走狗
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■ 第4章 狂宴24

「その首輪を覚えてるか…?そうだ、指向性の爆薬付きだ。そして、全く同じ物が、守にも着いている…」
 俺が顎をしゃくると、優葉は檻の中で顔を押さえて蹲る、守の首を確認する。
 俺は、手に持ったリモコンを優葉の前に差し出すと
「これは、首輪の起爆スイッチだ…。あいつを殺したければ、押せば良い…。但し、お前の首も吹っ飛ぶ…。前にも言ったが、死んだらお前達2人を抱き合わせて、同じ棺に葬ってやる…。それでも良ければ、このスイッチを渡してやる」
 俺は、優葉の目を見詰めながら、リモコンを見せる。
 優葉は、そのリモコンを見詰め、ソッと手を伸ばし、俺から受け取った。
「叶さん…。本当にごめんなさい…言い訳にしか成らないけど…。私も脅されてたんです…。でも、酷い事をしたのは確かです…。最後に私のお願いを聞いて下さって…、有り難う御座います…。図々しいお願いなんですが…お姉ちゃんを許して上げて下さい…」
 俺に謝罪の言葉を言って、深々と頭を下げる優葉。
 そして、乙葉に向き直ると
「お姉ちゃん…。ごめんなさい…、酷い目に会わせちゃったわね…。いつも、迷惑ばかり掛けてたけど…、今回が一番だったね…」
 そう言って、寂しそうに笑った。

 俺は、檻の中に入ると、守の髪を掴んで引きずり出す。
 守は、意味不明の言葉を吐き、暴れ回るが何の邪魔にも成らない。
 出口の前で扉にしがみつき、出ようとしない守の腹に、一発拳を入れ黙らせて、蹴り出す。
 調教部屋に出ると、牢の扉を閉める。
「覚悟が決まったら、好きにやってくれ…」
 俺は、優葉に向かって、そう言った。
 優葉は、俺に向かって、コクンと頷くと守を見詰める。
「私がこうなっちゃたのも…。あんた達一家のせいよ…。でも、最後にあんたを、道連れに出来て良かったわ。これで、お姉ちゃんに指一本触れられなくなる…。ざまあ見ろ…」
 そう言って優葉は、リモコンを守に向けて、スイッチを押した。

 しかし、爆発は起きない。
 リモコンを見詰め、もう一度押す。
 それでも、何も起きなかった。
 優葉が俺を見詰め、泣きそうな顔をする。
 俺は、静かに首を左右に振って、ポケットから別のリモコンを取りだし、スイッチを押した。
 守の首輪だけが、[ドン]と音を立て、首が転がる。
 優葉が驚きの目を向け、俺を見詰める。
「お前は…。今、死んだ…。お前の罪は…これから、乙葉が替わりに受ける…。これは、乙葉からの申し出だ…。お前は、この後、好きにしろ…」
 俺の元に乙葉が擦り寄り、俺の足下に平伏し靴にキスをする。
 優葉の目に涙が浮かび、崩れ落ちる。
 そして、丸まって大声で、少女のように泣き出した。
 俺は、乙葉に優葉を連れて、風呂に入るように指示を出し、後片付けを始める。

 守は、牢の扉の近くで死んだため、身体から流れ出た血が、牢の中にも大量に入り込んでいる。
 俺は、消防ポンプを出すと、牢の中に入って行く。
 牢内は、俺の登場に一瞬で緊張が走った。
 それはそうだろう、こいつらの目には、今俺が冷血な復讐者に映っている筈だからだ。
 哀願しようが何をしようが、残酷な方法で、復讐を完遂する。
 そんな風に、映っている筈だ。
 俺は、そんな事は一向に気にせず、黙々と牢内の血を洗い出し、排水溝に送る。
 牢内を片付けた後、俺は無言で出て行く。

 調教部屋の死体も血の汚れも洗い落とし、俺は片付けを済ませると、1階へ上がる。
 1階へ上がると、廊下の向こうが騒がしい。
 俺は、そちらに向かって歩いて行くと、乙葉と優葉が言い争っている。
(さっきの、仲の良さは、何だったんだ…)
 俺は、辟易して、2人に近づいた。
 俺を見つけた優葉が、俺に向かって駆け寄ってくる。
 何事かと思っていると、優葉は俺の足下に平伏すると
「ご主人様…。姉さんから全部聞きました…。申し訳御座いませんでした…。それと、有り難う御座います…」
 俺に詫びと感謝の言葉を吐いた。
 俺は、どういう説明が成されたのか、何も理解が出来ず、見詰めていると
「お願いします。私も姉さんのような身体にして下さい…。そして、奴隷にして下さい…。姉さんだけが、罪を償うなんて…お願いします…」
 優葉がおもむろに顔を上げ、俺に嘆願した。

 そこに乙葉が近づいて来て、優葉の隣に平伏すると、
「済みませんご主人様…。何度、言っても聞かなくて…この子…」
 困ったお姉さんの声で、乙葉が話す。
(へーっ、乙葉。こんな喋り方もするんだ…以外だな…)
 俺は、乙葉の新鮮な部分を見つけ、少し驚きながら
「良いんじゃないか…したいなら、させれば…」
 俺は[どうせ消せるんだから]と言う言葉を飲み込んだ。
 それに、今度はあいつらが優葉を狙い兼ねないのも、懸念した。
 俺の言葉に優葉が小躍りして、抱きついて来る。
 しかし、俺はそれを受け入れる気には成れなかった。
 どんな理由が有ろうと、優葉は妹と妻の敵だ。

 優葉は、悲しげな表情を浮かべ、一礼して乙葉と共に処置室に向かう。
 俺は、この時、有る事を見落としていた。
 それは、優葉を健太郎に会わせると、優葉が死んで居ない事がばれてしまう。
 俺は、急いで踵を返し、処置室に向かうが、既に遅かった。
 肩を落とし、俺は処置室に向かった。
 処置室内では、健太郎が[約束が違う]とごねていたが、俺が一晩部屋を貸すと言う事で落ち着いた。
 俺は、健太郎に対する、処遇をどうするか悩みながら、優葉の入れ墨の完成を待つ。
 入れ墨は、30分程で完成した。
 それは、手早く描いた割には、完成度の高い物だった。
 図柄のモチーフは基本的に、4色の蛇だった。
 肩口から這い出した、緑と赤の蛇が両方の乳房を這い、交差して降りて来て、恥骨を通って股の付け根から、オ○ンコに向かって舌を出している。
 両足の踝から伸びた、ピンクと青の蛇が股の内側を通り、尻タブからアナルに向かって、舌を出す。
 背中には、大きく揚羽蝶が羽を広げ、乳房には右側に蜘蛛、左側に蠍が乳首を狙っている。
 俺は、優葉が[針とかで刺すんじゃないの]と言う質問を一蹴した。
 俺は今、それ所では無く、言い訳を考えるのに、忙しかったからだ。

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