走狗
MIN:作

■ 第4章 狂宴3

 扉が開くと、中からヒンヤリとした空気が流れ出して来る。
 その空気の冷たさに、扉の前で様子を見ようとしていた忠雄、栄蔵、正輔が後ずさった。
(こりゃ…確実に死んだな…)
 俺は、その気温の低さに、確信した。
 牢の中に入った、忠雄が途端に転倒した。
 室温は、まだ0℃を少し上回ったぐらいだろう。
 床の凍結が、溶けておらず滑ったのだ。
 そして、態勢を立て直そうとする忠雄の目に、その姿が真っ先に入り込んで来た。

 悦子の身体は、檻の鉄格子にもたれ掛けたまま、霜が降り真っ白に成り、完全に凍り付いている。
 目と口は、うっすらと開いていて、凍り付く前に、体力を使い果たした事が理解出来た。
 その死体を見て、他の者達も固唾を呑んで見詰め、凍り付いた。
 俺は踵を返し、牢の入り口に向かい
「もう少し室温が上がるまで、何も出来ない…。時間もまだ、十分に有る…。次の調教に移るぞ」
 そう言って扉を潜る。
 俺の後に、全員が付いてきて、牢の扉を忠雄が閉めた。
 調教部屋に戻った木偶達は、二人を除いて無言で震えている。
 そう、乙葉と優葉の二人だけが、複雑な視線を牢に向けていた。

 死体を目の当たりにし、緊張の走らせる者と、まだ何処か現実味に掛ける表情を浮かべる者に分かれた。
(ぬるいな…。やはり…、目の前で見ないと、理解出来ないか…)
 俺は次も、誰かの命を掛けて貰う事にした。
 今日、2度目のモニターを廻して課題を決め、ルーレットで実施者を決める。
 課題は[イラマチオ]実施者は、志緒理と絵美と響子に決まる、もちろん俺の細工だ。
 俺は、罪人達に目を向けると、優葉で視線を止める。
 優葉は、感情を殺した目で、ジッと守を見詰めていた。
 守は、妻を見殺しにして、死体を見ても近寄りもせず、今も曖昧な笑みを浮かべている。

 俺は、この二人の間にまだ、何かの遺恨が有る事を感じ、調教に付け加える事にした。
「優葉。お前も実施者として、参加しろ…」
 俺の声に、優葉が振り返る。
 俺を見詰める目には、憎悪の色が色濃く浮いている。
(こいつの反抗心を、何とかしなきゃな…。取り敢えず、この二人の関係を試す…)
 俺は、優葉の視線を受け止め、ニヤリと獰猛な笑みで優葉に応えた。

 道具部屋に入り、俺は小道具類を用意し、今度は木製の人形を用意する。
 調教部屋に戻ると、小道具のワイヤーを人形にセットする。
 同じように、絵美、響子、志緒理、そして守の4人が、全身にワイヤーを巻き付けられ、後ろ手の形で縛られ正座している。
 守を除く3人は、一様に口枷を嵌められ、顔を恐怖で歪め、目をキョロキョロと、せわしなく動かしている。
 そして、そのワイヤーの全ての端は、腹と背中に有る弁当箱ぐらいの、箱に飲み込まれている。
 背中の箱から伸びた太いワイヤーが、天井のクレーンに繋がれ、4人の身体はいつでも吊り下げられるように、成っていた。
 俺は、4人に近づくと、そのワイヤーの掛かり具合を確認する。

 このワイヤーは、基本的に腹側から、背中側のボックスへワイヤーを通す仕組みに、成っている。
 腹側から伸びた20本のワイヤーをどう通すかは、調教者のセンス次第だった。
 この機械がどう動くかは、この後の木製の人形が、示してくれるだろう。
 それを見たこいつらの、表情の変化が見物だった。
 自分達がどんな目に合うか、自分達がどんな立場にいるか、良く解るだろう。
 そうすれば、少しはこいつらも、もう少し必死になるだろう。
 俺は、調教部屋の壁際に、人形を持って行き天井のフックに吊り下げる。
 準備が終わって、俺は全員に聞こえるように、大きな声で話し出した。
「どうも、お前達は、今ひとつこの地下がどう言う類の物か、理解していない…。必死さに欠ける」
 そう言うと、俺は全員を見渡した。
 皆一様に、恐怖心はあるが、反抗的な目線を向けてくる。
「そこでだ、今日はこのデモンストレーターに、俺の考えを実演して貰う…。当然その4人は、着けている物が同じだと理解していると思う…。これがどう言う物か良く見てから、この後励んでくれ…」
 そう言うと俺は、人形を指差した後、機械のスイッチを入れた。

 すると背中の機械が動き始め、キュルキュルとワイヤーを巻き取り出す。
「このワイヤーは、今から張力30s程の力で、巻き上げられ全身を締め付ける」
 俺の言葉通り、ワイヤーは固い人形のの身体を、グイグイと締め上げ、ミシミシと音を立て木に食い込む。
 俺は時計を見ながら
「ワイヤーが食い込むと、設定時間で胸の機械が動き出し、ワイヤーに振動を加える。それも半端じゃない振動をな…。すると、どうなるか…30秒…」
 説明し、設定時間の30秒を俺が告げる。
 すると、キャァーンと甲高い音を立てて、木の人形の身体に、バターを切るようにワイヤーが食い込んで行く。
「ワイヤーに加えられた、高周波の振動で、硬い樫の木でもこの通りだ。人間の肉なんて簡単に、ぶった切る刃物に変わる」
 この光景を、見ていた木偶達は、魂を抜かれた。
 一番リアクションが大きかったのは、当然同じ物を着けられている4人だった。
 口枷の奥で、意味を成さない、哀願を俺に投げ掛けてくる。

 俺は、それら全てを無視し、調教のルールを説明した。
「お前らは、イラマチオが好きだったな…?良く俺の女房と妹に突っ込んでたろ…。遣らせてやるよ、お前らをひりだした、女の口でな…。時間は5分だ、一気にボンと行く設定にして有る…。上手く発射出来たら、母親は無傷だ…。始めろ」
 そう言うと、俺はスイッチを入れた。
 罪人の3人は、必死になって母親に取り付く。
 しかし、この状況下で、全く役に立つ状態では、無かった。
「おい、おい…。そんなんで助けられるのか…?もう30秒過ぎたぞ…、お前達も見てるだけか…」
 俺が木偶達に声を掛けると、美登里が真っ先に動いて、泰介のチ○ポを頬張る。
 美登里は、ピアスで変えられた、舌と唇と口腔を懸命に使った。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊