走狗
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■ 第3章 覚醒30

 俺は、由木と2人で玄関まで歩いて行くと
「今回は、対価を先に頂く形を取りましたので、早急に処置を行わせて頂きます…」
 そう言って、俺の横を通り過ぎようとした。
「これは、今回の件で叶様に、ご迷惑を掛けたお詫びの助言です。[あり得無い事は、無い]と[目に映る物を理解しないのは、見えて居ないのと同じ]この2つをお送りします」
 俺の横で止まって、囁き、直ぐに動き出す。
 俺の身体は、またも固まった。
 この2つの言葉も、俺が父親に教えられた事だ。
 振り返ると、そこに、由木の姿は既に無い。
 呆然として立ち尽くし、由木の言葉を数度反芻した。
 俺は、踵を返すと、牢に戻った。

 牢に戻ると悦子が半狂乱に成って、守を責めている。
「どうしてあんたは、いつもそうなのよ!息子でしょ!守るのがあんたの努めでしょ!」
 悦子は、どうやら全一が掠われるのを、守るが黙って見ていた事を知ったようだ。
「煩いぞ!何の騒ぎだ…」
 俺は、内容も状況も解っていたが、あえて無視してそう言った。
「あ!あんた!全一を何処にやったの!返してよ!返して!」
 俺に怒鳴りながら、掴み掛かってきた悦子を、俺は容赦なくぶちのめす。
 俺に叩き伏せられて、呆然とした表情で俺を見詰める悦子。
「何だ…?殴られないとでも、思ったのか?馬鹿かお前は…」
 俺は、溜息を吐くと、全員に聞こえる声で
「おい!この中で。まだ普通に、ここを出られると、考えている者は、居るか?」
 質問を投げ掛け、暫く反応を見る。
「お前だけだ…、俺に逆らって、無事で居られると思ったのは…」
 俺は、悦子を睨み付け、蹴りを一つ入れると
「こんな、不心得者が居るようじゃ、俺も調教を考えなきゃいかんな!千恵!和美!」
 全員に大きな声で宣言し、2人の奴隷を呼んだ。

 2人は手を取り合って、恐る恐る俺の前に現れる。
「お前達2人は、俺に服従を誓ったな!これからは、奴隷として扱ってやる。楽しみにしていろ…」
 俺がそう言って2人を引き寄せ、乳房を鷲掴みにして宣言する。
 すると、奥から乙葉が出て来て
「待って下さい…!聞けばその2人は、血縁でも何でもないと、言うじゃ有りませんか…。私が奴隷に成ります…優葉の唯一の血縁です。どうか、それで許して頂けませんか…」
 乙葉が俺の前で、土下座し頭を下げる。
「お前は考え違いをしている…。ここに居る全員、奴隷になるか、死ぬしか結末は存在しない…。俺は自ら、奴隷になると言った者しか、奴隷にはしない…」
 俺は、その頭を踏み付けて、乙葉にそう言った。
「お前はどうなんだ…?自ら奴隷に成りたいと思ったのか…。それとも、仕方なくそう言ったのか…!どっちだ?」
 更に足に力を入れて、乙葉に問い掛ける。

 俺の後ろから、優葉が[お姉ちゃん]と叫ぶ。
「それで、少しでも妹の罪を償えるなら…。私を奴隷にして下さい…」
 乙葉が俺の足の下で、そう言った。
 また後ろで、優葉が叫ぶ。
 今度は、座り込んで、泣いているようだ。
 こうして乙葉は、スムーズに俺の奴隷であると名乗った。

 俺は、乙葉から足を退け、立ち上がるように命じると、千恵と和美を離して、乙葉の顎を掴んだ。
 乙葉は、固く目を閉じ、身体を強ばらせる。
 フッと目線を股間に向けると、乙葉のそこは、愛液が滲み出している。
 俺は、乙葉を離し、和美と千恵に毛布を集めさせ
「お前達に朝のシャワーを恵んでやる」
 そう言って、牢から一旦出ると、機械を運んだ。
 その機械は移動型の消防ポンプで、小型ながら、給水が続けば最大30sの水圧で、水を放出する。
 俺は、そのままエンジンを掛け、全員の身体を洗い出した。
 身体の軽い千恵や千佳や優葉は、水圧に押されて部屋の隅まで追いやられる。
 栄蔵ですら、その水圧に耐えられず、数歩後ずさった。

 床にこびり付いた匂いも、その水圧で押し流す。
 俺は、タップリ30分程放水し、エンジンを止める。
「これで、少しは綺麗になっただろ…?こんな目に合うのも、誰のせいか良く考えろ…」
 俺は、意味ありげな言葉を投げ掛け、悦子を睨み付けた。
 それだけで、充分であった。
 全員悦子に視線を向けると、もの凄い目で睨む。
 俺が出て行った後の、こいつらの行動が楽しみだ。
 俺は、機械を押してそのまま、牢を出る。
 牢を出る前に振り向いて
「お前達には、少しこの室温は高すぎるな…。頭を冷やせ」
 ニヤリとどう猛な笑顔を向けて、扉を閉めた。

 多少やり過ぎた感が有ったが、今の俺は、それも是だと思っている。
 俺は、今日の朝方から感じている、有る感覚に酔っているからだ。
 手掛かりは八方塞がりのまま、日数だけが過ぎて行くのに、俺は一向に焦っていない。
 それは、今は準備期間に過ぎないと言う感覚が有ったからだ。

 しかし、それも終わりだ。
 身体のキレ、頭の回転、一瞬を見抜く閃き、全てが目覚めだした。
 俺の中に産まれた、新しい感情と、今迄惰眠を貪ってた感覚。
 それが、溶け合い、絡み合って一つの形を為す。
 今日から、俺の気の済むまで、木偶達を追いつめる。
 精神的に、肉体的に、ボロボロにしてやる。
 そんな意欲が沸々と、身体の奥から沸いてくる。
 俺が覚えた新しい感覚は、それを[行え]と俺に命じる。

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