走狗
MIN:作

■ 第4章 狂宴9

 俺は、時計を確認すると、19:25少し時間を掛け過ぎたようだ。
 そのまま研究室へ向かい、扉を開ける。
 晃が守の身体に、何かの注射を打っていた。
「今度は、何の研究だ…?先回りばかりしやがって」
 俺の声に驚いた晃は、注射器を取り落とし掛け、慌てて握り直す。
「あ、あれはね…。ほら…、手助けに成るかな〜って…」
「それと、何吹き込んだんだ…?あいつら、完全に俺を見る目が、変わってたぞ」
「い、いや…あの…、大した事は…言ってないわよ…」
 俺が無言で見詰めると
「ご、ゴメン良ちゃん!薬の事は、謝るわ…。でも、本当に大した事は、言ってないのよ…。ただ、治療の時に麻酔を掛けて、苦痛を和らげて呉って、頼まれた事と、本当は優しい人だって、言っただけだもの…。本当の事でしょ…」
 晃は、両手を振りながら、後ずさる。
「別に、怒っては居ない…。むしろ感謝してるぐらいだ。お前のおかげで、スムーズに事が運んだ。ただ、俺が眠っている内に、コソコソされたようで、少し苛ついただけだ。まあ、お前の日頃の行いだな…」
 俺がニヤリと笑うと、晃は安心して、少し膨れながら
「そんな言い方、無いじゃない…。素直に感謝してくれれば、私もやる気が出るのに…」
 俺に抗議する。
「いや、お前が優秀なのは、知っている。俺の癇に障る時は、決まってお前のやる気が起きた時だ。だから、普通にやってくれ」
 俺は、晃のこれからの行動に、釘を刺す。

 すると、晃はコソコソと注射器を隠し、イソイソと薬品を片づけ出す。
(こいつ…。既に何かしやがったな…?この、見つけて、突っ込んでくれと、言わんばかりの態度…)
 俺は、軽く頭を抱え、お望み通り晃に問いただす。
「でっ、今度は何をしたんだ…」
 俺のうんざりした声に、晃が顔を引きつらせ
「えっと…。精神の抑制剤を投与したの…」
 俺に漠然とした、説明をする。
「精神の抑制?…。それが、何でそんな…。ちょっと待て…、精神のどの部分を抑制した」
 俺は、晃の態度に、裏を感じ詰問する。
「てへっ…。理性…」
 晃は、舌を出しはにかんだような笑いを浮かべ、俺に答えた。
 俺は、頭を抱えて晃に文句を言い掛けたが、少し考え直し
「その薬の効果と持続力は?」
 俺は、真剣な表情で、晃に質問をする。

 晃は、俺の変化に驚きながらも、質問に答える。
「え…。効果は、欲望が先行する程度で。脳内のホルモンバランスを崩す薬だから…。持続は、1週間ぐらい…」
 晃が顎に指を乗せ、考えながら効果の説明をする。
「つまり。こいつは、1週間欲望の赴くままに、行動すると言う事だな…」
 俺は、晃に念を押すと、晃はコクンと真剣な顔で頷いた。
「ね…ねぇ…良ちゃん…。あ、あなた…、今とんでも無い事考えてるでしょ…」
 晃が口ごもりながら、俺に質問してくる。
「ん?とんでも無いかどうかは解らんが、有る事は考えてる。どうしてだ…?」
 俺は晃に聞き返すと
「あなた…。今とんでも無い、サディストの顔してるモノ…」
 顔を紅潮させながら、晃が俺を指差す。
(そりゃ、こんな事をやっていれば、サディストにも成るさ…何を今更…)
 俺は、この時の晃の指摘を軽く流したが、この辺りから俺は完全なサディストに、変化していたと思う。

 他人を支配服従させる事に快感を覚える性癖、そんな風に俺は染まっていた。
 俺は、視線を守に移し替えると
「こいつの分泌物に、催淫効果の有る物を混入する事は、出来るか?」
「それは、もうしてある…。と言うか分泌物自体が、その効果を持っている物しか無いから…」
 俺の質問に、晃は端的に答える。

 これで準備は整った、後はステージ作りだ。
 俺は、守の眠りを晃に覚まさせると、地下に降りて行き、小道具を集める。
 守の首に、爆薬付きの首輪を付けると、小道具を手に牢の中に入った。
 牢に入ると、ちょっとした騒ぎが起きていた。
 騒ぎの内容は、4人が身綺麗に成って帰って来た事による、他の者の羨望と不満である。
 騒動の中心は、千春と秋美だった。
 千春がいち早く秋美の身体から漂う、ボディーソープとトリートメントの香りに気が付き、詰問しだしたみたいだ。
 それを秋美はしらばっくれ、止めに入った夏恵も、千春に香りの指摘をされたらしい。
 その輪は、広がり千佳と美登里も家族に、指摘される。
 そこを、忠雄がなだめたが、中々納まらず、揉めていた所に、俺が登場した。
「何だ…そんな事か…。こいつらは、今日の調教で頑張り従順だった、だから褒美をやった。何か悪いか?」
 俺の一言が、問題の全てを解決した。
「褒美が欲しければ…。どうすれば貰えるか、考えろ…。それもしないで文句を言うな」
 俺は、言葉を付け足しもうそちらには、見向きもしなかった。

 俺は、一つ開いている檻の鍵を開け、乙葉を呼びつける。
 すると乙葉は、俺の前に這い進んで来る。
 俺に何か言いたげな視線を向けるが、俺の視線から、それを許されないのを知り、黙って俯く。
 俺は、リードの付いた犬の首輪を乙葉の首に嵌めると、続いて優葉を呼びつける。
 優葉は、俺に敵意を向けながらも、渋々牢の中を移動してくる。
 俺は、優葉にも同じ物を付け、入り口に向かって守を呼んだ。
 守は、恐る恐る牢の中に入ると、あの愛想笑いを浮かべて、檻の中に入ってくる。
 俺は、檻の中に守を入れると、リードの端を守に渡す。
 守は、当然驚いた顔をするが、俺の説明を聞きニタニタと笑い始める。
「このリードは、首輪に仕掛けたスタンガンのスイッチだ。切り替えは3段階、強く引けば強く引くだけ、威力は上がる。最大にすると、意識を失うほどの強さだ。この檻を俺が出ると、鍵を掛けてやる。鍵が掛かれば、後は、この空間には、誰も手出しが出来ない。お前が、この空間の支配者だ」
 俺の説明を聞いて、優葉が狂ったような悲鳴を上げる。
「嫌ーーー!何で!どうしてこんな事するの!出して!こいつと一緒に入れないで!お願い!お姉ちゃんと出してよ!」
 俺が守に目配せすると、守はオドオドと優葉のリードを引っ張る、リードのスイッチは敏感で、少し引いただけでスイッチが入る。
 途端に2段階スイッチが入り、優葉の身体が痙攣し、優葉は舌を出して苦悶する。
 守は、その優葉の姿を見て、一瞬驚くもニヤリと笑った。
「お前達は、もう調教に出てくる必要はない。飯も奴隷達に運ばせるから、この檻から出る必要は、全く無い…仲良くやるんだな…」
 俺は、そう言って、檻を出ると扉の鍵を閉めた。
 乙葉の絶望した表情を見て、俺は背筋に快感を感じた。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊