走狗
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■ 第4章 狂宴1

 俺は消防ポンプを片付け、コントロールルームに入ると、景気よく牢内の室温を−5℃に設定した。
 見る見る室温が下がり、木偶達が震え出す。
 最初は、悦子を口汚く罵っていた木偶達も、部屋の中央に集まり、身体を寄せ合いだした。
 女達を真ん中に蹲らせ、その回りを男が囲って暖を取り始める。
 しかし、悦子達はその輪に入れて貰えず、仕方なく牢の隅に移動した。
 肌を寄せ合い、小刻みに身体を擦り合う木偶達。
 牢の檻にもたれ掛かって、2人で暖を取る西川夫婦。
 そして、床に溜まった、水溜まりが凍り出した時、有る異変が起きた。
 檻にもたれ掛かって居た悦子が、叫びだしたのだ。
「い、痛い!痛い、痛い…だれか…助けて…!」
 悦子は、鉄格子にもたれ掛かった状態で、動けない。

 当たり前だ、気温が低い状態で、皮膚が鉄に触ると張り付いてしまう。
 ましてや身体は、タップリ水分を含んでいたのだ、くっつかない訳がない。
 しかし、木偶達は悦子のそんな声にも、一切耳を貸さない。
 俺は、コントロールルームから、立ち上がると牢に向かう。
「どうだ…?頭は冷えたか…」
 俺は、そう言って木偶達に話しかける。
 木偶達は、一様に激しく頷き、許しを請う。
 そこに、悦子が叫び出す。
「た、助けて!助けてよ!背中が!取れない…早くしてよ!」
 俺は、その言葉遣いに神経を逆なでされ、完全に無視した。

 朝から俺の怒りに触れた木偶達、
「よし…。少し早いが、調教にしよう。出て来たくない者は、出て来なくて良いぞ」
 俺は、背中を向けて、牢を出る。
 木偶達と罪人も、みんな整然と並んで、牢を出て来た。
 俺は、そこで有る木偶を見て、驚いた。
 一番最後に出て来た木偶は、守だった。
 こいつは、あっさり女房も見捨てた。
 俺は、開いた口が塞がらなかった、思わず俺は乙葉のスピーカーマイクに連絡を入れる。

「乙葉…あいつはいつも、ああなのか…」
 俺の質問に、乙葉は震える声で
「は…い…。自分の…保身しか…有りません…」
 はっきりと答えた。
 暫く考えて、俺は乙葉に質問する。
「お前達にとって、西川は憎悪の対象でしかないのか」
 俺の質問に対する答えは
「姉妹2人にとって、あの一家はその通りです」
 実に解りやすかった。
 俺は、コントロールルームに入ると、牢の室温を限界まで下げた。
 コントローラーのパネルは−15℃で止まる。
(これで、放置すればあの状態なら、10分もたないな…)
 俺は、コントロールルームを出ると、牢の中にいる守に話す。
「おい…。良いのか…?このまま放置すると、確実に死ぬぞ…。お前は息子ばかりか、妻も見捨てるんだな…」
 俺の言葉に、守は愛想笑いのような顔を見せ
「あんな風に成ったら…。私じゃ、どうする事も…」
 困ったように、言い訳した。
(こいつに、生きる値打ちはない…。次は、苦痛の中で殺してやるよ…)
 俺は、守を見下ろし、腹の中で言った。

 俺は、また込み上げてくる、どす黒い意識に心を染め出した。
 モニターを廻し、課題を決め、ルーレットで実施者を決める。
 課題は[フィストオナニー]。
 俺は、軽めの調教なので、実施者を4人にした。
 志緒理と絵美と響子と千春に決まる。
「さあ…決まった事を、やって貰おうか…」
 俺は、そう言って4人を見渡す。
 4人は、恐る恐る自分の手をオ○ンコに持って行き、指を入れ始めた。

 しかし、誰もフィストオナニー等した事が無く、入る訳がない。
「おいおい。16歳の少女に出来た事が、何で出来ない…?此奴らに強要されれば、出来るのか…」
 俺は、後ろに控えている、4人を指さしそう言った。
「そんな事言われても、私達には無理です…」
 志緒理が不用意に言った言葉で、事態は急変した。
「そうか…。お前達は、自分でする事は、出来ないのか…?良いだろう、待ってろ…」
 俺は、道具部屋に入り、首輪を5個とマネキンを持って戻る。

 そして、少し離れたところにマネキンを置くと、首輪を付けた。
 セッティングが終わり元の場所に戻って、説明を始める。
「あのマネキンに付けた首輪には、指向性の爆薬が仕掛けられている。首輪の中に向かって、セットされているから、回りには被害が出ない」
 そう言いながら、俺は全員の顔を見る。
 全員、息を飲んで、俺の説明を聞く。
「そして、スイッチを入れたら、有る条件を満たさないと、解除されない。その条件とは、このセンサーから発せられる信号だ」
 俺は、ブラブラと湿布のような物が付いた、小さな箱をみんなに見せる。
「この箱の信号は、子宮の収縮を感じたら、発せられる…。つまり、お前達がイカ無ければ、誰かがこうなる」
 そう言うと俺は、マネキンに向けて、信号を送る。

 ドンと振動を伴う、籠もった低い爆発音と共に、人形の首が転げ落ちる。
 全員の顔が、青ざめる。
 俺は、女達の腰の上にセンサーを張り
「嘘を吐いて、イッた振りをしても、このセンサーはごまかせないからな」
 そう言って、首輪をちらつかせる。
 女達は、自分にその首輪が掛けられると、思っていたのか皆項垂れた。
 しかし、俺はそんな事はしない。
「栄蔵、忠雄、正輔、啓介…出て来い…」
 俺は、低く4人の名前を呼んだ。
 お互いに顔を見合わせ、前に出てくる4人に
「こいつらは、自分では出来ないらしい…。変わりにお前らが突っ込んでやれ…。死にたく無ければ、イカせるんだな…」
 投げ捨てるように俺は言った。
「制限時間は30分だ、精々頑張れ…。俺は、誰も死なない事を願ってるぞ…」
 4人に首輪を付けて、静かに言い放つ。

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