言いながら、美加園は指輪を出した。
「操作は、この指輪の台座を捻ってするの。それと、この指輪が直線で半径10mに無いと…。このイボは触れるだけで、激痛が走るの…」
 そうして、指輪のボタンを押しながら
「こうすれば、指輪からの電波が止まるから、側に居ても…、離れているのと同じ効果がある。まあ、言って見れば孫悟空の金冠ね…」
 そう言って俺に指輪を放り投げる。

 この二人が牢の主導権を握れば、当然起こるであろう暴虐をコントロールする処置だ。
 その後も、こいつらが勝手に行動出来ないようにする、抑止力にも成る。
 言ってみれば、見えない手綱だ。
 俺は、美加園の労をねぎらい、二人を牢に戻す。
 二人は、どんな処置をされたのか、目覚めた後も青い顔をして、俺に従順に従った。

 牢に戻ると忠雄と啓介が、西川達に小便を掛けて居る所だった。
 俺は、女達にも小便を掛け、綺麗にするよう命じた。
 千恵、和美、乙葉、夏恵、秋美、美登里の6人が、尿意を訴えたので、全員で輪を作り、放尿させた。
 西川家の3人は、白く浮いた細胞活性剤を綺麗に、洗い落とした。
 俺は、午前中の調教の褒美として、薄っぺらい毛布を6枚用意し、三浦家関係者に渡した。
 粗末な毛布を受け取ると、それを身体に巻き付け、暖を取り始める。
 牢の中は、一時期程、気温を下げては居ないが、それでも10℃を切っていた。
 他の家族は、三浦家を羨ましそうに見詰めている。

 俺は、踵を返し、牢を出て1階に向かう。
 食事を与えたら、風呂の入らなければ、成らない。
 美加園が乱入する予定なのが、気が滅入る。
 一体あいつは、何者で何の狙いが有るのか。
 それが解るまでは、気を許す訳にはいかなかった。

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