走狗
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■ 第5章 走狗1

 豪華なソファーセットに、1人の老人が埋もれる様に座り、コーヒーを飲んでいる。
 室内は、まだ昼間だというのに、薄暗い。
 窓には、遮光カーテンが引かれて、外の明かりを遮り、更に間接照明だけしか点けていない為である。
 老人は、コーヒーを啜った後、カップをソーサーに戻し、肩を小刻みに振るわせる。
 一頻り、肩を揺らした老人は
「くくくく…この男は本当にたらし込むのが上手い…見ろ、この女もうメロメロに成ってる…」
 モニターを見ながら、一人楽しそうに呟いた。

 手に持ったステッキを振り回し、モニターに映る男女を嘲笑う。
「誠に持って、仰るとおりで御座います…。彼はかなり、人間的な厚みを持って居りますので、この程度なら直ぐに意のままに操るでしょう」
 老人の後ろから、丁寧な言い回しの言葉で話す中年の声が言う。
「本当だな…お前はどう思う…」
 老人は、椅子の影に隠れた、白い裸身にステッキで突きながら質問する。
「あ〜ん…あふぅ〜っ…ごしゅじんさまが、1番ですわ…」
 声の主は、情欲に潤みきった声で、老人に告げた。
「そうか、そうか…儂が一番か…ほれ…ほれ」
 そう言いながら老人は、ステッキで裸身の女の白い乳房の辺りを突き廻す。
「あ〜ぁ〜っ…はん、はぁー…あふぅあんあん…ひゃーーぁ…ごしゅじんさま〜…きょかを…きょかをくださいませ〜っ…」
 タップリと艶を含んだ声で、老人に哀願する声。

 すると、後ろから別の声で、
「はぁ〜んイキます…イキますごしゅじんさま…はぁ〜…あ〜…またイキます…く〜もう一度イキます〜…はぁ…はぁ…ごしゅじんさま、3回イキました…」
 自分がイッた回数を報告する、スーツの上衣を着た女。
「おお…夢中に成ってしもうた…もう3時か、儂は今夜も会合だ少し寝る事にする。枕をベッドに持って行け…儂は風呂に入る…行くぞ」
 老人は杖を突きながら、逆の手にチェーンのリードを持ち、椅子の横の女を引きながら、浴室に向かった。
 部屋の隅に立った人影は、モニターを見て一瞬、唇の端を持ち上げ笑った。
 そして、スーツの上衣を着た女に近づくと、その上衣を丁寧にハンガーに掛け、女の上半身を抱え、部屋を出て行った。
 誰も居なく成った部屋には、煌々とモニターの光が点き、その中には良顕と志緒理が映っていた。

◆◆◆◆◆

 俺は、倒れて来た志緒理を抱き留めると、耳元に囁いた。
「ふっ…やっぱりか…。今のお前は、主を亡くした…野良…。そう言うことか…」
 俺の言葉にビクリと震え、身体の向きを変え、擦り寄り
「そうです…。今の私は…、ご主人様を亡くしました…あなたのせいで…」
 志緒理は、後ろに手を組んだまま、俺の身体に舌を這わせる。
「なら、お前の資質を見せてみろ。それによっては、俺が次の主を与えてやろう。それまでは、俺が飼い主だ…」
 俺は、志緒理の髪の毛を掴み、引き離すと、瞳を見つめて呟いた。
 志緒理は、瞳を情欲に染め、俺に返事を返す。
「はい、解りました…。ご主人様とお呼びしても、宜しいでしょうか…?」
 志緒理は、俺に許可を求める。
「呼び方は、好きにしろ…。但し、絶対服従は基本条件だ…」
 俺は、志緒理に服従を指示する。
「はい、ご主人様の仰せのままに…。志緒理の全てを、お任せします…」
 そう言って志緒理は、俺の前に正座すると、腕を組んだまま、浴槽の中に頭を突っ込み、平伏した。

 俺は、そのまま、志緒理を見詰める。
 10秒、20秒、まだ上がって来ない、30秒が経過した時、大きな泡が2つ上がって来たが、まだ顔を上げない。
 40秒が過ぎた時、俺は志緒理の髪の毛を掴み、引き上げた。
 浴槽から、引き上げると大量の湯を吐き、むせ返る志緒理。
「お前…。馬鹿か…?いつから、調教された…」
 俺の言葉に、志緒理は
「はい…。妹様と同じ位の、時期です…」
 志緒理は俺に答えた。
(こいつ…、16からだと…。じゃあ22年調教を受けて来たのか…?筋金を通り越してる…)
 志緒理の身体は、良く見ると肌の奥に、深い傷痕が無数に有った。
 俺は、この女を自分に染めて見たくなった、それも出来るだけ短時間で、深く濃く。

 志緒理を浴槽で立たせると、俺はその身体をマジマジと見詰める。
 志緒理は、俺の命令を忠実に守り、まだ後ろで腕を組んでいる。
「俺は、最初に言っておく…。俺が欲しいのは奴隷だ、人形じゃない…。どうすれば一番、俺の望む事が出来るか…、常に考えろ…」
 俺の言葉は、早くも志緒理の心に、亀裂を作った。
「えっ…?と、申しますと…。私は、命令で動くのでは…無いのですか…」
 志緒理は、驚いた顔で俺を見詰める。
「それを人形と言うんだ…。奴隷は考えて、主人に仕える…。何を今、主人が欲しているかを…常にな…」
 俺の言葉は、志緒理を不安にさせたのだろう。
「で、でも…。今まで…、今までは、命令を頂いて…。それを守のが、服従だと教わりました…」
 志緒理は、訴えるような目で、俺を見詰める。
「そうか…。お前は…、奴隷では無かったんだ…。お前は…、オモチャだったんだ…」
 俺の言葉に、志緒理が愕然とする。
「どうせ、お前は、言われた事を、言われた儘に行動してたんだろう…。それが、人形じゃなくて…、オモチャじゃなくて何だって言うんだ?教えてくれ…」
 俺は、志緒理の20年以上擦り込まれた、固定観念を否定した。

 志緒理の心は、俺の言葉に抗い始める。
「でも、私は20年以上…。奴隷として…、生きて来ました…。そう呼ばれて、奉仕して来ました…。痛みを、恥ずかしさを、苦しさを快感にして来ました…。それは、奴隷では無いんですか…」
 身悶えしながら、俺に訴える志緒理。
 俺は、志緒理の言葉を鼻で笑い、志緒理に聞いた。
「それは、お前が望んで感じたのか…?違うだろ…、そう感じるように、命じられたからだろ…?」
 俺の言葉は、またも志緒理の心を揺さぶった。
「そ、それは…。でも…、そんな事…そんな事…そんな…事…」
 志緒理は、虚勢を張る事も、否定する事も出来ず、ただ俯くだけだった。
「解った…。じゃぁ、お前の20年の月日を見せて貰う…。構わないだろ…」
 俺は、志緒理にそう告げた。
 志緒理は、無言で頷き、俺を見詰めた。
 それから2時間、俺は無言で志緒理のする事を全て受け入れた。
 そして、一度も射精どころか挿入する、強度まで至らなかった。

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