走狗
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■ 第3章 覚醒25

 俺は、キッチンに行き、飯の準備をした。
 乙葉が殆どやっていて、俺のする事は本当に暖めるだけだった。
 俺は、飯を暖め、牢内に送り込み、自分も食べる。
 牢内の食事が終わり、片付けをすると、重い腰を上げる。
 大浴場に着くと、既に使える状態に成っていた。
 乙葉が準備していたのだろう、俺は気の回る乙葉に微笑みを浮かべた。
 脱衣所で服を脱ぎ、扉を開けて中に入る。
 20畳程のスペースに、その半分を占める程の浴槽には、お湯がなみなみと張ってある。
 浴槽の真ん中には、大きな瓶を持った裸婦像から、お湯が流れ出している。

 俺は、そのまま湯船に浸かり、目を閉じた。
 1分と経たぬうちに、扉が開き
「良ちゃ〜ん!来ちゃった〜っ」
 美加園が全裸で、飛び込んでくる。
 湯船に浸かる俺目掛け、突進してくる美加園を、俺は寸前でかわし、美加園はそのまま頭から、湯船にダイブする。
「酷ーい!今、足払ったでしょ!何もそこまでしなくても、良いじゃない!」
 美加園の言うとおり、突っ込んできた足を、かわしざま手で払って、湯船に突っ込ませた。
「下らない事をしようとするからだ…。俺は、お前に聞きたいのは、ただ一つ…。何で、ここに居る」
 真正面から、美加園の目を見据え、俺は質問をした。
「い、いやね…。ここはお風呂よ…、お風呂に入るために、決まってるじゃない…」
 美加園は、チラチラ回りを見ながら、俺に告げる。
 監視カメラや盗聴器が有る事は、解っている。
 だが、俺には、こいつの目的を聞く事の方が、先決だった。
 美加園は、俺の目を見詰め、真剣な表情を向けた後、笑みを浮かべ俺に擦り寄る。
「良ちゃ〜ん…。私もさ〜っ…いっぱい、良ちゃんの言う事聞いたじゃない…?だから、ご褒美欲しいな…」
 湯気の向こうで、真剣な目を時折向けて、俺に近づく。
(こいつも、監視されているのか…。言動を知られたくない…。だとすると、俺に何を望む…)
 俺は、美加園の仕草から、その行動の意味を推測する。

 美加園は、俺の首に手を回すと、口づけをする。
 俺は、黙って美加園の目を見詰め、唇を受け入れた。
 美加園は、真剣な表情で俺を見詰めながら唇を合わせ、俺の口の中に言葉を投げ込んでくる。
「お願い…聞いて…。せめて、私の話を最後まで聞いて、判断して…」
 美加園がその後語った言葉は、俺が今居る状態の危うさも、説明する物だった。
 美加園の話は、要約するとこうだった。

 俺はどうやら、有る組織内での賭の対象で、一定の条件をクリアーする事で、勝敗が決まるらしい。
 この争いには厳正なルールが有って、それを破る者には血の粛清が訪れる。
 そんな中、俺に与えられたルールは、課題を守る事だった。
 俺に与えられた課題は、期間内に全員を拉致し、それを服従させるか、若しくは黙らせる事。
 俺が持っている残虐性、能力、技術、それら総合的な事を誇示し、監視者を満足させる事。
 そして、決められたルールを遵守する事と、そのルールは自分で探す事だったらしい。
 全く初耳だが、由木の現れるタイミングや言動から、恐らく美加園の言葉は正しい。
 確かに知らなければ、俺は課題をクリア出来てたかは疑問だが、美加園はどうしてそこ迄俺に肩入れするんだ。
 そして、美加園に至っては、俺のサポート役に入れられた時点で、危うい立場に置かれていて、これで俺が失敗したら、誰かの専属にされるらしい。

 俺が美加園に
「それは、悪い話なのか…?」
 聞いてみたら、凄い表情を浮かべ
「当たり前でしょ!私はね、自分が綺麗だと認めた物以外、作りたくないの!そんな物を人の命令で作るなんて…。死んだ方がマシよ!」
 俺に額をくっつけて、火の出るような目線で語った。
 美加園は、組織内でフリーを貫いていた理由が、それであったらしい。

 俺は、美加園の言葉を全面的に信頼は、していない。
 だが、得心の行く部分もある。
 現状の中では、こいつが尤も、信頼が出来る人間であり、気質も理解できる。
 俺は、自分の警戒ラインを少し解く事にし、微笑んで[解った、お前を信じる]っと告げた。
 しかし、その後のこいつの行動は、俺の腹に据えかねた。
 あろう事か、こいつは腰を浮かせて、俺のチ○ポを自分のオ○ンコに、入れようとしやがった。
 俺は、そのまま顎を掴み、美加園を引き上げると
「お前…。それとこれとは、話が違うだろ…」
 怒りに震える俺の声が、美加園を襲う。
「ご、ごひぇん!りょうひゃん…もうひまへん…ゆうひへ…」
 俺は、美加園を湯船に放り投げると
「俺の許可無しに、俺に触れるんじゃないぞ…。解ったな晃!」
 背中を向けて、晃に言った。
「へっ…今…晃って…。良ちゃん…有り難う!」
 そう言って、晃が俺の背中に飛びついた。
「良ちゃん、手放したくない子が居たら、言ってね…。その子に墨を入れるから…。組織は、墨の入った素体を、極端に嫌うの…。だから、それを逆に利用する…。大丈夫私が作った、特性ペイントで完全に消せる奴だから、終わったら直ぐに元通りよ…」
 俺の背中に晃が囁いた。

 俺と晃は、風呂から上がり、お互いの仕事に戻った。
 晃は、データの分析と研究の続き、俺は木偶達の行動監視だ。
 地下のコントロールルームに入ると、モニターには栄蔵を心配する志緒理と、正輔を心配する絵美が映っている。
 2人とも同じ牢に入り、何やら相談しているが、どうやら変わってしまった自分のチ○ポについてらしい。
 そんな、2人のチ○ポを2人の妻は、マジマジと頬を赤らめ見詰めている。
(けっ、こいつらこんな状況で、良くそんな気になれるな…)
 俺は、不快感をあらわにしたが、何処かで読んだ本を思い出す。
 たしか、人間は極限状態に陥れば、本能で性欲が強まる、と言う内容だった。
(なら、もっと極限状態にして、性欲をコントロールすれば、服従も早まるか…)
 俺は、そんな事を考えていると、アラームが22:00を知らせる。
 俺は、ブザーを鳴らし、催眠ガスを牢内に流した後
「10時だ…。もう寝ろ」
 命令して照明を落とす。

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